夕食後、五人の執事を集め、久しぶりに『審議会』を開くことにした。
「皆さま、お忙しいところお集まりいただき、ありがとうございます」
「どうした、お嬢。
『犯人』が見つかったのか?」
赤井の言っている『犯人』とは、恐らくエビちゃんの事だろう。
「えー。その件に関しましては調査中でありまして、引き続き調査を行いたいと……」
「何だ? お嬢。
皆、忙しいんだ。
言いたいことがあるのなら、早く進めろ」
「黒川ッ!
今回、審議に掛けるのは、全て黒川の件ですよッ!」
私は今日配られた台本のコピーを皆に配った。
「いいですか。
黒川は、我が演劇部を汚いお金で乗っ取り、『劇団☆黒川』を立ち上げて、王のごとく君臨し、やりたい放題大暴れしているのですよ」
「実際、大暴れしていたのはお嬢だけどな」
「静かにしてください、黒川。
これから、この台本の審議を始めたいと思います」
ふぅー。
やっと、審議を始められる。
先が思いやられるな……。
「まず、お渡しした台本の表紙をご覧ください。
『脚本:黒川』
これは百歩譲って良しとします。
その下の『出資:『劇団☆黒川製作委員会』。
何なのですか?これは」
「お嬢。スポンサーが1人ではなく、複数いることを『製作委員会方式』と言うんだよ。
今回、『劇団☆黒川』には、僕や白石君、隣の二階堂さんや関口さん達も出資しているから、僕達も『製作委員会』に入っているよ」
青田が説明した。
「関口さんッ!」
ぐぬぬ。
隣の二階堂さんどころか関口さんまで仲間に入れて……。
黒川、卑怯なり。
ところで関口さんって、一体何者なんだ!
「せ……、製作委員会の件は分かりました。
黒川、今日は貴方一人、パイプ椅子ではなく、高級そうな肘掛け付きの椅子にふんぞり返っていましたよね?
あれは巷で話題の『ゲーミングチェア』ではありませんか?」
私はインターネットで検索した『ゲーミングチェア』のチラシを皆に配った。
「推定価格1万円から5万円。
大切なスポンサー様から預かったお金を、自分の私利私欲のために使っていますね?
さあ、皆の前で罪を認めなさいッ!」
黒川が黙って立ち上がり、部屋から出て行った。
皆も黙り込んでしまったので、辺りがしんと静まり返った。
……ふふ。
ぐうの音も出なかったようね。
これで明日から元の『演劇部』に戻って、心置きなく練習できる。
さて。
今日のおやつは何かしら。