――少なくとも、描くものに困ったことはない。
 見えるもの全てが、魅力的で、不確実で、愛おしい。
 それらの一瞬をとらえ、自分のイメージを練り込み、白い空間に映し出す。
 写真によく似た、だけれども、こちらの方が何千年も先輩である技術。
 俺は、好きだった。
 無心になりながら、自分にとっての世界を描き続ける……そんな時間が、終わらないと、ずっと想っていた。
 俺と、俺の世界を見てくれる幸せが、常にいてくれること。
 途切れることがないと、信じていた。
 ――それが奇跡なのだと、忘れかけていたくらいには。

おはようございます!

お、おはよう……

 うすぼやけた頭で、眼の前の声に返答する。
 頭と同様に、視界は未だ、ぼんやりしたままだ。

え、っと……君は……

はい、リンの名前はリンですよ~!

リン……?

 聞いたことのない名前に、聞き覚えのない声。
 少なくとも、俺がよく呼んでいたアイツの名前でないことだけは、はっきりと想い出せる。

俺は……眠って、いたのか

 一人呟いて、次第にはっきりしていく視界で周囲を見やる。
 眼の前には、小さな明かり。明かりの元は、眼の前の少女が持つマッチの光らしかった。
 ――熱くないのか?
 怪訝に想いながら、薄暗い視界のなかで、少女に眼を向ける。
 少女の姿は、どこか時代錯誤的だった。言うなれば、ゲームやアニメに登場する街の少女というか、地味なのにどこか目立つ不思議な格好をしていた。

いいキャラデザインだな……

ほえ、どうかされましたか?

いや、なんでもない。独り言だよ

 つい、職業病の一言がでてしまう。依頼されて少女のようなキャラクターをデザインすることもあったが、そんな俺から見ても彼女は愛らしく魅力的に映る姿をしていた。

……って、生身の人間じゃねーか

???

 怪訝な顔をされてしまった。

ああ、ごめんな。お嬢ちゃん、俺を起こしてくれたのかい?

はい。スーさんの光で、あなたの姿を照らしてます!

……スーさん?

 今度は、俺が怪訝な顔をする番だった。
 彼女が言うスーさんとは、いったいなんなのだろうか。

えっと、その……スーさん? ってのは、どこにいるんだい?

こちらですよ~、スーさんです!

……いや、マッチだろ

 手元を勢いよく突きだしてくるので、俺は想わず身を引いてしまった。
 だって、マッチの炎を人に向かって突き出してくるなんて、危ないことこの上ないじゃないか。

違いますよ、スーさんはスーさんなんですよ~

 頬を膨らませて怒る少女は、とても愛らしい。真剣にマッチへ肩入れしている姿は、ちょっと不安にもなるが。

……まぁ、起こしてくれて、助かったよ

 よいしょ、とオヤジ臭い声を上げて、両足で立とうとする。

あ……!

 彼女の声が、一瞬、驚いたのに気づいたと同時。

ぅ、わっ……!?

 ――俺の頭部と首筋を、なにかが撫でた。

 想わず驚きの声を上げて身を屈め、両膝を地につけてしまう。
 すると――ずるり――と、音がしたわけでもないのに、頭と首から何かが剥がれるような感触があったことを感じた。

あ……はぁ……?

すみません、リンが屈んでいたばっかりに

 優しく語りかける少女は、手元の光が俺の顔に当たるように、手を伸ばしてくれていた。少し背伸びしたような彼女の仕草と、慌てたような顔が、ぼんやりした俺の意識に染み込んでくる。

あのあの、あなたの背がちょっと高いので、リンもスーさんも光が届かなくて……ごめんなさい

いや……なんで君が謝る?

 二度も謝られて、逆にこちらが罪悪感を感じてしまう。

でも、スーさんが当たらないと、彼らはあなたを元に戻そうとするので……

かれ、ら?

はい

 少女の瞳を見返してから、俺は、ふりかえる。
 なぜ、今、こんな暗闇の世界にいるのかと。

(寝る時間を間違えたか?)

 周囲を見回しても、星の輝きは空に見えず、街の灯りが点いている様子もない。では、夜ではないのか……とも想うが、ではこの暗闇はいったい何なのだろうか。
 動くものの気配さえもない、とても静かな世界。それだけが、ずっと広がっているように感じられてくる。
 俺の視界に見える、べったりと塗り込められた、純色の黒だけ。
 隠蔽色としては申し分のない、あらゆるものを覆い隠すことのできる、純粋な一色の黒。

 ――少しだけ、頭がはっきりしてきたような気がする。
 自分が起きる前、最後になにをしていたかを考える。確か、自室にいて……いつもどおり、仕事をしていたはずだ。
 だが周囲には、家に所狭しとおかれた画材も、参考書も、パソコンも、家電も、机も……何一つ、近くにある様子はない。

……アイツは

 そして、今更ながらに想い出して、自分に対して怒りがわいてくる。
 今の今まで、アイツの存在を忘れていたことに。

おい、あんた……アイツを、女性を見なかったか!?

ほ、ほえ……すみません、リンはあなた以外、ここでは見ていません

あ、あぁ……すまない

 つい、強い語調で言ってしまったためか、少女が驚いてしまっている。
 だが、俺は胸のざわつきを抑えることができなかった。
 なぜなら、俺の人生で天秤にかけるほどの大切な物が、何一つ見あたらないのだから。

こうしてはいられない。探しに、行かなきゃ

探しに、ですか?

ああ、お嬢ちゃんには申し訳ないが、この……

 言いながら、背中の方へ振り返る。

 そして、俺は、立ち尽くした。
 なぜなら、そこにあったのは――光の全くない、一面の闇だけだったからだ。

 それに加え、俺は感じていた。この闇の中に、さきほど俺をつかんだ、ナニカが潜んでいることを……!

スーさんの光に、当たってください

 少女の声に導かれるように、ゆっくりと身体を元へ戻す。
 彼女の手元の光に当たると、なぜか、身体が安心を感じているのがわかった。

これは……なんなんだ? この、状態は……?

 呟いて、俺は記憶を振り返る。
 ――少しして、想い出した。
 あの、突然に始まった恐怖。闇がただ世界を覆い、塗りつぶしていった日のことを。
 俺もアイツも、平穏な日常の中にいて、だからなにも気づかぬ内にとりこまれてしまったのだ。
 覚えているのは――イヤになるくらいの、単色の黒色だけ。

リンにも、スーさんにも、わからないのです

 そう言って、少女は困ったような表情を浮かべた。答えを求めたわけではなかったのだが。

そうか。それは、そうだよな……

 うなずきながらも、アイツのことが、頭から消えたわけではない。
 今のままでは、この闇を歩くことはできないとわかった。
 残念なことに、俺の身体には、この闇を照らすような道具は何一つ持っていない。タバコでも吸っていれば、ライターでもあったのかもしれないが。

そのマッチの予備は、ないのかい?

 少女の手元を見ながら、問いかける。少女の手元にあるのは、既製品のマッチによく似たものだ。
 だが、少女は首を振って、俺の問いを否定した。

スーさんは、スーさんなので。代わりは、ありません

ばかな……ずっと、そのマッチ棒一本で、光っているって言うのか

はい、そうです

 薄い微笑みを浮かべながらうなずく少女に、俺は驚きを感じる。
 ――俺の知らないだけで、ずっと光り続けるようなマッチが開発されていたとでも言うのか。
 だが、先ほどから少女がマッチを買えた様子はない。なら、言っていることは本当なのだろう。

そんな……だが、そうか。だが、それじゃあ……

 少女が持っている明かりは、この一本だけなのだとわかった。なら、譲ってもらう、というわけにもいかないだろう。少女もまた、俺と同じ状況に代わりはないのだから。
 かといって、俺の焦りが消えるわけもない。むしろ、アイツの存在が気になって仕方なくなってきている。

 ふと――俺の胸中に、ある考えが浮かぶ。
 光がなければ、闇を進むことはできない。なら、光は、どこにある――?
 俺は、少女の手元の光を凝視する。心のなかに、今までの俺にはない、なにかがささやくような感じがあった。
 喉を鳴らし、衝動に従うか、迷い始めた時。

――お話が、あるのです

 少女が口を開く。同時に、彼女の顔にも変化が現れた。

お話……?

 先ほどまでの、のどかで柔らかい口調とは異なる、真剣で好きとおった響き。
 同じ少女とは想えないその声の響きで、俺は内心の闇を忘れてしまった。不思議なことだが、少女の声の響きが、俺の内心を止めたのは事実だった。
 そして、少女が語る内容から――俺の中にあった闇が、違う形で俺自身へと跳ね返ってきていた。

――

――

 少女の説明を一通り聞き終えた俺は――毒を込めた調子で、口を開いた。

……そんな話を、信じろってか?

 少女が語る内容は、余命宣告だった。
 しかも、俺に選択権はない。少女と、少女の光が俺に下す、一方的なものだった。

ごめんなさい

……

 話としては、簡単な内容だった。
 俺がこうして闇のなかで形と意志を保てているのは、少女の手元の光のおかげとのことだった。不思議なことに、理解はしていなかったが、感覚で納得はしていた。さきほどの闇になでられたような冷たさが、少女の光で和らいだのは、事実だったからだ。
 つまり――少女の光がなくなれば、俺の存在は、消える。あの闇が、俺をまたとりこんでしまう。
 それに、少女の真摯な様子から、嘘を言っているようには見えなかったというのもある。

俺が、消える……だって?

 だが――すんなりと受け入れられるほど、俺は、できた人間ではない。

はい。あなたがこの世界にいられるのは、スーさんが照らしていられる時だけなのです

 少女は付け加える。

でも……スーさんも、いつかは消えてしまうのです。だから、その……

その、なんだ?

 ここまでくれば、驚きはしない。少女にはやや冷たく当たってしまっているが、先を促すように視線を向ける。

あなたの姿も、同じなのです。いつかは、消えてしまうもの。でも……

でも?

スーさんは、光を貯めることができるのです。みなさんの、姿形を、受け入れることによって

 少女の言葉の意味が俺には理解できなかったが、しかし、少女がなにを求めているのかは――残念ながら、わかってしまったような気がした。

つまり、お嬢ちゃんは、俺に……どうしてほしい?

……あなたの光を、わたしとスーさんに、いただきたいのです

はっ

 想わず、声が漏れ出た。

それは、お嬢ちゃん……おとなしく命を差し出せって言われて、出すやつはいないぜ

……はい。それは、もちろんです

だったら、お嬢ちゃんは、どうする? このまま、俺を見捨てていくのか? それとも、俺がごねたら、無理矢理にでもなにかするっていうのか?

 俺は、常日頃だったら絶対に言わないような口調で、少女に言葉を投げ放つ。

それは……

 苦しむような彼女の表情に、俺の中のなにかがざわつくのを感じた。
 ふっと浮かんだ考えを、俺はトーンを抑えて確認する。

……そうしないと、お嬢ちゃんも、呑まれちまうのか

……はい

 なら――と納得はできないが、理解はできる。

めんどう、くせぇ

 ぽつりと呟いた俺の一言に、少女が心配そうな顔を向ける。

え、えぇ、と……

……こういう言い方してるから、アイツに怒られるんだな

アイツ、ですか?

お嬢ちゃん、俺の言ったことは、別に俺だけのものじゃねぇ

 言い訳のように、俺は少女へ向かってそう言った。
 さきほどまでの怒りは、俺の中で少し落ち着いていた。
 ――どのみち、少女を怒鳴りとばし、悲しませたところで、この世界に光が戻るわけではない。俺の命が延びるわけでも、アイツが見つかるわけでも、ない。
 なら、と俺は考える。頭の中で、アイツならどう言うかを想い起こしながら。

今まではどうか知らないが、いつか、俺が言ったようなことを言うやつが出てくる。しかも、もっと悪質に、周到に、お嬢ちゃんを誘うような手口でな

はい。それは、わかっています……

……?

 弱く微笑みながらうなずく少女の表情に――俺は、勘違いをしているのかもしれないと気づく。彼女は、俺のようなひねくれ者と、もう何度も出会っているのかもしれない。彼女に浮かんでいる笑みは、先ほどまでの無邪気さとは違う……知っている者の、微笑みだ。
 だから、つい、言ってしまった。

だから、言っといてやる。その時の答えは、探しておいた方がいい。俺みたいに……諦めが、良いやつばかりじゃないからな

はい、ありがとう……え?

……どうやるのかは、知らないから、まかせる

……ありがとうございます!

 少女が深々と頭を下げるのを見て恥ずかしくなり、俺は、わざとらしく声を上げた。

しかし、せっかく目覚めたのに……俺は、消えるしかないってのか

 アイツも探しに行けず、自分の目標も叶えられず。
 この、色気も技巧もない、真っ黒な単色に呑み込まれろと言うのか。

冗談、じゃねぇ……!

 少女の言うとおり、無駄に消えるならとも納得はできるが……せっかく目覚めたのになにもできないのも、腹立たしい。
 そう、さっきから、俺はどこか落ち着かない自分を感じていた。アイツにも注意されていたくらいだから、態度や正確にクセがあるのは自覚していたが、今の俺は普段よりもさらにひどかった。
 ――この、暗闇のせいなのかもしれない。全てを否定するような、一面の闇。
 幾千もの色や表現を用いて、俺は自分の内にある形を表現し、周囲の人々と歩んできた。俺は世界を表現し、世界は俺にさまざまな想像力を与えてくれた。
 だが、その世界は……もう、どこにもない。
 俺がかつて関わっていた世界を否定するように、この世界の黒は、絶対性を押しつけてきている。
 それが、俺を焦らせるのかもしれなかった。

あの……あなたは、なにをされていた方なんですか?

 少女が突然、そんなことを聞いてきた。
 タイミング的に、昔のことを想い出していた時だったから、スキをつかれた感じだ。

それを聞いて、どうするんだ?

 純粋に、そう想って問い返した。そんなことを聞いて、少女はどうしようというのか。
 すると、少女は明るい笑顔を浮かべて、俺の問いに答えた。

リンは、お話を聞きたいのです。出会った方達と、できるだけ

それは……なんでだ?

 ――消える者達の話を聞いて、何の得がある?
 そう想って聞いた俺に、少女は微笑みを浮かべたまま、返答した。

はい。リンは、この暗闇の中で目を覚ましてから、この世界しか知らないからです

なん、だって……?

ですから、みなさんのお話を、少しでも聞きたいのです。リンは……この暗闇でない世界を、もっと、知りたいのです

……

 俺は一瞬、黙ってしまった。俺が過ごした世界を、少女は眼にしたことも、感じたことも、嗅いだこともないのだと言う。

お話、か

 彼女の言葉から、俺は、自分ばかりを不幸だと感じていたのだと自覚する。
 胸の内のざわつきが、少し落ち着いてきたことが、わかった。

でも、勝手なお願いだというのも、知っています。ですから、無理にとは……

 少女はそう断りを入れてきたが、俺は無視して言った。

イラストレーター

え?

イラスト……わかりやすく言うと、絵かな? それを描いて、生活している――絵描き、さ

 俺は、当たり障りのない言葉で自分の職業を説明した。
 ネットや広告などで、いまや良く耳にする単語にもなっている。デフォルメしたキャラクターを描いたり、主体となる文にあわせた絵を描いたり――それが、俺の主な仕事だった。いろいろと細かい違いはあるのだが、絵描きと言えば、広義では合っているだろう。
 そう想って、彼女の顔を見てみると――意外な表情が浮かんでいた。

え……って、いらすと、ですか?

 両手の先を頭の上に当てて、悩む少女の姿。
 きょとん、という表現が似合う少女の姿を見て、俺はためらいながら口を開く。

もしかして……わからないのか?

はわわ、ごめんなさい~

 必死に謝る少女の姿に、俺は一つ息をつく。
 絵やイラストという概念が、わからない。
 その事実に戸惑いながら、どう説明したものかと頭をひねる。

絵、っていうのは――そうだな

 説明をしようとして、俺は、口ごもった。
 なぜなら、ここには説明するために必要な、被写体がまったくないからだ。
 だから、闇の中で想像をこらしながら、俺は簡単に説明せざるをえなかった。

眼に見えるものや、見えないものとか、そういったものを……描いた人の形に見えるように、紙などに刻みつけたもののことだ

……???

 少女の顔に、さらに怪訝な表情が浮かんだのが見てとれる。
 実際、俺も自分で説明しながら、伝えられている自信はなかった。
 両腕が、もどかしい。この手に紙とペンがあれば、一瞬で伝えられるというのに。
 周囲に眼を配るが、やはりそこには一面の闇ばかり――と、想っていたのだが。

……ぁ

 足下に、ひっそりと置かれていたそれを持ち上げて、少女に向かって差し出す。

具体的には、そうだな……俺がお嬢ちゃんを、このスケッチブックに鉛筆で描けば、絵になるんだよ

 説明を理解してくれるのかはわからなかったが、少女は俺の説明に、驚きの声を上げる。

ほええ~! そんなことが、できるんですか!?

できるできる

すごいです! イラストさん、すごいです!

イ、イラストさん……

 少女のネーミングセンスにちょっと汗をかきながら、俺は取りあげたスケッチブックと鉛筆を手元に置いた。

……ん?

 そこで俺は、今更に自分がつかんだ物に想いをはせる。
 愛用していたスケッチブックと鉛筆が一式、手元にそろっていることに。

これは……俺の?

先ほどから、大切にされていましたね

最初から、あったのか?

 俺は、手元でスケッチブックと鉛筆を確認しながら、彼女に聞き返す。
 とても最初からあったようには想えなかった俺だが、うなずく少女の様子は、嘘をついているようには見えない。
 確認してみると、確かに、俺がよく使っているメーカーのもの。だが新品のようで、中には真っ白の紙が並んでいるのみだった。

残念だな。写生したスケッチが、見せられたかもしれないのに

すてっち?

スケッチだ、スケッチ。お嬢ちゃんが見たがっている、世界を描いたりした絵のこと、かな

 散歩がてら、周囲の景色などをスケッチしていたことを想い出す。仕事ではない、自分のための時間は、とても落ち着く時間だった。

だが、これは確かに……俺の時間を、想い出させてくれるな

 スケッチブックの手触りと、鉛筆の感触。
 俺は、心が落ち着くのを感じていた。あの世界にあった身近なものは、全てこの闇の中で塗りつぶされてしまったものだとばかり、想っていたのに。

ありがたいもんだな、見捨てられてないって、想えるのは

……よかったです

ん? なにがだ

イラストさん、とっても良いお顔をされていますよ

 少女に言われ、俺は口元を右手で隠してしまう。そこで感じた指先で、ゆるんだ口元を確認してしまう。
 恥ずかしくなった俺は、一つ咳払いをして、ノートブックを改めて開いた。

じゃあ、これで絵を描いてみるか

わぁ、ほんとですか!

 心から嬉しそうな声を上げる少女の姿に、俺もつられて笑みを浮かべてしまう。
 ――本当に、明るく笑う少女だった。こんな闇の中には、もったいないくらいに。

ある絵師の届けもの・前篇

facebook twitter
pagetop