翌朝。

スサノオ

おぃ、スセリ、朝飯 ・ ・ ・ ・

スサノオはいつものように居間から台所にいるスセリビメに声をかけた。


しかし、台所から顔を出したのはオオナムチだった。なぜか割烹着を着ている。

オオナムチ

あ、スサノオ様、おはようございます。ご飯できてますよ。

スサノオ

あぁ??テメェが作ったのか?女かよっ!!女々しい奴だなぁ!!!

オオナムチ

兄達に散々作らされましたからね。

スサノオ

なんだ。生きていやがったか。第一関門クリアってとこだな。コイツ、見込みはありそうなんだが ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
どうも頼りねぇ。

スサノオ

・ ・ ・ ・ ところで、
昨日は寝れたのか?

オオナムチ

えぇ、お陰様でグッスリ!
ありがとうございました。

スサノオ

そうか。モグモグ。
・ ・ ・ ・ ん ・ ・ ・ うめぇな。

オオナムチ

くすっ。
それはよかった。

スサノオ

・ ・ ・ ・ フン、いいだろう。
今日は違う部屋に泊めてやるよ。

オオナムチ

おぉ~!
ありがとうございます!!

その夜。

案内された部屋には、不快な羽音が響いていた。

オオナムチ

蜂の種類って詳しくないけど、これなら僕でも知ってるや。

オオスズメバチだよね??

オオナムチ

・ ・ ・ ・ で、この部屋はなんですか?
スサノオ様。

スサノオ

あぁん??見りゃあわかるだろ??蜂とムカデの室屋だ。今日は布団まで用意してやったんだ。ありがたく思いな。

オオナムチ

うわぁ、本当だぁ~。大きな蜂の巣に気を取られて全然、気づかなかったけど、床もムカデさんでいっぱいだぁ。

オオナムチ

さすが、優しいなぁースサノオ様は。ムカデの添い寝付きとか、すんげー贅沢。

スサノオ

チッ! ・ ・ ・ ・ こいつらは一発で死ねる量の毒をもっている。せいぜいグッスリと寝ることだな。

オオナムチ

そ ・ ・ ・ ・ そうですか。それは深〜く深〜く眠れそう。とってもうれしいや。

スサノオ

フン。また明日な。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 会えるなら。じゃ。

オオナムチ

ははは。
おやすみなさぁい ・ ・ ・ ・

オオナムチ

・・・・・・・

オオナムチ

・・・・・・・・・・

オオナムチ

・・・・・・・・・・・・・

オオナムチ

・・・・・・

オオナムチ

・・・・・・・・・

オオナムチ

・・・・・・・

オオナムチ

・・・・・・・・・・

オオナムチ

・・・・・・・

オオナムチ

・・・・・・・・・・・・・

オオナムチ

・・・・・・・・・・・・・・・

オオナムチ

絶対バレてるっっ!!!

アレ、絶対バレてるって!!!!!

あの人、僕のこと殺す気だっっ!!!!!

オオナムチは膝を付いて項垂れた。
試しに蛇のヒレを振ってみたが効果はない。

オオナムチ

ですよねぇ ・ ・ ・ ・

オオナムチが部屋の前で体育座りをしながらどうしたものかと考えていると、また後ろから声がした。

スセリビメ

オオナムチ ・ ・ ・ ・

オオナムチ

ヒメっっ!!よかった ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 正直、また何か持ってきてくれるんじゃないかと思って、すげー期待してた!!

スセリビメ

ふふっ、オオナムチったら ・ ・ ・ ・

パパがごめんね。今日は、ムカデと蜂のヒレを持って来たわ。使い方は昨日と一緒よ。

オオナムチ

本当にありがとうっ!
超愛してるっっ!!

スセリビメ

私も ・ ・ ・ ・ ・ ・ おやすみなさい。

オオナムチ

あぁ、おやすみ。

翌朝。

スサノオ

オィ、飯っっ!!!

昨日の流れを考え、スサノオは台所に向かっていつもより威圧的に声をかけてみた。


しかし、返ってきたのはいつものスセリビメの声だ。

スセリビメ

はーい、いま出しまーす!

その声を聞いて、ちょっと不安になる。

スサノオ

え、お、おぃ ・ ・ ・ ・
あのナヨイ男はどうした?死んだか?

スセリビメ

もう、パパったら。今日の朝ごはんもオオナムチさんが作ってくれたのよ?

スサノオ

なんだ、よかった ・ ・ ・ ・
いや、別に心配してねぇけど。

オオナムチは台所からお盆を持って部屋に入ってきた。また割烹着姿だ。

スサノオ

コイツには男のプライド的な
ものは無いのだろうか?

オオナムチ

あ、おはようございます。スサノオ様。 ・ ・ ・ ・ あとこれ、お味噌汁です。

スサノオ

おぅ。まだ生きてやがったか。しぶとい奴だな。

・ ・ ・ ズズッ ・ ・ ・ ・ うめぇな。

オオナムチ

くすくすっ、ありがとうございます。

ところで、スサノオ様、目玉焼きは、醤油派ですか?ソース派ですか?

スサノオ

ん、ソース。

オオナムチ

はぃはぃ、どうぞ。

スサノオ

オゥ。

オオナムチ

僕はお醤油で。ちなみにオリーブオイルとお塩で食べるのも美味しんですよ。
僕的には、ピンクソルトがオススメかな。

スサノオ

アホか。
んな洒落たモン、ウチにねーよ。

スサノオ

うぅん。コイツと喋ってると、どうも調子狂うな ・ ・ ・ ・

朝ご飯を食べ終わったスサノオは、オオナムチが台所に引っ込む前に声をかけた。

スサノオ

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ オイ、ナヨイの。今日は一緒に出かけようじゃないか。

オオナムチ

えっ!?2人で??

おぉ~〜!!ついに何か兄対策の必殺技とか教えてくれる感じですか??

スサノオ

まぁ、そんなところだ。

オオナムチ

よっしゃ!
喜んでお供しますっ!!

オオナムチは飛び上がって喜んだ。

昼。


乾いた風の音がする。そこは見渡す限りの荒野だった。日本だというのに、どこか西部映画にでも出てきそうな印象だ。

オオナムチ

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ で、どこですか?ここ?

スサノオ

あぁ??見りゃあわかるだろ?荒野だ。

オオナムチ

確かに、それ以上でもそれ以下でも無く荒野ですね。必殺技の伝授には最適だ。

スサノオ

オイ、ナヨいの。見ていろ。

スサノオは弓矢を構えた。鏑矢(かぶらや)だ。
打つと音が鳴るタイプの矢で、戦場では合図として利用されることが多い。


どこを狙っているのだろうか。スサノオは遠くを見据えている。そして矢を放つと

と大きな音を上げて飛び、やがて見えなくなった。

オオナムチ

おぉ~!!さすがスサノオ様。
よく飛びますね。弓技の伝授ですか??確かに、僕は近距離ってゆうより遠距離タイプかも。

パーティーに一人いると楽なんですよね。

スサノオ

違げぇよ。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ あれを取ってこい。

オオナムチ

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ん??

スサノオ

さっきの鏑矢を取って来いっつったんだよっ!!聞こえなかったのか?コラ??

オオナムチ

えぇー。無茶振り ・ ・ ・ ・

ついさっきまで必殺技の伝授かとばかり思っていたオオナムチは、どうもやる気が出ないらしい。


仕方なくスサノオはボソっと言葉を加えた。

スサノオ

もし ・ ・ ・ ・

無事に取って来れたら、スセリとの結婚も考えてやってもいい。

オオナムチは一転、目を輝かせてスサノオを見た。

スサノオ

うっ ・ ・ ・ ・ うぜぇ。

オオナムチ

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ お義父さん!!

スサノオ

テメェにお義父さんと呼ばれる筋合いはねぇ!!!!!

さっさと取って来やがれっっ!!!!

オオナムチ

はいっ!
行って来ますっっ!!

オオナムチは意気揚々と草原にけ込んだ。


しかし、その瞬間 ・ ・ ・ ・ スサノオは後ろから火を放った。

オオナムチ

はぁっ??どうゆうこと???

オオナムチが振り返ると、スサノオは後ろを向いてすでに帰りかかっていた。


そして軽く振り返るとニヤリと笑って言い捨てる。

スサノオ

・ ・ ・ ・ おぃ、ナヨイの。
今日はスセリの助けはねぇ。生きたけりゃ、自分の力で帰って来ることだな。

呆然と立ち尽くしたいところだが、迫り来る火がそれを許さない。

オオナムチ

スサノオ様 ・ ・ ・ 熱っ!!
何でもお見通しってわけですか??

オオナムチ

くっそ、絶対取ってきますから ・ ・ ・ ・
アレ、約束ですからねっっ!!

オオナムチは矢が放たれた方向へ走った。スサノオを振り返る余裕も無い。


しかも最悪なことに追い風だ。火の巡りは早く、あっという間にオオナムチは囲まれてしまった。

オオナムチ

あぁ!クソッ!!逃げらんない ・ ・ ・ ・

ゴォゴォと音を立て、火の手が迫って来る。絶体絶命のピンチ!!

そんな中、この場に似合わない、とっても可愛らしい声が聞こえた。

ネズミ

チューチュー!

オオナムチ

へ??ちゅー??

そうだよ、ちゅーの一回や二回したくらいじゃ、死んでも死に切れない ・ ・ ・

オオナムチ

って、ん??何???
・ ・ ・ ・ ネズミ???

鳴き声のする方を見るとネズミが必死で何かを訴えかけてきた。

ネズミ

チュー!!
ウチハホラホラ、ソトハスブスブ!!
ウチハホラホラ、ソトハスブスブ!!

オオナムチ

ん?何その呪文??
今、忙しいんだけど。

・ ・ ・ 内はホラホラ、外はスブスブ?内はホラホラ、外はスブスブ ・ ・ ・ ・

オオナムチ

・ ・ ・ ・ 下ネタ??

ネズミ

チューっ!!!

・ ・ ・ ・ どうやら違ったらしい。

オオナムチ

えっ?違うの??

ネズミ

チゥ!!チウッッ!!

火が迫ってくる。ネズミも必死だ。ネズミは後ろを振り返りながら徐々に前に前にと進んだ。こっちに来いってことか?オオナムチはネズミの後を追った。


するとイキナリ『ズボッッ』っと地面の中に足が沈んだ。そしてそのまま・・・

オオナムチ

うわあぁぁぁぁっっ!!!!!

オオナムチは昭和のギャグ漫画に出てきそうな体勢で穴に落ちた。

オオナムチ

イテテ ・ ・ ・ ・ かなり深い穴だな。あのネズミ、この穴のことを伝えたかったのか。

オオナムチ

全然わからなかった ・ ・ ・ ・

でも取り敢えずここで火が収まるのを待てそうだ。

オオナムチが穴に隠れていると、また『チューチュー』と鳴き声が聞こえた。さっきのネズミだ。


ネズミはその身体に見合わない長い棒を咥えていた。

オオナムチ

あぁ、さっきはありがとう。
助かったよ。

オオナムチ

・ ・ ・ ・ ん?何?その棒 ・ ・ ・ 矢?鏑矢も拾って来てくれたのか?

ネズミ

ちゅー!

ネズミはなんだか得意げだ。しかし、その羽根はネズミの子供たちが、かじり付いていてボロボロになっていた。

オオナムチ

あれ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ くすくすっ、羽根、食べちゃったのか?しょうがないな。

オオナムチ

まぁ、いいや。
・ ・ ・ ・ ありがとな。

オオナムチが頭をなでてやると、ネズミは

ネズミ

ちぅ。

申し訳なさそうに一礼をして、そそくさと帰って行った。残されたオオナムチは、穴の中で一晩過ごすことにした。


そして、スサノオとのコラボ企画は後半戦へと続く。

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