ある時、私はSNSでとある作家からフォローされた。
コハル先生(仮名)という方で、私は以前からコハル先生の作品を愛読していた。
私はすぐにフォローバックをして、SNS上ではあるがコハル先生と交流を始めた。

コハル先生の作風も日常的なギャグやはじけ飛んだコメディ作品だったので、私の作風と近いものがあった。
そのせいか…もちろんお世辞もあるだろうがコハル先生から「山田マヤさんの作品は面白い」とお褒めの言葉もいただけた。

自分よりずっと前にデビューした業界歴の長い先生と交流できたり、感想やファンアートがいただけたりするのはとても嬉しかった。
コハル先生はたびたび、コミックコミックの作品を読みそれに関する感想も発信していた。
どうやら、ユーザーとして利用してくださっているようだ。

大抵はコハル先生が読んでいる漫画の感想や面白かったポイントといった当たり障りのない内容だった。
しかしある時、コハル先生の投稿で気になるものが目に留まった。

「某漫画アプリだけど、あれ作品の評価っていくらでも操作できるんだね。一人でアカウントを何個も作れるから作者が自作自演して自分の漫画に沢山高評価を入れればランキングが上がる。そしてライバル作品に沢山低評価を入れれば簡単にランキングが下げられちゃう」

このような内容だった。
さすがにアプリ名は出せないのだろう。某漫画アプリとぼかした内容だった。
しかし、コハル先生がコミックコミックを愛読していることは知っていた。
その後もこのような投稿がされていた。

「やっぱり某漫画アプリおかしい。面白い作品が軒並み低評価でランキングも下。たいして面白くない、ありがちな恋愛漫画や青春漫画みたいなのは高評価でランキングもずっと上位を独占している。こんなの本当に正しいの?」

「絵が可愛かったり綺麗だったりする、見栄えだけはいい作品だけランキングに入れたいのか?絵ばっかり綺麗でも話がつまらなきゃ読みたくないのに。内容で勝負している作品が目立たないのは不公平だと思う」

「ただ可愛い女の子とイケメンが最初からイチャラブしてるだけ。そんな漫画のどこが面白いの?某漫画アプリはそんなつまらない漫画ばっかり推していて信用できない」

業界歴の長いコハル先生は、とある漫画アプリの評価制度とランキング制度に疑問を抱いているようだった。
ただし、アプリの名前ははっきりと明かされていない。
私はふと、もしかしてコミックコミックのことではないかと思ってしまった。

かといってコハル先生本人に「それってコミックコミックのことですか?」と尋ねるわけにもいかない。
結局私とコハル先生はSNSでつながってはいたが、それについて詳しく聞くことはできなかった。

もしかしたら全く別の、無関係なアプリに関する感想だったのかもしれない。
コハル先生と交流できなくなった今となっては、謎のままである。

12.先輩作家からの疑問

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