ババーン!
私は今よくわからない奴に声をかけられて、林の中で対峙し見つめ合っています。
因みによくわからない奴は切り株に座っています。
(こんな事なら近道なんかしなきゃよかった・・)
『あなた本当にお話出来るのですね』
『う、うん・・えっと・・あなたは何者でしょう?お名前は?』
見た目はと言うとフェレット?イタチ?(イタチは実物見た事ないけど)の様に胴長で、顔は小さく少しネズミをふっくらさせた感じ。毛色は茶褐色に白交じり。尻尾は長い・・・。
『私も自分がなんなのかはわかりません。名前もありません』
『だよね・・・』
『じゃあ、とりあえず話するならあなたの事はイタッチでいい?』
『はい構いません』
『因みに私の事なんで知ってたの?』
『この間の集会で教えてもらいました』
(集会?・・・・まさか・・)
『集会って?夜やるやつ?』
『あ、はい』
私はスマホ画像検索でみけっちと似た猫の画像を調べて見せました。
『もしかしてこれ?』
『ちょっと違いますけど似ています』
(あ、そうか・・色わからない可能性大だもんね・・)
『この辺りがなわばりなので許可は取ってあります』
『え?』
(やっぱりみけっちか・・・余計な事を・・)
『ところで私に話ってなにかな?』
『はい。実は私は3日前くらいに、この辺に連れて来られたのですが帰れなくなってしまって』
『え?あなた飼い主さんいたの?』
『はい・・・でも夜中、近くの森に一緒に来たのですが、いなくなってしまったんです』
(あ・・これ多分捨てられたな・・・)
『そう・・・なんだ・・。それで飼い主さんを探して欲しいと言う訳ね』
『は、はい・・・そうかも・・です』
(あれ?違うの?)
『どうしたの?違うの?』
『そう・・なんですけど。探して欲しい様な、探して欲しくないような・・』
(全くわからない・・あ、これめんどくさい事かな?・・だとしたらやだな・・)
『飼い主はいるのですが、そこには帰りたくないんです。かと言ってずっと外で暮らすのは嫌なんです・・』
『・・・・・・』
(ああ・・やっぱりめんどくさいよ・・どうしたいのかさっぱりわからない・・)
とりあえず訳を聞く事にしました。
『・・どうして帰りたくないの?』
『飼い主の方の所には、子供の頃からずっと暮らしていました。私をかわいがってくれました』
ちょっと悲しそうな声だったので、少しかわいそうになり優しく言いました。
『じゃあどうして帰りたくないの?』
『ある日、ヒモみたいな長い動物と一緒に箱に入れられて・・・』
『うん、うん・・』
『ケンカしろって言うんです・・』
『うん・・え?』
『怖かったです。知り合いでもないのにいきなりケンカしろって。私は足を噛まれました。すごく痛かった・・もう嫌なんです・・なのに怒られて・・・情けないって・・』
『・・・・・』
(ちょっと待って・・落ち着いて状況を整理しよう・・)
(まず、紐みたいな長い生き物・・・ヘビだよね・・きっと)
(ヘビと一緒に箱に入れられてケンカしろって・・)
(なんか動画で見た事あるような、ないような・・)
(あれなんて言ったっけ?沖縄の・・)
(マングース!!!)
『ごめん、ちょっと待ってね!』
私はスマホで急いで調べました。
(ビンゴ・・・間違いない・・画像と一緒だ・・マングースの可能性大だ・・)
(でも、マングースって外来指定とか言って飼うの禁止されているんじゃ・・)
(ハブとマングースのショーも動物愛護で禁止されてて今はやってないんじゃ)
(て言うか沖縄じゃないし)
私は百科事典を開いてマングースを調べました。
(なになに、マングースとはジャコウネコ科の哺乳類で・・その総称で・・)
(ネコ繋がりか・・・て言うか警戒心の高いみけっちがこんな見た目が全然違う奴をよく受け入れたな・・・他の猫も・・て言うか同じ猫科ってやっぱりなんか判るのかな?)
『大丈夫ですか?』
『あ、うん・・・多分、イタッチさあ、あなたはマングースって言うの』
『そうなんですか?』
『ちょっと詳しい話聞きたいから私の家に来てくれない?』
『でも・・ケンカさせないですか?』
『あー大丈夫。人のケンカ見て楽しむ程、私は悪趣味じゃないから』
『・・・わかりました』
とりあえず私のカバンの中に入ってもらいました。
(人間に飼われてたってのは本当みたいね・・・・)
(さあこれからどうしよう・・めんどくさい事になったぞ・・)