――少なくとも、描くものに困ったことはない。
見えるもの全てが、魅力的で、不確実で、愛おしい。
それらの一瞬をとらえ、自分のイメージを練り込み、白い空間に映し出す。
写真によく似た、だけれども、こちらの方が何千年も先輩である技術。
俺は、好きだった。
無心になりながら、自分にとっての世界を描き続ける……そんな時間が、終わらないと、ずっと想っていた。
俺と、俺の世界を見てくれる幸せが、常にいてくれること。
途切れることがないと、信じていた。
――それが奇跡なのだと、忘れかけていたくらいには。