●相談内容
【自分の秘密の隠し場所から煮干が無くなったから困ってる(探して欲しい)】

めんどくさい相談だったけど詳しい話を聞くため、やっと庭のベンチまで付いて来てくれた、みけっち(仮名)。

『本当に捕まえない?』
ビクビクしながら、辺りをキョロキョロして、体を伏せて警戒してる地域猫。

『そんなビクビクしないでよ。ちょっと大げさ過ぎない?』

『一度捕まって変な所連れて行かれて、ひどい目にあったんだから』

『そうなの?』
(ああ・・・多分去勢手術の事だな・・ご近所でお金出し合って手術したって聞いたな)

一応猫とは言え、去勢手術して子供が産めないとわかったらショック受けるかもしれないから黙っておこう。

『だからさっきも話したけど、みけっちは地域猫って言って、ある程度守られてる所はあるんだから
食べ物だってそんなに不自由してないでしょ?』

『その地域猫?って言うのは意味わからないけど、食べ物は大抵どこかの家に置いてあるから食べてるけど・・』

『あなたの為に置いてあるんだよ!』

『ふーん。そうだったのね?で・・探してくれるの?』
自分は実は色々な人に助けられて生きている・・・と言う衝撃的事実を伝えるも軽く流されて本題に戻されてしまった。

私はすかさずスキル【名探偵友美君】を発動。

『・・・・じゃあ早速だけど、いつ隠したの?』

『昨日の夜』

『無いって気がついたのは?』

『今さっき。それであなたの所に来たの。前に集会に行った時に(あなたのなわばりには話せる人間がいる)って聞いたから』

(そんな情報だけでよく私を特定出来たな・・・て言うか猫の集会ってほんとにあるんだね)

『と言う事は、昨日の夜から今日が・・・今お昼過ぎだからその間って事だね』

『そう言う事になるわね』

(駄目だ・・・一応形式的に犯行時間だけは特定してみたけど、どうやって探せばいいのか突破口すら見えない・・)

『えっと・・あとは・・なんかこいつに取られたんじゃないか?って怪しい奴に心当たりある?例えば散歩中の犬とかイタチとか他の猫とか』

『だから、あの隠し場所が見つかるなんてありえないって言ってるじゃない!』

(そうだった・・・めんどくさい・・)

『でも、犬ってあなた達猫よりも数倍鼻が利くんだよ?埋めたりしてても簡単に見つかっちゃうよ?』

『でも犬は大抵人間に飼われているし、私みたいに外で暮らしてるのは、この辺じゃ見かけないわよ?それに犬と人間が散歩しそうな所になんて隠さないわよ』

(論破されてしまった気がする。確かに最近野良犬はほとんど見ない。すぐに保健所やってくるしね・・。なんか変な知識だけはあるな、この猫・・)

『・・・やっぱ見つけるのはちょっと無理じゃない?煮干ならウチにあるからあげるから』

『いやよ。あなたの家に置いてあるご飯マズイんだもの。味もしょっぱいし。センスが無い。』

『・・・・・』

(あーなんかまたイラッとしてきた。ホントにめんどくさい・・。)

『秘密の場所も教えない、他の動物に食べられる訳無い・・手がかりが少なすぎるよ。大体一緒に探すって言ってもどこ探せばいいのかもわからないし。私なら好きな物なんか、隠したりしないですぐ食べちゃうけどなあ・・』

『そうなの・・いつもは私も先に食べるんだけど、久し振りの煮干だったし・・あの家の煮干は大きくて太くておいしいの!で、その日は一本だけ後で食べようと思って持って来て隠したのよ。それで・・・』

『それで?』

『・・・・・』

『だからそれでどうしたの?』

『・・・・・』

『みけっち。あんた、まさか・・・?』

『思い出した・・』

『は?』

『食べちゃった・・ニャン』

『え?』

『昨日の夜の集会の後、小腹空いちゃって食べちゃった』

『・・・・猫なんて元々小腹じゃない!・・・・しかも何?その語尾のニャンって?テヘペロか?私の時間を返せ!』

私は思わず立ち上がり、我慢してたものが爆発してしまいました。


『シャーーーーッツ!』(バシバシ!)

『痛っ!!』

完全に逆切れされました。
私が立ち上がった瞬間に通訳不可能な奇声を上げて、2本の前足でジャブ!フック!と猫パンチ攻撃を足に受け逃げてしまいました。

(あんな奴、もう絶対ご飯置いといてやらない・・・こっちが真剣に考えてあげたのにめんどくさいし、逆切れするし、自分勝手だしとんでもないよ。もう会っても無視しよう)

(ハーッ。なんだか疲れたよ。テレビでも見ようっと)

私は裏口に戻り、家に入ろうとしました。

(ん?)

妙な視線を感じ振り向くとみけっちが毛を逆立ててウーウーうなって見ています。

『さっき私を捕まえようとしたでしょ?最低!さよなら!』

『・・・・・あんた本当にめんどくさいね。もう来なくて良いよ』


翌日

裏の勝手口の入り口に煮干が1匹置いてありました。

どういうつもりかは知りませんが、それを見て私はまたイラッとしましたが、とりあえず煮干を拾って、自分の部屋に行き小袋に入れて置きました。

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