ある時、担当の秋田さんと打ち合わせした時だった。
「ところで山田さん、何か気になることとかあります?」
私は言いづらいと思いつつ、遠回しにランキングの話題を出した。
「えっと、強いて言うならランキングが……私の作品は人気がないみたいでどんどんランキングが下がっちゃいますね。読者さんの投票も悪いみたいですし」
「あー、ランキングね。でもあれはあんまり気にしなくていいですよ」
「でも、ランキングが低いと打ち切りですよね?」
「それはですねー……実は編集部が気にしてるのってランキングじゃないんです。アンケートなんですよ」
「アンケート?」
「はい。時々読者向けにランダムでアンケート送ってるの知りません?」
初耳だった。
読者の反応が見られるアンケートなんて、知らされた事もない。
作家にとってアンケートの結果は作品作りに役立つと思うのだが、何故今まで黙っていたのだろう。
「アンケートで読者の好きな作品、嫌いな作品を集計してます。それを元に打ち切り作品を決めているんです。好きな作品はもちろんですが、嫌いな作品という声が多いのも打ち切りにはしないんですよ」
「どうしてですか?」
「アンチが多いってことは、それだけ注目されてるって意味でしょ?わざわざ嫌いだってリアクションするほど読者の心を掴んでいる証拠です」
「なるほど」
「一番駄目なのは反応がない作品です。好きでも嫌いでもない。だから、嫌いな作品にも名前が挙がらないような無反応の作品から打ち切りにしてるんですよ」
「そうだったんですか。でも、アンチがいると低評価が沢山つけられてランキングがどんどん下がっちゃいますよね……。そうすると下に追いやられて新規の読者さんもつかないですよね……」
「それなんですけどね、実は低評価を入れると点数が上がる仕組みになってるんですよ」
「ええ?」
「さっき言った通り、アンチが多い作品は裏を返せば注目作ってことでしょう?わざわざ低評価を入れるリアクションまでしてるんだから、そのリアクションも込みで得点にしてるんです。アンチが反応するほど作品の得点は加算されるんですよね」
そうだったのか。つまり、もしもアンチが低評価を入れた場合、それがマイナス点になるのではなく「わざわざ低評価された」というプラスの得点になるのだ。
だから大量アンチを抱えている炎上作品も、評価が高く人気のように見えるのだ。
「まあアンチの声なんて気にしなくていいですよ。だってあいつら、漫画すら描けないただの素人でしょ?漫画家と同じステージにすら上がれないくせに偉そうな上から目線でアンチコメントや低評価する奴なんて、いちいち相手にしなくていいです」
「そうですか……」
それは秋田さんなりの励ましだったのかもしれないが、なんとなく秋田さんの内面というか考え方が垣間見れたようだった。
そしてランキングの裏事情やアンケートの話。
ところどころに不透明な部分があり、打ち合わせをしたのに気持ちが晴れない結果になった。