二度も八十神に殺されたオオナムチは、スサノオに助けを求めて、黄泉比良坂(よもつひらさか)の先にある、根堅洲国(ねのかたすくに)に向かった。
黄泉比良坂の先には黄泉の国もある。スサノオは、子供達に出雲を託した後、ずっと会いたがっていた自分の母親、イザナミの近くに移り住んでいたのだ。
二度も八十神に殺されたオオナムチは、スサノオに助けを求めて、黄泉比良坂(よもつひらさか)の先にある、根堅洲国(ねのかたすくに)に向かった。
黄泉比良坂の先には黄泉の国もある。スサノオは、子供達に出雲を託した後、ずっと会いたがっていた自分の母親、イザナミの近くに移り住んでいたのだ。
まさか、あの伝説のヒーローがマザコンだったとはねぇ〜。知らなかったよ。
八十神の追っ手から逃げ切ったオオナムチが黄泉比良坂を下り、しばらく歩いていると、立派な宮殿が建っているのが見えた。
スサノオ様が住んでるくらいだ。きっと、ここだろう。
と思いノックをしようとすると、急にその戸が開き、出てきた人とぶつかった。
きゃっ!
と、若い女の人が小さく声を上げる。
わっ、ビックリした ・ ・ ・ ・ 大丈夫?
ごめんなさい ・ ・ ・ ・ お客様がいたなんて
・ ・ ・ ・ ・ ・ っっ!
2人の目が合うと、その場の空気が急に変わった。
初対面にも関わらず2人は惹かれ合い、見つめ合う。
あれ、どうしよ。
目ぇ逸らせない ・ ・ ・ ・
そして、オオナムチと彼女は引き寄せられるかのように唇を重ね合った。
うーん。
人ん家の玄関先でまずいよな ・ ・ ・ ・
と思いながらも止めることができない。
彼女は後ずさり踏み石に足がかかると、そのまま玄関に腰を落とした。オオナムチは彼女に覆い被さる。
てゆうか、コレいけちゃう感じ??
誰かに見られたらやばくない??
なんて思いながらも続けて首筋にキスをする。
んっ ・ ・ ・ ・
あ。無理だコレ。
止まんないや。
そのうちオオナムチは、考えるのをやめた。
数十分後。
オオナムチは、ふんどし一丁のまま土下座をしていた。
スッ ・ ・ ・
スミマセンでしたあぁぁぁぁ!!!!
初対面で襲ってしまった手前、もう平謝りするしかない。
こんなつもりで来たわけじゃないんですけどっっ!!
いえっ、私の方こそ ・ ・ ・ ・ !!
彼女も肌着姿のまま頭をペコペコ下げる。端から見ると、すげーシュールな図だ。
えっと ・ ・ ・ ・ ごめん、名前も聞いてなかったね。僕はオオナムチ。スサノオ様に会いに来た。てゆうか、そもそもこの家で大丈夫だった?
あ ・ ・ ・ はい。
私はスサノオの娘、スセリビメです。
へっ!?
・ ・ ・ ・ 娘っっ??
オオナムチは、血の気がサーっと引くのを感じた。
いや、そうだよな ・ ・ ・ ・
同じ家にこんな若い子いたら、娘の可能性大だよな ・ ・ ・ あぁ~~やっちまったぁ!!!
ふふっ、大丈夫よ。
パパ、昔は荒ぶる神だったらしいけど、今はすっかり落ち着いて優しいもの。
えっ、あ ・ ・ ・ ゴメンナサイ。
顔に出ちゃった ・ ・ ・ ・
案内するわ。
服はちゃんと整えてよね。
はい、スミマセン。
オオナムチの身支度が整うと、スセリビメが、スサノオの部屋まで案内してくれた。とても大きな宮殿だ。
家の中で迷いそう。
そんなことを考えていると、彼女は立ち止まり『ココ、ココ。』と大きな扉を指差した。緊張で肩が強張る。
パパいる??素敵なお客様よ。
彼女の後ろから部屋の中がのぞけて見えた。
あの金屏風の絵は ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 龍虎?
それに赤と金を基調にしたこの部屋の配色、どっかで見たな ・ ・ ・ ・
あれは確か ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 火曜の深夜にやってたヤクザ映画 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
部屋の中から、ドスの効いた低い声が聞こえてきた。
あぁ?珍しいな。誰だ?通してくれ。
・ ・ ・ ・ つーかお前、何か顔、赤くないか?熱でもあんのか??
えっ??そうかなぁ??
気のせいじゃない???
ささっ、オオナムチさん、こちらですよ~。
アッ ・ ・ ・ ・ ドウモ。
アリガトウゴザイマス!!!
まずい!!無駄に緊張するっっ!!
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
っっこの人がスサノオ様?
うわぁぁぁ ・ ・ ・ ・ すげェ睨んでる。こっちすんげぇ睨んでるよ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
怖えぇぇぇぇぇ!!!
え ・ ・ ・ ・ えーっと、初めまして。 ・ ・ ・ ・ 僕はオオナムチと申します。あなたの6代孫にあたる者で ・ ・ ・ ・
なんだ。足藁の色男じゃねぇか。
で ・ ・ ・ ・ 何の用だ?
足藁の色男って何っ!?褒められてんのか、けなされてんのかわかんないっ!!!
スサノオの睨みにビビリながらも、ここで引き下がるわけにもいかない。
はは ・ ・ ・ ・ 初対面で、そんな睨み効かせないでくださいよ。えぇと ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
実は僕、異母兄弟に殺されそうで ・ ・ ・ ・
いや、てゆうか、正直に言うと二度も殺されてしまいまして。
情けない話しなのですが、スサノオさまに助けていただこうと思い伺ったのです。
あぁ??なんだ?コラ?頼りねぇ奴だなぁ。オィ。
テメェでなんとかしろよ。
まぁまぁ、そう、おっしゃらず ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・出雲に帰れば、また命を狙われます。僕だって、そう何度も何度も死にたくない。
あぁ~あぁ〜〜 ・ ・ ・ ・ オレの血を受け継いだとは思えないナヨさだな。
でもまぁ、血族のよしみだ。とりあえず今日は、うちに泊めてやるよ。
部屋を貸してやろう。
あっ ・ ・ ・ ・
ありがとうございます!
スサノオは早速、案内をしてくれた。どうやらこの部屋らしい。
緊張で肩に力が入りっぱなしだったオオナムチだが部屋をのぞいた瞬間。
今度は全身が強張った。
・ ・ ・ ・ スサノオ様 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ここは?
あぁ?見りゃわかるだろ?
蛇の室屋だ。
室屋!?牢獄じゃ無くて??
だいたい何で、家の中に蛇の室屋があるんだよっ!!!
拷問以外にどんな用途があるんだっっ!?
えっと ・ ・ ・ ・ 部屋中ヘビまみれで、足の踏み場が無いんですケド。
あんだぁ?コラ??
泊めてやるっつってんのに文句あんのかオィ???
ヒィ!!この人、めっちゃ怖えぇ ・ ・ ・ ・ 絶対カタギの人間じゃないっ!!!!
いやっ!!めっちゃ嬉しいです。
まじ、ヘビ大好きっす。
おぅ、ならいいんだ。そこに、ワラがあるから、開けてもらえ。毒蛇も混ざっているから気をつけろよな。
俺はもう寝る。じゃあな。
・ ・ ・ ・ はぁい。
おやすみなさぁい。
スサノオはさっさと自室に戻ってしまった。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ はぁ ・ ・ ・ ・ どこが優しいパパだよ。 ・ ・ ・ あぁーまずいなぁ ・ ・ ・
アレ、ばれちゃったのかなぁ ・ ・ ・ 。
オオナムチが、途方に暮れていると、後ろから声がした。
オオナムチ ・ ・ ・ ・
スセリビメ!!
シッ!静かに ・ ・ ・ ・
パパに内緒でヒレを持って来たの。
ヒレとは昔の女性とか、天女とかがよく肩に巻いてる、ヒラヒラしてるあれだ。
しかしこれでは、ヘビを避けようがない。
うぅん、気持ちは嬉しいけど、ちょっとそれじゃぁふせげないかなぁ ・ ・ ・ ・
違うわよ。
ちゃんと最後まで聞いて。
これはヘビのヒレって言って呪力があるの。三回振るとヘビは大人しくなるわ。
スセリビメに言われた通り、ヒラヒラと三回ヒレを振ると、蛇はピクリとも動かなくなった。
おぉ!すごーい!
ありがとう、スセリビメ!!これで、なんとか眠れそうだ!!
こうしてオオナムチは彼女のおかげで蛇の室屋で一夜を過ごすことができた。
しかし、スサノオの試練はまだまだはじまったばかりだった。