●相談内容
①最近運動不足で解消をさせて欲しい。
②ついでに家に送って欲しい・・・。
昨日イグッチを送り届けるため、二時間に渡りチャリのガチ漕ぎをして体中が痛いのにも関わらず
深夜に血も涙もない相談をしに来た、ヘビのヘビッチ。
しかも飼い主はイグッチと同じペットの管理不足のガチムチ野郎・・・。
(全く・・・呑気にトグロなんて巻いて、まだ寝てるし・・)
8時に起床した私はとりあえず、このヘビッチがどんなヘビかを調べていた。
(今日が休みで良かったよ・・)
(えっと・・・・あ・・これだね。コーンスネーク・・別名アカダイショウ・・)
(赤っぽい色だからアカダイショウって・・・なんか安直すぎない?)
(主に夕方から夜に活動する・・)
(え?ヘビッチ昨夜は爆睡してたんですけど・・・まあいいや)
(さて・・・まずは運動不足を解消させなきゃ・・。また来られたらたまったもんじゃないからね)
(ヘビッチ起きたら、お腹空いたとか言いそうだな・・ヘビってなに食べるのかな・・?)
(なになに・・・鳥・・卵・・爬虫類・・・小さい哺乳類を食べる・・・あ!)
私は妙案を思いつきました。
私はその後、寝ているヘビッチを叩き起こして、バックの中に入れてチャリで5分くらいにあるおばあちゃんの家に向かう事にしました。
そしてチャリを漕ぎながら、ヘビッチとお話しました。
『大丈夫?ヘビッチ起きてる?』
『ああ。大丈夫だ。しかしだな。君と言う奴は・・さわやかな朝を台無しにするような起こし方をして・・・』
『あーごめんごめん。それは私が悪かったって』
『まあいい。それより僕をどこへ連れていく気だい?光溢れる輝かしい未来にでも連れて行こうって言うんじゃあるまいな?』
『あーそうだね。私にとって今日と言う日を、輝かしい未来にする為に必死だよ・・』
『なるほど・・・それは何と言うダイナミックな行動なんだ・・・感服するよ』
『・・・・・・・』
(駄目だ・・・嫌味も通じないよ・・)
『あーとりあえず運動不足解消したら、すぐ送ってあげるからね』
そしておばあちゃんの家に到着しました。
おばあちゃんの家は築50年以上・・見るからに古い家だ。
私はとりあえず、冷蔵庫に入ってた鳥のササミの生肉をヘビッチに食べさせてからおばあちゃんの家に行きました。
『おや?友美ちゃん。どうしたんだい?こんな朝早く』
『おはようおばあちゃん。早速なんだけど、おばあちゃん家ってネズミが出るから困ってるんだよね?こないだお母さんがすごい怖かったって言ってたから』
『そうなんだよ・・毎年なんだけどね。まあなにぶん古い家だからね。仕方ないわ』
『良かった・・今から追い出してあげるから、ちょっと家の周りに進入口があるか見てみるよ』
『え?大丈夫なのかい?』
『うん。多分・・・。だからおばあちゃんは家でゆっくりしてて。私勝手に調べておくから』
おばあちゃんを家の中に戻し、私はヘビッチに話しかけました。
『この家にネズミが住みついてるんだよ。だからヘビッチがネズミ追い出してよ』
『なんだ?そんな事造作もない事だ。それでは早速家の周りを見てみよう』
ヘビッチを地面に下ろすと、相変わらず波打ちながら移動して、家の周りをぐるぐる回り始めました。
そして家の外壁の下の方にかじられて小さな穴が開いているのを発見しました。
『友美君。ここを見たまえ。どうやらこの穴から進入しているようだぞ』
『そうなの?』
『ああ。早速行動に移そう』
ヘビッチはその穴に入って行きました。
とりあえず私は家の中に入って、異常がないか確認する事にしました。
(大丈夫かな?・・・・)
そう思っていると天井からバタン!バタン!と音がして通訳不可能なネズミの鳴き声と、これも通訳不可能なシャーシュルルルルーと言うヘビッチの声が聞こえて来ました。
(え?戦ってるの?ヘビッチ大丈夫?ネズミ大群だったら負けちゃうんじゃ・・)
そう心配している私を他所に先ほど侵入した穴の方から奇声がしたので、私は外に出て行きました。
『あ!ヘビッチ大丈夫?』
『ああ。無論問題ない。ネズミ達は出て行ったぞ』
『怪我はない?ネズミはどうしたの?何匹か食べちゃったの?』
『馬鹿な事を言うんじゃない。中には子供が沢山いたからな。追いかける振りをして外に誘導して逃がしてやったぞ』
『・・・・ヘビッチ優しいじゃん!』
『ガラガラガラ!僕は無益な殺生は好まないタチでな。輝ける未来がある子供達を無下になんか出来ないさ』
『・・・・・・・』
(そのガラガラガラって笑い声なんとかならないかな・・・)
『とにかく、これでもう大丈夫かな?』
『ああ。大丈夫だ。連中かなり驚いていたからな。ここにはもう戻って来る事はないだろう。もし万が一また連中が戻ってきたら、僕を呼ぶがいい。いつでもはせ参じるぞ』
『・・・・・・・』
(いや・・もういいよ・・とりあえず。関わりあいたくないからさ・・)
私はヘビッチの指示で侵入口となっていた穴を塞いで、おばあちゃんに挨拶をし別れました。
『さ!獲物追いかけて運動不足も解消して気が済んだでしょ?家に送るから』
『うむ。そうするか。今日は久し振りに狩りが出来て、身も心も晴れ晴れとした。改めてお礼を言うぞ友美君』
『あーそれは良かったね。私も肩の荷が下りたよ』
私はその後、カレー屋のガチムチ野郎の家に行きヘビッチを受け渡しました。
『またまたありがとうね』
『いえとんでもないです』
『ところで一昨日のイグアナさ、言うとおりフルーツ上げたらすごく喜んでた様子だったよ』
『あーハハハ・・それは良かったですね・・』
私は先日チャリのガチ漕ぎの際、あまりの疲労にイグッチの首輪にメモを付ける事を忘れてしまい、普通に迷子だと受け渡していました。
『なんかウチにあった、フルーツ食べたがってたみたいだからあげて見て下さい』
と訳のわからない説明をして取り繕った事を思い出しました。
『君はすごいねーなんか動物の心が読めるみたいだねー』
(いや心が読めるんじゃ無くて話が出来るんですけど・・・)
『そんな不思議な君にちょっと相談があるんだけどいいかな?』
『え?』
(はい?ちょっともうこれ以上、管理責任が成ってないガチムチには関わりたくないんですけど・・・・)
その後、奥から私と同じくらいの年の女の子が出てきて話しをしました。
その子は同じ中学二年生、ちなみにガチムチ野郎はなんと20才。兄妹だったのです。
私は早く帰りたかったのですが、スキル【心にもない興味津々の笑顔】を発動したため、カレーをご馳走になり、飼っている動物を見せられたり、動物DVDを見せられたり、その女の子とどうでもいい世間話をしたりと、散々引き止められた挙句・・・。
『え?もう18時40分?』
(ここから普通にチャリで25分はかかるんですけど・・)
門限が19時である事を伝え、一昨日と同じように交通ルールを遵守しながら、ガチのチャリたち漕ぎで慌てて帰りました。
(はあ・・・・はあ・・・なんとか間に合った・・・)
(本当にあのカレー屋の連中は・・・・)
私はある相談を受けました。
(なんで受けちゃったんだろ・・・来週また休みなくなる・・あのガチムチ野郎・・)
その夜は20時には寝てしまったのは言うまでもありません。