誓約に負けたアマテラスは、スサノオを高天原の神殿に迎え入れた。ウルサイ弟だが、なんだかんだ自分を頼って来てくれたのは嬉しかった。

しかし翌日、アマテラスの部屋に八百万の神々の一人が飛び込んで来た。

コヤネ

アマテラス!助けてくれっ!
スサノオが育てた作物を荒らしまくってる!

どうやら調子に乗ったスサノオが、早速問題を起こしたらしい。

しかし誓約でも示された通り、彼はちょっとやんちゃなだけで悪気は無いのだ。

そんな弟のために、アマテラスはすかさずフォローを入れた。

アマテラス

いや、でも ・ ・ ・ スサノオは見た目によらず、可愛いところもあるのよ?
きっと害虫駆除をしてくれてるんじゃない?

と、アマテラスが神力を込めて言霊を発すると、たちまち畑は綺麗に戻り、害虫も消えた。

コヤネ

・ ・ ・ ・ ・ え、あぁ、 そうか???そうは見えなかったんだけどなぁ。

しかし、次の日もまた別の神が部屋に飛び込んで来た。

ウズメ

アマテラスちゃ~ん ・ ・ ・ どうしよぉ??

スサノオくんが田んぼの水路を壊しちゃったの!!しかも、まだお馬さんに乗って、穂の上を走りまわってるんだよ??

お願い、止めさせてっ!

アマテラス

あぁ ・ ・ ・ ・ ・
それはきっと畑を作ろうとしているのね!!

ウズメ

はたけー??

アマテラス

ほら、水路って、けっこー場所使うじゃない??それより畑の方が作物がたくさんできるって、みんなのこと思って ・ ・ ・

アマテラス

いい子でしょ???だいじょぶだいじょぶ。何の問題もないからっ!!!

するとまた、アマテラスの言霊の力で田んぼが畑へと変わった。

ウズメ

ん〜。そ〜だったっけかなぁ??

ウズメ

ま、いっか!

さらに次の日は ・ ・ ・

タヂカラオ

アマテラス!!大変だっっ!!!!

スサノオの奴、神殿のそこら中に、脱糞しやがった!!!

ダダッッ ・ ・ ダップン!?

・ ・ ・ ・ ・ ダップ ・ ・ ・ ・

タヂカラオ

臭くて掃除もできねぇよっ!!

え ・ ・ えっと ・ ・ ・ ・ お ・ ・ ・ ・ ・お酒に酔っちゃったのかなっ??

アマテラス

そうねっ!きっとお酒に酔っちゃったのねっっ!それ、ウ●コじゃなくてゲロよ。ゲロ!!大丈夫!なんとかなるっっ!!!

すると今度は、神殿中のウ●コが、ゲロに変わった。

タヂカラオ

いやぁ、ゲロでもダメだろ ・ ・ ・ ・ ・ ・

このようにアマテラスは、事あるごとにスサノオを神力を使ってかばった。

そんなある日。

アマテラスは、どんどん悪化するスサノオの暴走っぷりに疲れ、気晴らしに機織女たちのいる機織り部屋へ遊びにきていた。

自分でも手を動かし、神事に使う神聖な布を織っていく。久しぶりの単純作業が楽しくて心地よい。

と、その時。


という大きな爆発音と共に天井が抜けたかと思うと、皮を剥がされた馬が落ちてきた。その馬が、パニック状態で部屋の中を暴れまわる。

機織女たちが泣き叫び、外へと逃げ出していく。今までコツコツ織ってきた布も、機織り機も、部屋の壁も柱も全て粉々にして、馬は扉まで壊して外に出て行ってしまった。

一瞬の出来事に、アマテラスは恐怖で部屋の端にちぢこまった。

スサノオ

ガハハッッ!!!ちょ〜慌ててやんのっ!!
おもしれぇー!!!!

スサノオの声だ。

これもまた彼の度が過ぎたイタズラだった。

しかし、スサノオはすぐにどこかへ行ってしまったようで、部屋はシンと静まり返った。

アマテラスが壊れた機織り機や道具が散乱した部屋を見渡すと、誰かが倒れている姿を見つけた。

とてつもなく嫌な予感と共に、恐る恐る近づく。

!!

そこには、機織りの道具が陰部に刺さり、亡くなっている機織女の姿があった。


アマテラスはその場で力なくへたり込んだ。

オモヒカネ

アマテラスっっ!!!
何があったんですかっ!?

騒ぎを聞きつけたオモヒカネがアマテラスの元へ駆けつけてきた。彼の後ろからも、八百万の神々が、戸惑った様子で駆けてくる。

オモヒカネ

アマテラス、大丈夫ですか?

私のせいだ ・ ・ ・ ・ ・

オモヒカネ

何言ってるんですか。
それよりお怪我は ・ ・ ・

アマテラス

私がスサノオを放っておいたから
こんなことに ・ ・ ・ ・ ・

オモヒカネ

だから、貴方のせいでは ・ ・ ・

アマテラス

違うっ!!
私のせいよっっ!!!

そう叫ぶとアマテラスは何もかも投げ出して、その場から逃げた。

そして、ゴツゴツと大きな岩が広がる岩山へと飛んだ。そこには『天岩屋戸(あまのいわやど)』と呼ばれる、大きな岩のくぼみと岩戸がある。

彼女はそのくぼみに駆け込むと、岩戸をピシャリと閉め、結界を張った。

アマテラス

自分の弟の面倒もみれないくせに、私なんかが高天原のこと治められるわけないよ ・ ・ ・

今までイザナギに言われた通り、高天原の最高神として、努力してきたつもりだったが、その何もかもが無駄に思えた。


アマテラスはその場でうずくまり、子供みたいに泣きじゃくった。

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