翌日、エビちゃんは学校へ来なかった。
もちろん私に話し掛けて来る人もいない。
昼休み、白石が教えてくれたベンチに弁当を食べに行くと、ベンチで手を振っている赤井と桃の二人が見えた。
「お嬢、遅いよ」
「早く食わないと昼練に間に合わなくなる」
「ど……、どうしたのですか?
二人とも……」
ベンチまで走ったから、呼吸が乱れる。
「お嬢と一緒に弁当を食べようと思ってね、白石君にこの場所を教えてもらったんだ」
「早く食って。皆、昼練に出るだろ?」
赤井は待ちきれない様子で、弁当をガツガツと掻き込んでいる。
「ボクもチア部の練習があるから。
お嬢も演劇部の練習があるんじゃないの?」
演劇部……。
「そう言えば、我が演劇部は黒川に乗っ取られて『劇団☆黒川』になり、黒川による台本の大幅改編により、しばらく練習が休止になっていました」
「ああ。黒川君なら、今日の昼休みに松田先輩に出来上がった台本を渡しに行くと言っていたぞ」
「ええー!
じゃあ、私ものんびりしていられない。
早く弁当を食べて、体育館に向かわなくちゃ」
私も急いで弁当を取り出した。
「ふふ」
「どうしたの? お嬢」
「いや。3人でベンチで食べていると、何だかピクニックに来たみたいで」
「そうだね。
こうして食べるのも、新鮮だね」
「さーてと。
じゃあ、俺、バンドの練習に行ってくるわ」
「あー。
私もそろそろ黒川を倒しに行ってきますか」
体育館に着くと、部員のほとんどが集まっていた。
「あ、さち子さん、こっちこっち。
急にごめんね。
さち子さんの教室まで呼びに行ったけれど、いなかったから、どうしようかと思ったよ」
そう言いながら、松田先輩が手招きをした。
黒川は……。
肘掛け付きの椅子でふんぞり返っている。
「今日、皆に集まってもらったのは他でもない。
スポンサーの黒川様の台本が出来上がったので、読み合せをしながら、修正する箇所をチェックしていこう。
黒川様、よろしいですか?」
「ああ」
チィッ!
黒川の奴め。
何が「ああ」だよ。
格好つけちゃってさ。
本気で演劇部を乗っ取ろうとしているね。
そうはさせないんだから!