ドーーーーン!!
因みにこれは効果音です。
帰宅した私は、玄関にいたニワトリ(メス)と睨み合って対峙しています。
(えっと・・なに?このニワトリ?)
『・・・あのー・・あなた・・なんでここにいるの?』
『知るわけ無いでしょ!!マジ最悪!』
(なにこれ?私まためんどくさい事に巻き込まれたの?・・て言うか口の悪いニワトリだな・・)
『突然私だけ連れて来られたのよ。マジ最悪なんですけど。早くなんとかしろっつーの!』
『・・・・・・』
(思い出した・・・この間、イタッチの件で叔父さんから動物園に変なニワトリがいるから、そのうち連れていく・・話し聞いてみてって言ってたな・・)
『あの・・・一緒に来た叔父さんは?』
『は?あなた頭沸いてるの?私だけ何でこんな所に連れて来られたか聞いてるのに、知るわけ無いでしょ?・・』
(なんかタチの悪い黒ギャルみたいだな・・・・)
『えっと・・あのね私叔父さんから、あなたが様子がおかしいから話し聞いてあげて欲しいって頼まれたの。だからお話し聞かせてくれないかな?』
私はイラッとしている気持ちをグッとこらえて、優しく語り掛けました。
『・・・・仕方ないわね。まあ少しくらいならいいわよ。別に私はあなたなんかと話がしたい訳じゃないんだからね。手短にすませてさっさと帰らなきゃいけないんだから』
(ツンデレか?ニワトリにもツンデレいるんだね。・・でもなんかわかるかも)
『じゃあ私の部屋に行こう。あ・・あなた名前は?』
『名前?そんなの知らないわよ』
(ですよねー)
『じゃあ話するのに不便だから、ニワッチでいい?』
『センスないわね・・まあ良いわよ。あと優しく運びなさいよ』
『・・・・・・』
(なんなのこのニワトリ・・・完全に舐め腐ってる・・)
私はニワッチを2階の自分の部屋に運び、クッションに座らせました。
『じゃあ、ニワッチ。早速だけどいい?』
『なんなの?早くしなさいよ。私は暇じゃないんだから』
『・・・・・・・』
先日叔父さんから聞いていたこのニワトリの変な所
①雨の日になるとやたら小屋から出せとうるさい。
他のニワトリも20羽ほど一緒にいるが、皆雨の日は比較的大人しく座っているのに
ニワッチだけは小屋の入り口をぴょんぴょんはねて怒ってる様子。
②午後になるといつも放し飼いにしている広場の一番奥に行き、フェンス越しに空を見上げている。
そしてそのまま動かないそうだ。
もちろん動物園なので、放し飼いエリアに子供等も来るが人が近づくと威嚇しくちばしでツンツンしてくる。
私はまずは①から聞いて見ることにした。
『どうしてニワッチは雨の日に騒ぐの?他のみんなは静かにしてるのに、ニワッチだけ騒いでるから、どうして?って思ってるみたいよ』
『はあ?そんな事もわからないの?雨に濡れたいからの決まってるでしょ?』
『え?どう言う事なの?』
『私は水浴びが好きなの!昔は広場に池があったから入りたい放題だったけど、突然無くなっちゃったのよ。たまに大きなバケツ用意してくれてるけど、そんなんじゃ物足りないのよ!ありえない』
『・・・・・・』
(ああ・・昔はあの広場水鳥がいたから池があったな・・でも水鳥は別のエリアになったし子供客の為に危ないから池埋め立てたんだよね)
『で、どうにかしてくれるの?毎日水浴びさせてくれるの?』
『・・・わかった・・一応伝えて見る。でもあまり騒いじゃ駄目だよ。叔父さん心配するし、仲間外れになっちゃうよ?』
『そんなのあなたには関係ないじゃない!別にいいわよ仲間外れになっても。困らないしー』
『・・・あーわかったわかった。もういいよ』
(ちょっと待って・・本当にめんどくさいんだけど。かつていないよ・・こんな気が強くて、自分勝手でかわいくないニワトリ・・)
どうでもよくなった私でしたが、とりあえず二番目の事を聞く事にしました。
(とりえあずさっさと終わらせて、漫画でも見よう・・)
『じゃあさニワッチ。午後になるとずっと空見上げているのはどうしてなの?』
『え?・・・・・』
ニワッチは俯いてしまいました。
『どうしたのニワッチ?』
『う、う、うるさいわね!人のプライバシーを勝手に詮索してこないでよ』
またニワッチは俯いてしまいました。
(ニワトリなのに人のプライバシーって・・・一体・・)
『どうしたの?ニワッチ』
『・・・・・・』
『言いたくないの?』
『あの方が・・・』
『はい?』
『だから、あの方を待ってるの!!うるさい!!』
『痛っ!』
ニワッチは覗き込んだ私のオデコにくちばしでツンツンと攻撃してきました。
そしてそのままジャンプしてベット飛び乗りました。
『ちょっと!痛いよ!何すんの?』
『あなたが恥ずかしい事言わせるからでしょ!いい気味!ざまあ!』
『ニワッチ・・・・あなたねーいい加減にしなさいよ!』
『は?何?キレてんの?それより早く帰しなさいよ!』
(いけない・・このままじゃニワッチのぺースに飲まれるだけだ・・落ち着かないと)
私は二度三度深呼吸をして気持ちを落ち着かせました。
『て言うかさあ、ニワッチ。あのお方って誰なの?』
『それは・・・』
『・・・まさかそのお方の事が好きなの?』
『はい・・・』
そう言って頷くニワッチを見て、白い羽が赤くなっていく様な気がしました。