年が明けた。
お雑煮を食べてると「じゃまするぞ」
リクさんが来た。
「なにかわかったんですね。お雑煮よかったらどうぞ」
リクさんはお雑煮に手をつけず険しい表情をして口を開く。
「九羅を誑かした奴がわかった。黒狐、名を宗冥」
しゅうめい……今度こそ真の黒幕よね。
「で、そいつに会ってきた」
「一人で!?大丈夫だったんですか?」
「一人ではない、マキノも一緒だ」
マキノさんも関係してるってこと?
「少し俺の話をさせてくれ」
リクさんは少し俯き、話しはじめた。
「蓮夜と出会うずっと昔、俺は鬼の亜我奴に仕えていた。奴の悪事に数えきれぬほど加担したが嫌気が差してきてな。そんなときマキノと出会った。それで、あの、あれだ」
言葉を濁すリクさんの言いたいことが私にはわかった。
「好きになったんですね」
リクさんはコホンと咳ばらいをして続ける。
「亜我奴は俺を服従させようとマキノを狙った。マキノは身を呈して戦ってくれたよ。そして亜我奴を封印した」
マキノさんってそんなに強いんだ。
ん?前に鬼が言ってた封印した白虎ってマキノさんのことだったんだ!
でもマキノさんには耳も尻尾もないわよね。
「マキノは耳と尻尾を喰われた。空狐様のところへ修行へ行くはずだったんだが喰われたせいで行けなくなったんだ。そしてそれを知った黒狐の宗冥がマキノの前に現れた。宗冥は一度はマキノのことを諦めたが、修行へ行けなくなったと知るや執拗につきまとうようになった。でもマキノは俺についていくと言って宗冥を突き放した」
「マキノを自分のものにできない腹いせか」蓮夜さんが言う。
「ああ、今回のことも春雷を呪いの狐と吹聴したことも奴の仕業だ。マキノに関わる周りの奴らへの嫌がらせだ」
うわっ、そのしゅうめいって人、子供じゃん!一体いくつなのよ。
おかげでこっちは大蛇に食べられそうになったんだから。
文句言いたいわよ!
「で、その黒狐とは話がついたのか?」
「ああ、マキノが思い切り殴ったよ」
え~~~~~~!
リクさんへのなんのためらいもないビンタもびっくりだけど、マキノさんって穏やかに見えて実は気が強い?
「今日はこれで失礼する」
リクさんはそう言うと去り際に「すまんな、雑煮は今度いただこう」と言ってもののけ界に戻っていった。
「雑煮を食べる気分ではないだろうな。黒狐は投獄されただろうし」
「ですよね」
「前に言ってたよ。春紅からあの店を任されて、ここを守ることで、お前たち親子を手助けすることで自分の過去の罪がチャラにできたらなって」
そっか……。
リクさん、マキノさんの名前を呼ぶときすごく顔が和らいでるような感じがする。
一連の事件は黒狐が捕まったことで幕を閉じたけど、噂というものはなかなか消えてくれない。
蓮夜さんと春雷君はもうしばらくはるの荘に住むことになった。
そして私は今度こそ3人で穏やかな生活ができることを願った。