魔法がとける。

何よりも恐れていた瞬間がいよいよカウントダウンを始める。
覚悟を決めながらも、私はあることを思いついていた。

私には二人の息子がいる。そしてその長男の結婚式を3月21日に控えていた。
それまでクマオとはただの友人ということで家族に紹介していた。

息子たちは本当のことを知ってか知らずか二人ともクマオによく馴染み、何でも相談していた。
クマオの方も兄貴分のように振舞い、洋服や時計など自分の物を息子たちに気前よく譲ってくれたりしていた。

そんな関係性の長男はクマオを披露宴に招待し、当然クマオも出席してくれることになっていた。
その日までは、何としてもクマオと私の関係はこのままでいなければならない。

クマオが気まずさから出席を辞退するようなことがあっては、長男に申し訳ない。

「マナブ(長男)の結婚式まではこのままでいさせてほしい」。
その時はそう願い出よう。
きっとクマオは受け入れてくれるはずだ。

そしてこんな提案を持ちかけるには、もうひとつ大きな意味があった。

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