今日から通うことになる高校に到着。

 僕と美香は駐輪場に自転車を置いた。

美香

 よっしケン君! クラス分け表を見に行こー!

 美香は大手を振って歩き始める。

ケンスケ

 なんでこいつはこんなに元気いっぱいなんだ

 美香と同じ学校。
 これは問題ない。

ケンスケ

 だがしかし、僕は新しい環境というのが得意じゃあないのだ

 ……いや、はっきり、苦手と言ってしまった方がいいか。
 
 どうしても、

 どうしたって、

 中学一年生の事件が蘇ってしまうから。

 小学三年生の記憶が呼び起されるから。

 だから……新しい環境というのは、苦手だ

ケンスケ

 美香は逆に、新しいことが大好きなんだよなぁ……

 もっとも、それはつまり『飽きやすい』というだけなのかもしれないが

 美香のゲーム消費速度は恐ろしい。
 新しい物が出ては買い、持っていたゲームはすぐに売ってしまう。
 一週間経つと持っているゲームソフトの全てが入れ替わっているから驚きである

ケンスケ

 というか最近はそれを超え、プログラミングを覚えて自分でゲームを作っているようだ。
 ついていけない

 そんなことを考えている間に、僕たちはクラス分け表の前まで辿り着いた

美香

 おやおやー? ケン君、また同じクラスだよ

 美香が張り紙を指差すので、その方向に僕も視線を向ける。

ケンスケ

 おぉ、本当だ。えぇっと、これで四年連続か?

美香

 んー、小学校を合わせると六年だねー

ケンスケ

 縁があるなぁ

美香

 腐れ縁ってやつでしょ

 あまり記憶には無いが、美香という人物を初めて認識したのは幼稚園の頃だ。
 まさかここまで長く関係が続くとは……。

ケンスケ

…………

 人間関係というのは、すぐに壊れて元に戻らなくなってしまうものだ。

 少しだけ天秤が揺らいだだけで、ちょっとバランスを崩しただけで、関係性を保てなくなる。
 今は均等に保っているものだって、次の瞬間に崩壊しない可能性はゼロじゃない。
 
 そう、それは中学一年の冬みたく。


 一人の命が消えたあの時みたく。


 それまでの平和で幸せな生活なんてものは、簡単に消えてなくなってしまうのだ。
  

 だが、

ケンスケ

 美香は、その限りではない

 美香という人物は、僕の天秤が揺らいだときでも、それを無理矢理にでも接着剤で固めようとする奴なのだ。

 不思議なのは、『飽きやすい』美香がいつまでも僕との関係を切らないことである。

ケンスケ

 まぁ、ゲームと人間関係を同一として考えるのは間違いか……

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