クマオとの8年間は本当に楽しかった。
クマオはいつも全力で相手を楽しませようとする。
その上、クマオはいつも紳士的に優しかった。
私はクマオのおかげで人生が変わった。
どこにも行ったことのない私に毎年何回も旅行を計画してくれた。
夏になると、沖縄のちょっと贅沢なプライベートヴィラで、私たちはのんびりと
過ごすのが恒例になっていた。
ちょうど6年目の2016年の夏、そのヴィラでの最後の夜、ワインを飲みながら
クマオは言った。
「オレは本当に幸せだ」と。
その時の動画がある。私はその時のクマオの声と顔を一生忘れない。
クマオのその言葉は私を安心させすぎた。6年目にしてなお、そんなことを言ってくれる
クマオ。
実はすでにセックスレスだった私たち。男盛りのクマオがこんなおばさんといて何が楽しいのだろうかと心配な気持ちがないわけではなかった。
そんな時にこの言葉。それは私の危機感を遠ざけた。クマオと私は例外的に永遠に続くのではないか、そう思ってしまったのかもしれない。
あの時クマオがそんなことを言わなければ、私の心はこれほど無防備ではなかったはずだ。
そんな過去のクマオの言葉にさえ傷つく自分。
結局ほぼ7年もの間、シンデレラの魔法は続いていた。
その魔法がとける時がいよいよ来たんだ。