悟は手直しをした人形を見つめた。元通り、いや、祐里奈が切るよりもさらにいい仕上がりになっているように見える。
それは、祐里奈の覚悟をその目でしっかり見たからかもしれない。
ふう、できた
悟は手直しをした人形を見つめた。元通り、いや、祐里奈が切るよりもさらにいい仕上がりになっているように見える。
それは、祐里奈の覚悟をその目でしっかり見たからかもしれない。
お疲れさま
ああ、怜奈……って、男の姿かよ
そりゃあ、これが『僕』の本当の姿だし
混乱させたくなかったから信くんの前では女の子の姿をしたけどね
僕、まだまだ美人女優やれちゃうのかも
ああ、そうか
祐里奈ちゃん、すっごく喜んでいた
……そうか
やっぱり、悟くんの力ってすごいと思うよ
俺の力じゃねえよ……周りの奴らが背中を押してくれたおかげだ
俺がいなくても祐里奈は自分で立ち直れそうな気もしたし……
たまこの一言だって信を説得するには十分な力を持っていた
そんな謙遜するなんて、悟くんらしくない
悪かったな
ところで
ん?
たまこちゃんって何者なの?
は?
なんか、普通とは違う感じがするんだよね。うまく言い表せないけど……あえていうなら、僕みたいな感じ
お前みたいな?
本当とは違う姿をしている感じ、みたいな
あー
やっぱりそうなの?
いや、別に……
はっきりしないなあ
まあ、あいつが何であろうと突然消えたりしようと俺たちの知ったことではないからな
消える?
あー、そろそろあいつはいなくなると思う
どこかにいっちゃうの?
まあ、な
悟は自分が作った人形を見つめる。たまこは自分が宿る依代が欲しいと悟の元へきたのだ。この人形は丁度いい。
悟くん!
たまこ……
祐里奈ちゃん、すごく喜んでいましたよ!
うわっ
私、嬉しくて
悟くんはやはり最高の人形師です
おい、お前この前まで『自称天才人形師』とか言っていただろう
その自称を抜け出しました
……そうか
まあ、お前のお陰でもある
ありがとうな
……っ
どうした?
悟くん、今初めて笑いました
は?
うん、僕も悟くんが笑った顔初めてみたよ
失礼だな
ふふふ
何だよ
いえ……ちょっと嬉しくて。悟くんが成長したのを見て
お前は俺の親か
ふふふ。二人は本当に仲がいいんだね
どこがだ
そういえばたまこちゃん、たまこちゃんってどこかへ行っちゃうの?
え?
悟くんがたまこちゃんはもうすぐいなくなっちゃうって
あ……ああ、そうかもしれませんね……ははは
怜奈の言葉にたまこは笑みを返した。それは、悲しみを押し込めようとする無理な笑みに見えた。
……
悟は、心にもやもやと黒い雲がかかってゆくのを感じていた。
たまこがいなくなる……それはどこか物寂しく、切ないものに感じられる。
迷惑だと思っていた彼女の存在が、自分の中で大きくなっていたことに、彼は戸惑いを隠せなかった。