よし、出来た

おおー、悟君が鋏で刺してしまった人形が元通りになりましたね

変な言い方をするな

事実ではないですか

……

そういえば、さっきから言うその『悟君』ってのはなんだ？

だってあなたの名前は『三宮悟』ですよね？
だから悟君です

俺は、何故『君』付けなのかが疑問なんだ

だって私の方が随分年上ですよ？

あの人形に宿っていた時点でかるーく百歳は越えていますし

……納得がいかないな

……お前、この人形には何かが足りないと言っていたな？

はい

……こんなことを聞くのは屈辱以外の何物でもないが……

…………

もう、さっさと口に出せばいいじゃないですか

何が足りないのか教えてほしいのですよね

……ああ

プライドが高い上に素直じゃないんですね、悟君は

な……っ

ほぉら、反発できませんね

黙れ

悟君は余裕がなくなるとすぐに『黙れ』って言いますね。私、覚えました

黙……

う……

私、少しずつですけど悟君のこと分かって来たんじゃないかって思います

？

お客様でしょうか

……無視しよう

え？　何故ですか？

あ、また……

…………無視だ

私、出てきますね

あ、おい！　待て！

どうぞー……？

やあ、悟……ってあれ？

君……は？

ああ、私ですか？
私は人形のたま……

黙れ！

！？

どうしたの悟、大声なんか出して。
それとこの子は誰？　悟のガールフレンド？
まさか攫ってきたんじゃないよね？

違う！　こいつは……

ですから、私は人形のたま……

たまこだ！

え？

たまこ……さん？

ああ、人形師見習いのたまこだ

……こ、これは同調した方がいいのかな
確かに魂なんて言ってもなかなか信じてもらえないし

え、えへへ……はい、人形師見習いのたまこです

にしても……悟君ネーミングセンスないなあ

へえ、人形師見習いのたまこちゃんかぁ

でも、悟って面倒くさい性格でしょ？
大丈夫？

ああ、それは大丈夫です

私は悟君の弱みを握っていますから

よ、弱み？

お、おい

弱みかぁ、僕にも是非教えてほしいものだなぁ

へへへ、それはですねえ……

おい、黙……

圭、お前依頼があるといっていたな

え？　あ、うん

君が強情だから依頼主に依頼料を上げてもらったんだ

ね、お願いだからそろそろ以来を受け……

元の値段でいい

全く、いつになったら文句なく……ってえ！？

元の値段のままで、依頼を受ける

こ、これはどういう風の吹き回し？

いいから、依頼内容を置いて今日は帰れ！

な、なんなんだよ……もう……悟の性格はよくわからないなあ

依頼を受けるといっているのだからいいだろう

はいはい

……帰ったか

必死でしたね

し、知るか

まあ、人形を作る気になったならよかったです

…………

…………あ

スランプ中なのに自信たっぷりな様子はすがすがしいです。
大丈夫ですよ、私も手伝いますから

一緒に、天才人形師三宮悟らしい人形を作り上げましょう

……ああ