今日もトレインは動く。
「乗車魂数は…385?いつもより多いなぁ…」手違いかと思い見渡してみるが、どうやら手違いはなさそうだ。よく見ると300個くらいが人間で……同じ服を着ているものが多かった。

「自然災害が起きたのか?」と聞いて見ると一人が
「いいえ天使様……戦争でございます。」と答える。同じ服を着ている人々は全員男で兵士として戦っていたところ、戦死してしまった人たちだった。さらに、汚れた服を着ている数人は、爆発に巻き込まれたようだった。

すると一人の男性がエベレッタの肩を掴み
「お願いだ!見逃してくれ!まだ故郷に妻や子供たちがいるんだ……せめて、故郷で死なせてくれ…」とすごい形相で言ってきた。
「君だけ特別扱いするわけにはいかないんだ。平等に……それが天界の掟だ。」

男性は項垂れ、渋々と席に着こうとした…その時。
「お前……お前は敵国の兵士だな!?よくも俺たちの国を…!」さっきの男性が他の男性の胸ぐらを掴んでいる。よく見ると、二人の隊服はよく似ているが胸元に付いている国のワッペンのデザインが違う。
「落ち着け、ここで争っても意味がないぞ!」
「うるさい!……お前は天使だからそんなことが言える…でも俺たちは違う!目の前で死んでいく仲間たち、死んでいった市民…全部コイツらのせいで…!」男は涙ぐんでいる。

すると胸ぐらを掴まれていた男は
「そんなの俺たちだって一緒なんだよ…お互い自分で望んでやってることじゃないんだろ?俺は……俺はお前を恨んでない。恨むべきは自分で戦場に立たない大統領だ!冷静になれ!」と悔しそうに言った。
周りの兵士たちもみんなないている。
「人間とはこうも儚い生き物なのか…」とエベレッタは自然と言ってしまった。
おかしいな……私も人間だったはずなのに…
少しずつ互いを受け入れていく兵士たちの魂をエベレッタは見守っていたー

ついに星となる時がきた。兵士たちはもう誰も泣いてない。最期にできた友と一緒に星になっていく。すると,あの男がこちらへ駆け寄ってきて白いハンカチを手渡してきた。
「短い間でしたが、お世話になりました。」
「うむ……ありがとう」と言いつつ、用途に困る。
「すまないが、あまり使わないかもしれない」と言うと
「とりあえず、ソレ、拭いてください♪」と男はエベレッタの瞳を指す。

エベレッタの目には少量ではあるが、涙がうかんでいたー

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