カチンコチーン!

私はコンビニの帰り道にばったり出くわした、忘れ物を取りに行った飼い主から無理矢理預けられた奴と睨みあいながら対峙しています。

(ちょっと勘弁してよ。隣のおじさん・・・・)

目の前にいるのは犬のブルドッグ(オス)。

私は関わりあいたくないので、無視していましたがブルドックは話しかけてきました。

『友美ちゃん。君の噂は聞いてるよ』

『え?』
(どうせ、みけっちだろうな・・・)

『ところで僕の悩みを聞いてくれないかな?』

『まあ聞くだけならいいけど』
(まあとりあえず少ししたらおじさん戻って来るからね・・)

『寒いんだ・・何とかして欲しいんだ』

(あー良かった寒いだけか。だったら寒そうにしてたから暖かくしてあげて下さいっておじさんに言えばいいもんね)

『そうなの?まあ確かに、あなたは毛が少ないから冬場は大変そうだよね』

『違う!そういう事じゃないんだ!』

『え?何が違うの?』

『友美ちゃんは大きな勘違いをしているな。僕が話したいのはそう言うことじゃないんだよ』

『・・・・・・・』

(????さっぱりわからないよ・・)

『だから寒いんでしょ?洋服でも着せてもらえばいいじゃん』

『僕じゃない。ご主人が寒いんだ』

『え?おじさんが寒いの?風邪ひいてるの?』

『いいかげんにしてくれよ!』

『・・・・・・・』

(え?なんで私切れられてるの?)

『ご主人の寒いダジャレを毎日聞かされて僕の心はすっかり寒くなってるんだ!友美ちゃんになんとかして欲しい』

『・・・・・』

(ちょっと待ってよ・・・やっぱ話しなんか聞かなきゃよかった・・)

『友美ちゃんは僕ら動物の心の医者を自称しているんだろ?僕の心を温めてくれ』

『なんでそれを知ってるの?私誰にも言った事ないんだけど・・』

『まあそれはどうでもいい事だ。因みに僕の名前はブルーザーだ。間違ってもブルッチとか呼ぶのはやめてくれよ。友美ちゃんはネーミングセンスがないと評判だからな』

『・・・・・・・』

(私がなんとかッチって呼ぶのはめんどくさいだけだからなんだけどな・・・)
(て言うか、もっとネーミングセンスがない奴はいるんだけどな・・)

『あ、うん・・わかったよろしくねブルザー』

『ちがうブルーザーだ!ブルの後とザの後を伸ばすんだ!』

『ごめんごめん。えっと・・ブルー・・ザー?』

(めんどくさいな・・ブルが頭に付いてるんだからブルッチでいいんじゃん・・・・)

『ところで本題だが。昔のご主人は毎日僕を笑わせてくれた。レベルの高いダジャレを言ってたんだがここ1ヶ月くらいは本当に寒い。先日はあまりに寒くてマジのくしゃみをしてしまう程なんだ』

『そうなんだ・・・』

『あまりに寒すぎて最近僕は、何かご主人に異変でもあったかと心配してるんだ。例えば大きな病気なのか?仕事がうまく行ってないんじゃないか?とかな』

『いや・・・大丈夫だと思うよ・・・』

(そもそも病気でダジャレのレベルが落ちるなんて、聞いたことないんだけどな・・・)

『まあ皆、所詮人事だからな。友美ちゃんが心配しないのも無理はないな』

(はやくおじさん戻ってこないかな・・)

『えっと・・とりあえず話しはわかったから、私もなんなのか色々調べてみるから、とりあえず後でお伺いしてもいいかな?』

私はとりあえずその場を逃れるために、もっともらしい返事をしました。

『とにかく頼むよ。友美ちゃん』

その後すぐ、おじさんが戻ってきたのでこの件は一旦持ち帰る事にしました。

私はその後家に帰り、少しのんびりして、適当な時間に隣のおじさんの家に向かいました。

しかしその時の私は知る由もありませんでした。

ダジャレと言うものの面白さを理解出来ない事を、完膚なきまでに私の心に叩き込まれることを・・・。

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