美香

 ケン君と私が一緒のクラスってことは、友達百人の一人目は私でクリアだねー

 美香はにっこりと微笑んで右手でピースした。

ケンスケ

 うぅん、この何とも言えないガキっぽい笑顔

ケンスケ

 何故か美香は昔から謎のポジティブさがある

ケンスケ

 ……まぁ、だからこそ中学一年の事件も、美香は平然と切り抜けたのかもしれないが……

 しかし、友達百人だとか、そんな重荷は背負うべきではないのだ。

 その方が、ずっと幸せだ。

ケンスケ

 美香、僕の心にある天秤は、友達百人なんて支えきれねぇよ

美香

 いやいや、ケン君の心に天秤なんて高価な物あるわけないじゃん

美香

 まぁいいとこ穴の空いた計量カップじゃないかなー

ケンスケ

 そりゃただのゴミじゃねえか!

美香

 捨てるしかないんじゃない?

ケンスケ

 この程度の罵倒には完全に慣れてしまっている自分が悲しい……

ケンスケ

 ……何れにしても、僕は友達なんて要らねえよ。
 というか、むしろ……今朝の話じゃあ無いけれど、妹の方が欲しいな!

美香

 うわー、ケン君、さすがの私もその危険すぎる発言は擁護できないって! 
 キモすぎ!

ケンスケ

 え、えぇ? 僕、それほど変なこと言ってねぇだろ?

美香

 いや、ケン君の顔で発言すると何でも犯罪的になるんだよ

ケンスケ

 お前……本当、僕に対しては容赦ねえよな!

ケンスケ

 もういいよ、僕は高校三年間で妹を作るっていう目標を掲げることにした!
 友達百人なんて比較対象にすらならない……そう

ケンスケ

 ただ一人の萌える妹を作ってやるんだ!

美香

 ……ケン君、自分が物凄く頭悪いこと言ってるって自覚してる?

ケンスケ

 いやいや、何も本当に、戸籍上の妹が欲しいってわけじゃないぜ

美香

 どういう意味?

ケンスケ

 つまりだな、僕のことをお兄ちゃんと呼んでくれる女の子と知り合えればいいわけだ!

美香

 ……うーん、なんか頭痛くなってきた。
 じゃー、その妹さんが出来た暁にはお手紙頂戴ね

ケンスケ

 はぁ? どうして手紙なんだよ

美香

 だって刑務所に居たら気軽に会えないでしょ?

ケンスケ

 実刑!?
 なんで犯罪前提なんだよ!

 例えそれが幸せを掴み取るものだとしても、犯罪に手を染めてはならない。
 人に迷惑をかけてはならない。

 そう、小学三年生のときの、僕の親父みたくなってはいけないのだ。

ケンスケ

 ……まぁ、それはともかく

ケンスケ

 犯罪する気は無いけどさ、中二病的な能力もそうだけど、女の子にお兄ちゃんって呼ばれるのは、男のロマンだぜ?

美香

 呆れた……というか、ケン君ってべつに妹萌えでもないでしょ?

ケンスケ

 男の魂は基本的に妹萌えを併設してるんだよ

美香

 それはあまり立ち入りたくないねー。……ケン君って、キモイことっていうか、恥ずかしいことを平気で言っちゃうタイプだよねー

美香

 うーん……それなら……

 美香は少しだけ目線をそらし、小さめの声で言う

美香

 私がケン君のこと、お兄ちゃんって呼んであげても、いいけど……

ケンスケ

 は? 
 何言ってんだ? 
 美香、それ言ってて恥ずかしくないのか?

美香

 死ね! 
 アホー!

ケンスケ

 痛ぁッ!

 脳天に鋭いチョップが浴びせられた。

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