はるの荘、蓮夜さんの部屋。
「あの、蓮夜さん」
「ん?」
「今回のこと、おじさんには黙っててもらえますか」
「あ、ああ、そうだな、心配かけたくないしな」
それもあるけど……おじさんがこのこと知ったら無理にでも私を引っ越しさせる気がする。
「あと、もののけ界につながってるこの壁なんですけど、リクさんはどうして通れるんですか?」
あれ、どう見ても妖怪よね。足?手?が八本……まるで蜘蛛みたい。
もののけは通れないって蓮夜さん言ってたよね。
「わからないんだ。俺と春雷がこっちに来て間もなくリクがあの木の前でコケて通り抜けられることがわかった」
「んー、蓮夜さんと春雷君に危害を加えない人が通れるのかな」
「そう、かもな」
蓮夜さんは少々曇った表情をする。
「香穂、危険な目にあわせてしまって本当にすまない。またいつ今回のようなことが起こるかわからない。香穂の身の安全を考えてここを」
「私は大丈夫です!」
蓮夜さんの言いたいことはわかる。でも、離れたくない!
「さあごはんごはん!今日はハンバーグですよ」
「ハンバーグ!」
春雷君がきゃっきゃと喜ぶ。
私はまだ曇った表情をしてる蓮夜さんに背を向けて夕食の準備に取り掛かった。
「すまない」と、蓮夜さんの消えそうな声が聞こえた。
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そしてクリスマスの前日、リクさんが来た。
「じゃましてるぞ」
「香穂、おかえり」
「ただいま。リクさんいらっしゃい。なにかわかったんですか?」
「ああ、蛇女がぜんぶ吐いた」
リクさんは険しい表情をして言う。
「鬼と蛇女のバックに黒幕がいる」
「そいつが鬼の封印を解いたのか」
「ああ、九羅姫だ」
「馬鹿な!存在するかもわからない伝説上の神だぞ!」
「ますますわからんな。九羅姫が鬼をそそのかして春雷を狙わせたとしたら……」
「鬼が封印された今、春雷を狙うのは九羅姫か。信じられん」
「春雷を狙ってなにがしたいのか……」
真の黒幕が判明したところで話はひとまず終わった。
そしてクリスマス。春雷君の300歳のお祝いも兼ねて盛大にパーティーをすることに。
コツンッ
グラスに注いだシャンパンで乾杯!春雷君はオレンジジュース。
「香穂がそちらに行ったときは世話になったそうで」
「なぁに、大したことはない」
おじさんとリクさんの久しぶりのご対面。
「かほ!見て見て!僕人間に化けられるようになったよ!」
春雷君が人間に化けて見せてくれた。
「今度出かけような」
蓮夜さんが春雷君の頭を撫でる。
「うん!」
春雷君は満面の笑みで答える。
そうだ、春紅さんからいっぱい思い出を作ってほしいって言われたんだっけ。
よし!これからいい思い出いっぱい作るぞ!
クリスマスの夜に春雷君の300歳をめでたくお祝い。
新たな敵、九羅姫への不安を抱えながら眠りについた。