アマテラスが岩屋の中に引きこもると、太陽神を失った『高天原』と『葦原の中つ国』は一瞬のうちに暗闇に包まれてしまった。


急に辺りが真っ暗になり、恐ろしくなった神々は、五月のハエみたいにギャーギャーうるさく騒いだ。すると、その恐怖に吸い寄せられるかのように悪神、悪霊が増え、災いが絶えなくなってしまった。


困り果てた八百万の神々は、天岩屋戸近くの河原に集まり、緊急会議を開くことにした。


しかし、話せど話せど良いアイディアは出てこず、話し合いは平行線を辿る。


その間も悪霊は増え続け、危機感を覚えた八百万の神々は、オモヒカネに全てをゆだねることにした。


オモヒカネは普段からよくアマテラスのサポートをしているし、何より高天原に住んでいる神々の中で一番頭がいい。


彼は腕を組んでしばらく考えると、今度は八百万の神々にテキパキと指示を出しはじめた。

オモヒカネ

ではまず、『常世の長鳴鳥』をなるべくたくさん捕まえてきてください。

オモヒカネ

あと、天金山から鉄を取ってきて、鍛治師を呼んでイシコリドメさんに大きな『八咫鏡』を作ってもらって・・・

オモヒカネ

また、タマオヤさんには、たくさんの勾玉を長く連ねた『八尺瓊勾玉』を作ってもらってください。

八百万の神々は早速、手分けをして頼まれたアイテムをそろえに行った。その間に、オモヒカネは作戦の実行メンバーに声をかける。

オモヒカネ

この作戦のメインはウズメさんです。

ウズメ

わぁーい!ウズメが主役ー♪♪

日本の元祖アイドルとも言えるウズメは、見た目はとっても可愛いのだが、性格はどちらかというと、バラエティ向きの神だ。今では芸能の神として祀られている。

オモヒカネ

タヂカラオさんも重要な役割なのでよろしくお願いしますね。

タヂカラオ

おぅ、任せな!

タヂカラオは名前の通り、怪力の持ち主だ。趣味は筋トレ。これも見た目の通りだが。

オモヒカネ

それとフトダマさんは、太占をして作戦の吉凶を占ってください。

フトダマ

はーい!

オモヒカネ

コヤネさんは、フトダマさんのサポートをお願いします。

コヤネ

わかった。

フトダマは、太占(ふとまに)という、牡鹿の骨に入ったヒビを見ながら吉凶を占うのが得意な神だ。コヤネと仲が良かったからか、今ではよくセットで祀られている。


コヤネは、ダンディーな美声の持ち主で、祝詞(のりと)を、唱えるのが得意な神だ。
祝詞とは神様を呼ぶ時に、その神様を讃える詞のこと。今でも神前式や上棟式などで聞く事ができる。


早速、コヤネとフトダマは天香山から取ってきた牡鹿の骨をサクランボの木の枝で焼いて占った。すると、

フトダマ

今日のラッキーアイテムはサカキの木★枝をデコってあの子の気持ちをGET★★★

という結果が出たので、サカキの木を根っこからモギ取ってきて、オモヒカネに占いの結果を報告した。

こうして指示されたアイテムがそろうと、占いの通り、サカキの木の上に綺麗な勾玉を連ねた長い長い『八尺瓊勾玉(やさかのまがたま)』を巻き付け、中心には大きな『八咫鏡(やたのかがみ)』を設置し、下には、よく神社やご神木の縄についてる菱形が連なった白い紙と、緑の麻で作った飾りを、ファサファサとたくさん取り付けた。


タイマツのほのかな灯りを受けて勾玉がキラキラと反射し合い、まるで和製のクリスマスツリーみたいだ。


そんな優しい灯りにほっこりした一行だが ・ ・ ・ ・


コレで何をするのか、全く想像もつかない。

タヂカラオ

・ ・ ・ ・ ・ ・ でぇ、これから何すんだ??

タヂカラオに不思議そうな視線を送られたオモヒカネは、ニヤリと怪しげな笑みを返した。

オモヒカネ

ストリップショーです。

それまでオモヒカネのことを『インテリの草食系でいけ好かないヤツ』と評価していた八百万の神々だったが、すべての作戦内容を聞き終わる頃には、彼に対する眼差しが、尊敬と敬意のものに変わっていた。

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