奏さんと咲さんがはるの荘に来て一ヶ月。
 今日は奏さんのバイト先にみんなで行くことに。

 じゃじゃーん!奏さんにもらった岩盤浴の割引券!
 岩盤浴なんて初めてだからわくわくなのよね。

「香穂ー、行っくよー」
「はーい」
 咲さんの呼ぶ声で玄関に。

「あいつ洒落たところでバイトしてるよな」と蓮夜さん。
「お給料いいみたいですよ」
「すぱすぱ!」と春雷君。

 奏さんのバイト先のスパへGO!

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「いらっしゃい」
 さわやか笑顔で出迎えてくれたのは咲さんの双子のお兄さんの奏さん。
「岩盤浴は子供はだめだぞ」
「子供じゃないわよ。でもこの姿じゃ仕方ないわよね」と咲さん。
「フリースペースあるから、咲と春雷見ながら蓮夜と交代で入ればいいよ」
「香穂、先に入っていいぞ」と言う蓮夜のお言葉に甘えてお先に入ることにした。この後とんでもない事態になることなんて知るよしもなく。

 岩盤浴に入って30分が経過した頃。

 汗ドバドバじゃん!こんなに汗出てくるの!?喉渇いた。メイク崩れっちゃったじゃない。も~~~~すっぴんで来るんだったわ。

 岩盤浴を出たら「おっ、出てきたか。ってなんで顔隠してるんだ?」と蓮夜さん。
「気にしないでください。蓮夜さんもどうぞ」こんなメイク崩れの顔見せられるわけないじゃない。

 しかし、蓮夜さんは10分足らずで出てきてしまった。
「俺、これ苦手かもしれない」
 あらら、まあ合う合わないってあるわよね。
「温泉行きましょうか」

「私ちょっとお手洗い寄ってくわ。先行ってて」と咲さん。
「じゃあ上がったらロビーに集合ってことで」
 蓮夜さんと春雷君と待ち合わせ場所を決めて温泉に向かった。

 少しすると咲さんも入ってきた。
「おまたせー」
「ん?咲さんちょっと顔色悪いですよ。体調悪いなら無理しなくても」
「大丈夫、大丈夫。ほら行くわよ。温泉入ってきれいになってメイク直さなきゃね!」
 はっ。そうだった。このドロドロに崩れた顔をはやくなんとかしなくちゃ!

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 温泉の後は二階のレストランへ。
「ほら春雷、こっち向いて。ちゃんと口拭かなきゃでしょ」
 咲さんが食後に春雷君の口を拭いてあげてる。なんかお姉ちゃんみたい。微笑ましいなぁ。
「自分でできるよ」と春雷君。
 可愛い~。あー写真撮りたい。
「オレンジジュース飲む」
「はいはいドリンクバー行こうな」
 蓮夜さんと春雷君がドリンクバーに行くと、
「ねぇ、香穂」
 咲さんを見るとなんだか寂しげに見えた。
「なにがあっても私あなたの味方だから」
「それ、前にも言ったような」
「そうだったわね」と笑う咲さん。その笑顔はなんだか少し無理につくってるようにも見えたけど、
「そうです」と笑みを返した。

 咲さんのこの発言の意味が後々になってわかってくる。
 切ない結末と共に。

 スパを出た後。
「帰りましょう、はるの荘に」
「うん!」
 咲さんと手をつないで一緒に帰った。

21話 奏さんのバイト先にて

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