もののけ界。
 ここは罪を犯した者が更生する場所。

「嘘つき」
 川原で横になっていた咲の上にぬっと顔を出す蛇女の那澄。
「きゃあああ!驚かせないでよ!」
「よくも騙したわね」
「なんのことかしら?」と起き上がる咲。
「牢獄から出してくれるからって言うから協力したのに、また牢獄暮らしじゃない」
「あら、暗くて泥臭い牢獄よりはマシだと思うけど?」
「それもそうね。あんた、あの黒狐をあそこから出したかったんでしょ」
「そ、そうよ!悪い?好きな殿方があんな暗くて狭いところにずっと閉じ込められたままなんて耐えられないわ」
「大それたことするものね」
「こんな自然豊なところで暮らせるんだからしっかり更生しなさいよ」
「更生ねぇ、私は100年経っても無理ね」
「じゃあ一生出られないわね」
 蛇女は咲をひと睨みしてその場を去った。

 香穂と蓮夜を送り出した後、咲と宗冥、蛇女の処罰について「重い処罰かもな」と言うリクに対してマキノは「待ってください。こうは考えられませんか?もし咲さんが動かなければ今回の結末はなかったと思います」
 リクは頭を抑えて少々考えた後「まあなんとかなるだろう」と言った。
「那澄さん、でしたっけ?」気絶から目が覚めていた蛇女に話しかけるマキノ。
 急に名を呼ばれて驚く蛇女。
「私たちが集まっていた先ほどの木ですが、あれは妖力を目覚めさせる幻の木ですよね」
「よく知ってるわね」
「うろ覚えなのですが、いつ現れるかもわからない木だそうで」
「私の一族はあの木を代々守ってるの。悪用されないように。これが道しるべとなる石よ」と言い首から下げていた淡いオレンジ色の石を見せる蛇女。

 リクを見るマキノ。
 はいはい、とマキノの言いたいことを察して上への報告文を書くと言う。
 咲、宗冥、那澄は、3000年に一度生まれる伝説の白狐の力を目覚めさせて元の場所へと戻すために協力というかたちにした。無理やりだがあとはどうにかこうにか上手く書いた。
 蓮夜と香穂のことは伏せておいた。

 しばらく経った頃。
「今日は釣り竿とバケツを持ってきてやったぞ」とリク。
 ぷいっとそっぽを向く宗冥。釣りなんかするかという態度だ。
「釣りはいいぞ。忍耐力はつくし健康にもいいし自分で釣った魚はなにより美味い」
「マキノに会わせろ」そっぽ向いたまま言う宗冥。
「俺付き合おうか?」とのんきな声で奏が言う。ここで渋然を手伝うことにしたのだ。
「はいはい、釣りに行きましょうねー」とまるで子供をあやすように宗冥の腕を引っ張っていく咲。

 いつここから出られるかはわからない。
 でも今が一番穏やかに過ごせるかもしれない。宗冥はどうだかわからないけど、少しづつでもいいから変わっていけることを願う咲だった。

28話 咲と宗冥、その後

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