●相談内容
飼い主のダジャレの質が最近落ちているから、なにか病気や悩みがあるのではないか心配だ。

判断基準はともかく、とっても飼い主さん想いのブルドッグのブルザー・・じゃなかった、ブルーザー。

私は重い腰を上げ、飼い主である隣のおじさんの家に行きました。

『やあ友美ちゃん。いらっしゃい。ウチに来るの何年ブリダイコン?』

『・・・・・・・・・』

(ああ、いきなりお出迎えの一発か・・・ダジャレじゃないけど・・)

『あ・・えっと・・5年ぶりくらいだと思います』
私は一発目に強力なダメージを受けた為、適当に答えておきました。

本当に昔は意味不明によく遊びに行って、漫画を見せてもらったりしていました。
今回お邪魔した口実も、漫画を借りたいと言う事とブルーザーと遊びたいと言う事にしてあります。

家に上がるとブルーザーは玄関で骨の形をした、犬用のガムをカジカジしていました。

『こら!ブルーザー。食べ物はキチンとキッチンで食べなさい!』

『・・・・・・』
(ああ・・・たしかに寒いね。こんなの聞かされてたら、たしかにマジくしゃみでるよ・・・)

『おじさん。早速漫画棚みてもいいですか?』

『ああ。友美ちゃんはお茶でいいかな?』

『あ、すみませんわざわざありがとうございます!』

『了解。じゃあおっちゃんもお茶飲んじゃおうかな?』

私はすかさずスキル【愛想笑い】を発動。

『ハハハ・・・』
(意図的に言ってるんだよね?ジュースだったらどうなるんだろう・・)

私のHPはすでに警告音が鳴っていますが、気を取り直して漫画棚を漁り始めました。

(うん?結構新刊あるなあ。うん!沢山借りてっちゃおう!)

私が我を忘れて楽しんでいるとブルーザーが来てこっそり話しかけてきました。

『友美ちゃん・・・本来の目的忘れてないかい?』

『え?ああ。ごめんごめん。とりあえずこれ終わったらね』

『あ!おじさん!この漫画9巻だけ歯抜けなんですけど・・』

『ああ。それは9巻は休刊・・・なんちゃってな!』

(そうかあ・・・それなら世の漫画すべて9巻は存在しないよね・・)



その後、貸した漫画を万が一にもなくすな・・などのダジャレが飛び出しましたが愛想笑いで私は切り抜けました。

その後ブルーザーと2人でお話しました。

『ね!寒すぎるだろ?友美ちゃん』

『ああ・・・たしかにね。重症だよ』
(どうでもいいんですけど・・・)

『やっぱり病気なのかな・・・』

『・・・・・』
(まあ、ある意味病気かもしれないけど)

『ところで以前は楽しかったって言ってたけど、今と何が違うの?』

『うーん・・じゃあご主人の傑作ベスト3聞くかい?』

『え?・・・あ・・うん。一応聞いておこうかな?』
(しまった・・・墓穴掘った・・)

『まず第3位は・・・・』

(いや・・そんなわざわざ、ランキング歌番組風にカウントダウンしなくていいんだけどな・・・)

『バインダーを買えばいんだー。です!』

『これは僕が子供の頃、書類を謝って散らかしてしまった時に飛び出した・・』

『あーエピソードはいらないから、そのまま続けて』

『それでは第2位を発表します!!』

(ブルーザー・・・こんなキャラだったっけ?)

『ブルーザー今日の散歩は三歩だけだからな!アハハハハ!』

『・・・・・・・・』
(微妙におじさんのものまねしながら言うのやめてくれないかな・・)

『それでは栄光の第1位』

(栄光でもなんでもないよ。なんの権威もない1位だよ・・)

『友美がブルーザーと揉み合い!ハハハハハハハ!』

『・・・・・』
(すみませんが私の許可なく勝手に私をネタにするのはやめて下さい・・・)

『あーとにかく、とりあえずご主人に何か最近変わった事ないか聞いておくから、笑い転げるのは止めようか?』

私はその後おじさんに最近変わった事はないかと、さりげなく話を聞きました。

『え?おじさん来週入院するの?』

『ああ。持病の痔が悪化してな』

『あーそうですか』
(さっさと帰ろう・・・)

『3日間なんだが、友美ちゃん家でブルーザー預かってもらう事になってるよ?』

『え?』
(はい??聞いてないんですけど)

『あっ!そうか。今朝、友美ちゃんのお父さんに話ししたわけさ』

(・・・・・わかりにくいのは止めて欲しい。反応に困る・・ん??)
ブルーザーは何故かゲラゲラ笑っています。

今日お父さんは医師学会の食事会で出かけたので会いませんでした。

(3日間も・・・・・うそでしょ?・・・)

その後の3日間、兄と弟は全く協力せず私は案の定、散歩・食事・入浴等のブルーザーの面倒を見させられました。

その際ランキング残りの4位から30位。
そして赤丸急上昇!と題してもうすぐランキングに入ると言う注目の作品を聞かされ、私は絶望の涙を流しながら大爆笑しました。

すっかりおかしくなった私はその後、学校で唯一と言っていい友達の美和ちゃんとの会話で話題がなくなった際に
【河合先生が可愛い服着てる。さっき洗濯したのにもう乾いたの?】

とランキング29位の作品をアレンジして披露。
爆死したのは言うまでもありません。

(この先の長い人生、ダジャレを口にする事はないだろう)

私は硬い決意を胸に残りの人生を謳歌していくことにしました。

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