呆然としたまま電話をきり、脳みその情報を懸命に整理し始めた。

　サンザシがのぞきこんでくる。

　確定だ。

　俺の答えに、サンザシはにこりと満足そうに微笑んだ。

　桃太郎は、鬼ヶ島に行き、宝物を取り返す物語だ。

　話している間も、するすると謎が解けていく。

　桃太郎の護衛は、四匹ではなく三匹だ。この状況は、おかしい。

　おそらくだが、あの中に鬼がいる。

　ほつれていた糸が、勝手にほどかれていくように、鮮やかに、あっさりと謎が溶けていく。

　音読みは違う、犬も違う、犬と猿は確定、残るはキジだ。キジ、キジ……。

　頭の中を、キジが飛び交う。

　そして、鳴く。

　サンザシが、楽しそうに笑う。

　すべてが繋がった、そのとき、インターホンが鳴った。

　俺は、誰が来たのか確認もせず、ダッシュで玄関へ急ぐ。

　扉を開けると、そこには鍋を持った姫様がきょとんとした表情で立っていた。

　姫様を凝視する。

　ピンク色の――桃色の髪の毛だって、ヒントだったのだ。
　そして、姫様というあだ名はミスリード。

　ゲームマスターも、粋なことをしてくれる。

　眉を潜めながら、しかし姫様は、律儀に答えてくれた。

　おずおずと差し出される鍋を、静かに受けとる。

　不安そうな表情でその場を去った姫様の背中を見ながら、俺はどうやってディスクを取り替えそうか考えていた。

　犯人は確定だ。

　サンザシは、俺から鍋を受け取って、ええ、と満面の笑みを浮かべた。

　つまり、姫様の警戒心が吉と出たことになる。
　しかし、犯人が仲間側にいたとは。

　犯人が分かった上で、怪しまれないようにディスクを奪還なんて、そんなこと、できるのか？

　うーん、どこまでも気楽、我がサポーター様。

　ま、変に真剣にされるより、心が楽になることは確かだけれど。