2018年GW日程

4/28(土)29(昭和の日)30(振替休日) 3(憲法記念日)4(みどりの日)5(鯉のぼりが空を飛ぶ日)6(日)

※改訂予定※
宇都宮経由→新鹿沼から進高徳駅経由で4,50分で1000円以下で電車移動可。800m歩けばつくのでそっちのルートに変更。


ウェスタン村編のプロット

フラグ1:プロローグで菫がスーパーに向かい聖と邂逅している。聖が福引きで西部アメリカン村ペアチケットを当てている。
フラグ2:二木と和解している。
フラグ3:涼香からゴールデンウィークのお誘いを銭湯回で受けている。
フラグ4:銭湯回で銭湯に行った時に聖に会っている。



主な登場人物:
藤堂菫 :見た目は女、中身は男。その正体は菩薩観音像。「俺のターン!」
藤堂里奈:友達ともてぎ行く予定を予め入れてしまっていた為今回同行せず。「お姉ちゃんお土産よろしくね……?」
松園聖 :聖の読みはひじり。でもせいちゃんって呼ばれる。見た目はお嬢様。父親が百万くらい借金している(富士通事業圧縮で首切られたあと暫く再就職しておらずギャンブルに明け暮れていた為)。「あらあら、パンツを履き忘れてしまいましたわ」
松園光 :聖の妹。小学三年生。私に天使が舞い降りry「ひじねえは仕方ないな! 光がしっかりするんだぞ!」
伊吹涼香:兄弟が沢山いる人。主催者。中学生の頃秀一に恋心を抱いていたが伝えられずに終わった。秀一が死んだことを知らないでいる可哀想な人。
山田新左エ門:「あっしは山田新左衛門。武士でごわす」マジか、マジか……の人。
間桐雄一:ハーモニカを吹いて華麗に登場予定。インフェルニティデッキを使う。「俺の満足はこんなもんじゃねえぜ」
二木竜胆:「ワイハ~」



 五月三日。三連休を跨いでからのゴールデンウィーク初日。
 二日間だけの学校は三連休明けだったこともあり、短いようで長かったなあと思いつつも、ここから残りの四日間、最大限楽しむことにする。 
 待ちに待ったその初日。今日は涼ちゃんとの約束通り、西部アメリカン村へ遊びに行く日だ。
 駅に一度集合し、そこから宇都宮に向かい、バスでアメリカン村というちょっとややこしい行程だ。別の駅から直に向かうこともできるのだが、運賃が四倍くらい違うのと、間桐君が宇都宮の方に住んでいるのでそのような形になった。
 
「それじゃあ里奈、お母さん行ってくるねー」
「気を付けて行ってくるのよー!」
「お姉ちゃん……うう……私を置いていってしまうのね……」
「だって里奈、これから友達ともてぎ行くんでしょ?」
「くっ、別の日だったら行けたのに……!」
「仕方ないでしょ? お土産何か買ってくるから」
「うう……ならあれがいい。タイニーベアの限定ストラップ。代わりに私モモンガストラップ買ってくるから……」
「売ってたらね」

 里奈はタイニーベアという熊のようなマスコットのグッズを沢山集めている。
 私が以前やっていたMMOのマスコットキャラクターなのだが、何故か全国展開し地域ごとの限定ストラップが売っている。出身であるMMOがサービス終了した今もキャラだけが生き残っているという、絶滅危惧種みたいなものだ。
 あのキャラクターを見ると懐かしい思い出と共にサービス終了時にログインできなかった悲しさが……売っていたら私も自分用に確保しとこ。

 玄関を出ると父さんが庭の手入れをしていた。
 二十七日の金曜日から驚くことに十連休中の父さんであるが、流石に七日目の休み、ともなると暇なのだろう。

「お父さん行ってきまーす」
「ああ……行ってらっしゃい……」
 
 この前の三連休は温泉旅行に行ったけど、父さんにとってはそれがゴールデンウィーク中最大のイベントで、それが終わった今や顔が生きてるのに生き生きはしていなかった。賢者モードかな。
 今日は比較的暖かく、遊ぶには丁度良い気温。空もからっと晴れているし、とても良い一日になりそうだ。

 新鮮な空気を深呼吸して取り入れてから、徒歩でまずは|聖《せい》ちゃんの家に向かう。この前、お風呂が壊れた時に利用した銭湯のすぐ横のちょっとぼろいアパートの階段を上り二階へ、松園とある表札の玄関前に立って、インターホンを鳴らす。
 中からぱたぱたと小さな足音。

「おはよう! 良い朝だな! すみねえ来たぞ! ひじねえ早く早く!」
「あらあら、お待たせしてしまって申し訳ありません」
「いえいえ。まだ時間にも余裕ありますから」

 集合時間に余裕を持って行動しているので、早く来すぎたかな? 迷惑だったかな? と心配したけど杞憂だった。
 光ちゃんは既に準備万端と言った感じで、今日が楽しみだったことが伺える。聖ちゃんも折角当てたペアチケットが消化できて嬉しそうだ。折角行くのだから、二人にも存分に楽しんでもらわねば。
 
「ひじねえ財布は持ったか!」
「あらあら、忘れていましたわ」
「なんだって! 待ってろ、光が行ってくる」

 光ちゃんが部屋に戻って聖ちゃんが忘れた財布を持ってくる。一緒にペアチケットも持ってきた。

「光ちゃん偉い偉い」

 思わず頭を撫でてしまう。

「ひじねえはおっちょこちょいだな!」

 光ちゃんは満更でもないといった顔で胸を張りながら、聖ちゃんに持っていた財布とチケットを渡す。
 聖ちゃんに出会った当初は何でもできる凄い人ってイメージがあったけど、実際かなりおっちょこちょいだから心配だ。
 光ちゃんと聖ちゃんどっちがお姉ちゃんなのか分からなくなる時がある。

「ここから駅まで徒歩だけど、大丈夫かな?」
「ひじねえ疲れたらいつでも言うんだぞ! 光が背負う」
「まあ、光ったら。私はそんな病弱ではありませんー」
「ほんとか? 無理するなよ!」

 ほんと、二人は仲良いなあ。
 光ちゃんが玄関の戸締りをしたのを確認して、三人で駅まで歩く。
 チェインを開くと涼ちゃんももうすぐ駅に到着するそうだ。
 駅についても電車が出るまで三十分くらい余裕がある気が……みんなよっぽど楽しみだったんだな。分かる。
 
 結局、涼ちゃんは他のメンバーには聖ちゃんたちが来ることを伝えていないそうだ。
 学校での副会長としての聖ちゃんは完全無欠無敵超人みたいなイメージがあるから、他の皆驚くぞ。
 二木さんは今頃ハワイでフラダンスでもしているのだろうか。ハワイに行くからと言って一日学校休んでるからな……流石ギャル。不良ですわこれは。
 気になって今どんな感じかチェインを送ったら、即返信が来た。

『ワイハ~さいこ~』

 スタンプ付きで写真も送られてきた。丁度お昼時らしく、随分とでかいハンバーガーをかじっている。ドラゴンと仲睦まじくしている姿はまるでカップルだ。あれで付き合ってないって言うんだから驚きだよ。
 
「すみねえ笑ってるけど何か面白いものでもあったか?」
「あら、笑ってた? ハワイに行ってる友達から写真が来てね」
「ハワイ!? すみねえ外国の人と友達なのか! 凄いな!」
「いや、うちの学校の子なんだけどね。今ハワイに旅行行ってて」

 と説明しつつ写真を見せてあげる。
 衝撃的な写真だったらしく、ガーンという擬音が聞こえそうなくらいに驚いた顔をしている。

「や、やっぱり外国人だ……」

 二木さん金髪だし肌も焼けてるからそりゃ勘違いするよね……と思ったけど、お爺さんからの遺伝で髪は金髪目は碧眼だからあながち間違いではないのかも? 住んでるのは日本だけど一緒にいるドラゴンもフィリピン人とのハーフだから知らない人がみたらあっちに住んでる人に見えるか。

「まあ、美味しそうですわね」

 聖ちゃんはハンバーガーの方に視線が行っていた。

「そう言えば朝ごはんは食べたの?」
「はい、光ちゃんが作ってくれたので」
「ひじねえ起きるの遅かったからな!」

 光ちゃんは本当にしっかりしているなあ。きっと将来は良いお嫁さんになるよ。私が男だったら貰ってるところだった。……たまに忘れるけど私、元々は男だったわ。
 
「他にもいっぱい、写真送られて来てるよー」

 折角なので他のハワイの写真も見せてあげる。
 
「おおー! でも飛行機乗るんだろ。怖いな!」
「確かに」

 私も飛行機は苦手だ。離陸する時の感じと良い、自分が今、空にいると理解した時の恐怖は今でも忘れられない。
 俺が死んでいなければ、十月に沖縄に修学旅行の予定だった。私の学校は京都らしいので、飛行機の恐怖は感じずに済むのだろうけど、沖縄も行ってみたかったなあ。シークワーサー、サーターアンダギーは家でも作れるとして、シーサーとかも見たかったな。
 
「外国に行ってみたいぞ」
「光ちゃんたら、これから行くではありませんか」
「はっ! そうだったぞ! アメリカに行くんだ!」

 場所は日光だけどね、とは言わない。子供の夢を壊してどうする。
 私の方は昔、両親と里奈と一緒に行ったことがあるみたいだけど、俺の方は未体験の場所だ。
 
「今日は楽しもうね、光ちゃん」
「おうだぞ!」

 光ちゃんとハイタッチ。聖ちゃんがそれを微笑ましく見守っていた。





「すみぽん~! わっ、本当に松園さんだー! あと可愛い子がいる~!」

 駅に着くと、涼ちゃんが私に抱きついてきた。
 連絡はしていたけど、半信半疑だったらしく、聖ちゃんを見て驚いている。
 さらに可愛いものに目が無いので、速攻で光ちゃんに抱きついた。光ちゃんがちょっと苦しそうにしている。

「うぎゅ、苦しいぞ……」
「初めまして。今日はお誘い頂きありがとうございます」
「今日はよろしくね~」

 聖ちゃんが丁寧に挨拶する。涼ちゃんが光ちゃんを解放してあげると、ぜーはーと光ちゃんが声を上げていた。
 
「し、死ぬかと思ったぞ」
「ごめんね~」
「許すぞ! 松園光って言うんだ。お姉ちゃんはなんて名前なんだ?」
「自己紹介まだだったね~、伊吹涼香だよ~。二人ともよろしく~」
「これはこれはご丁寧に。改めまして、松園聖です。よろしくお願いします」
「これはこれは」
「これはこれは」

 互いにぺこぺこと同じことを言いながら頭を下げあっている。
 遂には光ちゃんまで真似して同じことを始めてしまった。何のコントをしているんだ。
 一応、電車は来ているようだ。これに乗れば目的地まで向かうことができる。
 今回はここに山田君も合流してから向かう手筈なので、置いてけぼりは悪いと思いこの電車は見逃した。 
 皆して早く来すぎたしね。

「そうだ~、先に切符だけ買っておこ~」
「おおー」

 雑談を終えた私たちは涼ちゃんに続いて駅のホームに入る。
 切符売り場はすぐそこだ。小さな駅ということもあり、切符売り場以外には椅子と自販機、それから情報誌の置かれた棚がある程度。物寂しいような気もするけど、だだっ広い駅よりもこっちの方が個人的には居心地が良い。
 私が切符を買った後、聖ちゃんたちが買うことになる。

「ごめんなさい。これはどうやって扱うのでしょう?」
「流石お嬢様……切符は買ったことがないのですな~」
「おほほほほ」
「ひじねえがお嬢様なら光もお嬢様だな!」
「それではお嬢様方~、この涼香が操作の仕方を伝授いたしましょう~」

 聖ちゃん家の台所事情とかはさっき合流した時の雑談の中で話していた。
 けどどうしても、見た目お嬢様っぽいから思わずそう言ってしまう気持ちは分かる。本人も別に嫌がってはいないようだし問題ないかな? むしろちょっとノリ気味だった。
 
「聖ちゃんって切符買うの初めてだった?」
「そうですねー、電車に乗るのは何年振りでしょう……」
「光は学校で遠足行く時乗ったけど、その時は先生が用意してくれてたから初めてだぞ! 涼ねえに教えて貰ったからもう大丈夫だ!」
「これはこれは光お嬢様。とても偉いですね」

 切符が買えてご満悦な光お嬢様の頭をなでなでしてあげる。はー、癒されるわあ。
 折角お嬢様ごっこをしているので私も使用人風の立場になって遊んでみた。すぐに涼ちゃんも乗ってきた。

「それではお嬢様方~、旅立ちの前のデザートなどは如何でしょう~?」
「では|私《わたくし》めが光お嬢様に素敵なデザートを振舞いましょう」

 涼ちゃんがメイド風、私が執事風で行く。









 それから少しして、山田君がやって来た。
 自転車で来たようで、一度此方の前を通り過ぎた後、二度見してから駐輪場の方に向かって行った。
 駐車した山田君がこっちにやって来る。

「悪い、ちょっと遅れちまったか?」
「ううん、むしろ私たちが早く来すぎたってところかな?」
「うんうん~、切符は先に買っておいたよ~」
「そうか。……藤堂さん、ちょっとちょっと」
「はいはい?」

 





 ハーモニカの音色だ。
 音の方を振り返ると、間藤君が演奏しているのが目に入る。
 演奏を止めた間藤君が顔を上げ、無駄にイケメンスマイルを浮かべた。
 何だこれ。

「やあ、皆お待たせ。バスももうすぐ来るだろうから、バス停の方に降りようか」
「そうだね~」
「おう」

 涼ちゃんと山田君は何事も無かったかのように間藤君の後ろに続くように階段下にあるバス停へと降りていく。
 今のスルーしちゃうんだ?

「素敵な演奏でした」
「ははは。照れるなあ」

 いつの間にか間藤君の隣にいた聖ちゃんが演奏を褒めている。
 スルーはしなかったけど、突っ込みどころはそこなのかな? 

「変な兄ちゃんだな!」
「光ちゃん……良かった。光ちゃんが真面で……」
「今度遊びに来る時は私もハーモニカ用意した方が良いか?」
「いや、いらないと思う」
「そうか!」

 光ちゃんが私の手を引く。それに引っ張られるような形で私も皆のあとに続いた。

 バスがやって来る。乗客は私たち以外にもいた。
 このバスは西部アメリカン村との往復バスで、テーマパークに入園する人は無料で乗ることができる。
 行きでは代金を支払う必要があるが、帰りにチケットを見せればその分のバス代が返ってくるという仕組みだ。
 途中幾つかの停留所があり、そこで降りる人もいる。観光客用のバスではあるが、それだけだと人が乗らないこともあって座席がかなりスカスカだった時代があるらしく、今のように一般の人も利用できるような仕組みに変わったとか。
 
「山と里。どっちが良い?」
「私は里かな~」

 山田君が戦争の火種になりそうなお菓子を広げていた。
 
  

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