お狐兄妹の奏さんと咲さんがちょくちょく遊びに来るようになって2ヶ月が経った。
遊園地や観光、スイーツめぐり、部屋でまったりおうちごはんなど春雷君も大喜び。
そして6月に入った頃、咲さんが蓮夜さんのバイトしてる姿が見たいと言うのでカフェに行くことに。
「あのれんれんがね〜」
頬杖しながら蓮夜さんの働く姿を見て咲さんが感心したように言う。
「丸くなっちゃって」と柔和に微笑んだ。
「あの、前の蓮夜さんてどんなかんじだったんですか?」
「聞いたことない?」
「はい。聞いたんですけどはぐらかされちゃって」
「まあ自分では言えないかもね。怖いオーラは漂ってたけどあのルックスでしょ?黙ってても女が寄ってくるわくるわ」
やっぱモテモテだったんだ。
「でもいつも一匹狼ってかんじでどこか寂しげだったなぁ。そんなれんれんを変えたのは春紅様。でも私思うの。そう簡単には変わらないんじゃないかって。春紅様と過ごしてるうちに本来の自分を取り戻していったのかもね」
宿縁……。
咲さんの話を聞いて私はなぜだかそんな言葉が浮かんだ。
来週の土曜も来ると言うので私はパンケーキを作って待ってると言った。
しかし……。
土曜日。
奏さんに肩を抱かれてやっとの思いで歩いてくる弱々しい咲さん。
「咲さん!大丈夫ですか!?」
顔色が悪い。それに少し痩せたかんじがする。
この一週間でなにがあったの?
私は布団を敷くと言ったけど、座ったままでいいと言うので私の部屋で話すことに。
「今日どうしても会いたかったの。最後になるかもしれないから」
え……。
「詳しくは言えないけど、昔へまやっちゃってね。呪われてもう長くないみたい」
なにも言えなかった。
「なんて顔してんのよ。この2ヶ月すっごく楽しかった。香穂に会えてよかった。れんれんも春雷も楽しそうに過ごしてて嬉しかった」
咲さんは目を開けていられるのもやっとなのだろう。すごく苦しそう……。
「どうしてもっとはやく言ってくれなかったんだ」
蓮夜さんが奏さんにきつい目を向けた。
「すまん、咲にどうしてもと口止めされてたんだ」
辛そうな顔で言う奏さん。きっとほんとはもっとはやく打ち明けたかったのだろう。
「どうせいつかは消えるんだから。それが少し早まっただけよ」と苦しいのを我慢して話す咲さん。
「香穂、れんれんと春雷のこと頼んだわよ。喧嘩別れなんかしたら化けて出てやるんだから」と笑って言う。
そんな、突然、こんな別れ方って……。
せっかく仲良くなれたのに。
涙が溢れてきた。
「ほら泣かないの。美人が台無しよ。ごめんなさいね、パンケーキは食べられそうにないわ」
そう言う咲さんの手を握り首を振る。
「私も咲さんに出会えてよかったです」
やっと出た言葉に咲さんは目を閉じ口元が緩んで穏やかな顔つきになる。
そして咲さんは奏さんに抱きかかえられてもののけ界に帰っていった。