さてさて。
先に因幡に着いていた八十神だったが、ウサギの予言通り、ヤカミヒメに求婚を断られ、しかも
さてさて。
先に因幡に着いていた八十神だったが、ウサギの予言通り、ヤカミヒメに求婚を断られ、しかも
私、ブサイクの言葉は聞かない主義なの。
イケって噂のオオナムチ様のところにお嫁に行くわ。
とまで言われてしまった。
ズバッとフラれた八十神は帰路につくしかなかった。
『こうしてオオナムチはヤカミヒメと結婚していつまでも幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし。』
と、絵本では締め括られるところだが、原作はそう簡単な展開で終わらない。求婚を断られ、逆ギレした八十神が、オオナムチを殺す計画を立てたのだ。
八十神が作戦会議を終え、しばらく待っていると、オオナムチがやっと因幡に到着した。
オオナムチ、遅かったな!!
あれ??兄さん達、どうしたんですか?こんなところで。ヤカミヒメには会えたんですか??
ふん!会えたさ。だが、ヤカミヒメはお前と結婚したいそうだ。
へっ??なんで僕??
ウサギの予言を全く信じていなかったオオナムチは、目を丸くして驚いた。
知るかよ。それより、伯伎国の手間山に赤いイノシシが住んでいてな。
そいつが、畑を荒らすから、ヤカミヒメは酷く困っているそうだ。
そ。だから、未来の花嫁のために、お前はイノシシ退治に行かなければならない!!!
俺らが崖の上からイノシシを落としてやるから、お前が捕まえろ。
やんなきゃ、殺す。
えっ!? ・ ・ えっと ・ ・ ・ ・ 協力してくださるのはとても嬉しいんですけど ・ ・ ・ ・
でも、兄さん達がそんなすぐに引き下がるなんて ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
オオナムチは訝しげな顔で兄たちを見た。『まずい。計画がバレたか??』と、八十神に緊張が走る。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 本当に可愛かったんですか??
超美人だったよ!!!
バカッ!!!クソッッ!!!!!
えっ、あぁ、そうですか ・ ・ ・ ・
なら、頑張ろうかな。
八十神はオオナムチのこーゆうところが心底嫌いだった。
早速、オオナムチを連れて手間山に向かう。
先に来ていた八十神は、イノシシによく似た形の岩を真っ赤になるまで焼き、待ち構えていた。
オオナムチ、あそこから、落とすからな!
絶対に捕まえろよなっっ!!
は ・ ・ ・ ・ はいっ!!
よーし!!イノシシを落とせー!!
おぉーーー!!!!
合図を聞くと、八十神は、焼けて真っ赤になった岩を上から落とした。オオナムチは、それを受け止めようと身構える。
・ ・ ・ ・ まだ物語の途中なのだが、当の主人公が死んでしまった。
だがしかし。少年漫画の主人公というものは、7つのボールとか、大きな黒い玉とか、巨人化とか、いろいろと生き返り方が用意されているものだ。
オオナムチの死を聞きつけた母親は嘆き悲み、高天原のオネェ、カムムスビに息子を生き返して欲しいと頼みに行った。
あらぁ ・ ・ ・ ・ 大変だったのね。彼はイケメンになると踏んでいたのに ・ ・ ・ ・ わかったわ。貝の神、キサガイヒメとウムガイヒメを遣わせましょう。
イザナミが死んだ時には完全シカトだったカムムスビだが、今回はアッサリと使者を送ってくれた。
キサガイヒメと、ウムガイヒメは、岩にこびり付いたオオナムチの死体をベリベリ剥がすと、赤貝の粉とハマグリの出汁を混ぜたミルクみたいな薬を、全身に塗った。
するとみるみるうちに、やけどは治り、オオナムチはイケメンに進化して蘇った。
へっ!?何このオイシイ展開!!!
大人の身体を手にいれたオオナムチは、上機嫌で街へと遊びに行った。
しかし、街でモテまくっているオオナムチを発見した八十神が、またもや彼を殺しに来た。
今度は森の中の巨木を縦に割り、Y字になるよう、両側から枝を引っ張っる。
その割れ目に、オオナムチを無理やり立たせると、しなった枝を一斉に離し ・ ・ ・ ・
木は大きな音を立てて、オオナムチを挟み込んだ。彼はまた死んでしまったのだ。
しかし、八十神を恐れ、後を追っていた母親がオオナムチの死体を見つけると、今度は自分で息子を生き返らせた。 そして、八十神に捕まらないようにと、木の国のオオヤビコの元へ逃がした。
どうしよう ・ ・ ・ ・
二度も生き返らせてもらったものの、突っ込みどころが満載すぎて、どこから手をつけたらいいかわからない ・ ・ ・ ・
オオナムチは頭を抱えながら、トボトボとオオヤビコの元へ向かった。
しかし、ふいに視線を下に向けると、山の麓から八十神が、追ってくるのが見えた。どこかで、オオナムチが生きていることを聞きつけたらしい。
あーーもぅ!!
せっかく大人になったのに、こんなんじゃ全然遊べないじゃないかっっ!!!
てゆうか、あの人達、何で毎回毎回サイコパスな殺し方すんだよ ・ ・ ・ せめてもう体がベチャってなるのは嫌だっ ・ ・ ・ ・!!
そんなことを考えながら慌てて逃げ出すと、頭の中にカムムスビの声が響いた。
もしもしぃ〜。カムムだけど〜。オオナムチくん、聞こえる〜??
へっ!?カムムスビ様っっ!?
んもぉ〜あなた、また殺されたって聞いたから、心配してたんだけど ・ ・ ・ お母様、自分で生き返らせることができたのね。
あぁ ・ ・ ・ いや、そこらへんの細かい設定は、神話だし。
なんか、もう、いいかなって。
まぁ、それもそうね。
それより、先日は命を助けていただいて、ありがとうございました。
やっだぁ~いいのよぉ!!あなた、イケになると思ってたのよねぇ~!!!生き返らせて正解だったわっ!!
今度、一緒にお食事でもどぉ??
オオナムチの成長した姿にカムムスビはとってもご満悦だ。
へっ??あ~〜 ・ ・ ・ そうですねぇ。とっても嬉しいんですけど、今、僕、命狙われて逃げてるところなんで ・ ・ ・ ・ ・
また次の機会にでも。
あらぁ ・ ・ ・ ・ ・ 残念だわ。でもそうねぇ。確かに、このままじゃ、また八十神に殺されちゃうわね。
いいかげん、僕ももう、死ぬの嫌なんですけど。特に圧死。
そうねぇ ・ ・ ・ ならこのまま木の国の先にある、根の堅洲国に行くといいわ。
あなたの先祖のスサノオが住んでるの。きっと助けてくれるわ。
スサノオ様?あの伝説の??
まだ生きてたんだ ・ ・ ・ ・
昔に比べてだいぶ優しくなったって聞くから、頼れるんじゃない?
・ ・ ・ ・ わかりました。カムムスビ様、何から何までありがとうございました。
いいぇ、気をつけて行ってきてね♪♪
オオナムチは木の国まで走り抜けると、オオヤビコの助けを借りて根の堅洲国へと逃げた。
根の堅洲国は地下にあり、生と死が曖昧な不穏な国だと言われている。八十神がそこまで追ってくることはなかった。
こうして次章では、前期の主人公と、今期の主人公の、コラボ企画が実現することになった。