契約後の流れは、渡されたスケジュールに沿って毎週フルカラー漫画を一本提出というものだった。
締切の曜日が決まっているので、その日までに完成済みの原稿を入稿できればいい。
ネームチェックはなく、15コマ以上であれば特に規制もない。
この時の印象としては、(あまり厳しそうな仕事ではない)という感想だった。

打ち合わせ後は適当な雑談もしたが、この時イマイチ噛み合わなさを感じていた。
私のジャンルは、あえて言うなればコメディ寄りのライト・ファンタジーなのだが、会話中に

「特撮が好きなんですか?」

と聞かれるなど、なんとなく感覚のずれを感じていた。
ファンタジーと特撮は全くジャンルが違うと思うのだが……そこをわざわざ突っ込んで、いきなり担当者に失礼な態度を取るわけにもいかないので聞き流していた。

ほんの些細な会話ではあるが、(この人はあまり創作が好きではない、というより関心がないのかもしれない)と感じていた。

初の打ち合わせはスムーズに終わり、より詳しい情報は後日メールで頂いた。
詳しい情報とは締切日のスケジュールや連載作家人一覧。そして自分の作品が掲載される曜日などだ。

ちなみに一ヶ月、週刊でフルカラー連載をして報酬は学生のアルバイト程度。
全国の一か月平均家賃よりも少ないので、これ一本で生活ができるはずがない。
報酬額が報酬額だけに、私はこの連載を本格的な仕事として考えていなかった。
あくまでも副業、片手間にやる作業である。

この時頂いた詳しい情報の中に、『罰金制度』の説明が書かれていた。
締切を破ると罰金が生じる。一分過ぎるとマイナス●円、一時間過ぎるとマイナス●円。
つまり、締切を破れば破るほど原稿料が減っていくわけである。
報酬を頂く仕事である以上締切は守るのが当然だし、罰金制度はあっても仕方がないと思っていた。

こちらが損をしないため、そして会社に迷惑をかけないためにも締切はきちんと守らなくてはいけない。
そうするには、なるべくスケジュールをきちんと立てることが大切だ。
私は基本仕事にルーズなタイプではないので、これまでの仕事でも締切を破ることはなかった。
特に今回の仕事は一話につき15コマ以上と、最低ラインが決まっている。
色塗りをする手間を考えつつ、最低ラインのコマ数でやっていけば一週間で仕上がるだろう。

罰金制度による原稿料の減額は厳しいので、自分の中の目標として「締切をオーバーしないよう原稿のボリュームを抑えて執筆する」ことを掲げた。
コマ数が多すぎないようストーリー展開を調節する。描き込みは最小限に、塗りや背景をこだわりすぎると時間がかかるので、極力シンプルな作風で続けようと思った。

07.少ない原稿料と罰金制度

facebook twitter
pagetop