2018年3月2日金曜日。

夕方いつものようにクマオがおかずを取りにやってきた。
次の日からクマオは社員旅行を控えていた。

「明日の旅行の準備しなきゃな」とクマオはその日もいそいそと帰っていこうとする。

取って付けたように、私に冗談を言い、私が笑うと嬉しそうな顔をしている。上機嫌だ。
しばらくすると、いつものように 「りこちゃん、おいしかったよー。ありがとう」 とライン。

しかし、夜も更けたころ、ふとクマオに電話をかけてみると出ない。
ラインも既読にならなかったが、引き続き私はラインをした。

「○○が観たい」。当時少し話題になっていた映画のことだ。

「それって映画?」 速攻で返信がある。

お、来た! 「そだよ。行ける?」 直後に返信した。が、何故かもはや既読にならない。
え?今の今じゃん。何で?

「クマオさん、今どこにいるの?」

「クマオさん、お電話して」

「クマオさーん。どこ?」

「クマオさん、どういうこと?」

立て続けに送信する私。が、既読になることはなかった。
疑念と不安がどくどく渦巻いてどうにも眠れない私。

日付が変わるころ、ふと空を見ると満月だった。
ベッドから見える満月。次の瞬間、何かに憑かれたように身体が動いた。

ベッドから起き上がり、そのまま上着を着ると私はクマオの家の前まで走っていた。

pagetop