…。














…ん

~ある日、ある男が、目を覚ました~

…もう昼か。大遅刻だな。
…はぁ、もう俺は限界かもしれない…。

…仕事、行くか。



~男は日々の生活に疲れきっていた…。
そして彼は何となく気づいていたのだが、
その脳内では、大きな変化が起こっていた~














~男が目覚めた、ちょうど同じ時~

…ん?

…おはよう

…ここは…どこだ?

「本体」の頭の中だよ。彼は今やっと目覚めたんだ。だから俺たちも目覚めたようだ。

「本体」の、頭の中?

そうだ、ここは俺たちの「本体」である人間の脳内だ。

本来は「ヨロコビ」だか「カナシミ」だか、「ネガティブ」だか「ポジティブ」だか、そういう感情がいたはずの場所だ。

そんなところになぜ俺がいる?「ヨロコビ」やら「ポジティブ」やらという感情はどこへ行ったんだ?

それがなぜか居ないんだ。そしてその代わりに俺たち5人がいる、というわけだ。いや、誕生した、という方がふさわしいのかな?

誕生?5人?

ああ、そこの3人と合わせて、ここには5人いる。どうやら、前に居た感情たちに代わって、俺たち”新しい感情”が生まれたようなんだ。

ということは、この「本体」には喜びも悲しみもなくなったのか?「本体」はそれに気づいているのか?

うっすらは感じているようだがな…

そういえばまだ名前を名乗っていなかったな。俺の名は”無感動”だ。よろしくな。

俺は”無責任”だ。よろしく。

で、そこの3人、お前らは誰なんだ?

…名乗るのかよ…ダルいな…
俺は無気力…

お前らの名前なんて興味はないが…
俺は”無関心”だ。

…無気力・無関心・無感動・無責任…
俺も含めてろくでもない感情ばかりじゃないか…

で、お前は何なんだ?

おい、聞いているのか?

なんだコイツ…

どこを見てるのか、何を考えてるのか、サッパリ分からないヤツだな。

…まあいい。とにかく、これから俺たちはどうすればいいんだ?

さあな。少なくとも、今後は俺たちが「本体」を操作しなきゃいけないってことだけは確かなようだ。














~「本体」である男は、仕事に直行せず、
遅い朝食を取っていた~

モグモグ…

…はぁ
会社…行きたくねえなあ…
休日がほしい…











~脳内では~

…はぁ、何もかもが面倒だ。

今、本体を操作しているのはお前か。

はぁ…口を動かすのも面倒だ…
…食べるのを止めようか…

よく分からないのだが、こういう時は仕事に備えて食事で力を付けさせたほうが良いのではないか?

仕事?…そんなもの、行くのは止める…
それで解決だろ…

賛成だな。仕事なんて他の誰かに任せておけばいいんだ。「本体」にそう命令しよう。

お前まで…

仕事に行かないと、もっと面倒なことになるだけではないのか。

おい、聞いているのか?

…うるせえな…
もうお前と話す気力はねえよ…

本当に無気力なやつだな…

…で、どうすんだ?「本体」は仕事に向かわせるのか?やめとくか?俺はどっちでもいいんだが?

興味がない。














~結局「本体」は、
なんとか職場へとたどり着いた~


いい加減にしろ!お前は何を考えてるんだ!?

…はい。申し訳ございません。

こんな時間に出社だなんて、これで何度目だ!お前はやる気があるのか!?

…はい。申し訳ございません。

それしか言えなくなったのかお前は!?いいか、今回のプロジェクトはお前次第なんだぞ!?分かってるよな?いくらなんでも、次は見過ごせんぞ!?

…はい。申し訳ございません。

…うるせえな。














~脳内では~

…うるせえな。仕事がどうなろうと俺のせいじゃないだろ?しらねえよ。

今度はお前が操作しているのか。

こんなプロジェクト、どうなったって俺には関係ないね。ああ~~!「怒り」とか「嫌悪」はどこに行きやがったんだ?こういう時はあいつら担当じゃないのか?

いないのだから仕方ないだろう。

こんな状況を押し付けやがって。なんで俺がこんな目に…。

あ~めんどくせえ!全て投げ出してやろうかな。そうだ、もうお前に全部任せるわ、な?

本当に無責任な奴だな…

…だから仕事なんてサボればよかったのに…
俺に任せろ、帰らせてやるよ…

それは事態がややこしくなるだけだと言っているだろう。

…ああそうかい、ならお前らでやってくれ…
俺はもう気力が失せた…

分かった。俺が操作しよう。

何を言われても何も感じない。
ただただ仕事をこなす。











~現実~

何を言われても何も感じない。
ただただ仕事をこなす…。











~脳内~

…これはこれでどうなんだよ。
ところで…

まだコイツが気になるのか?

ああ、コイツは何だと思う?

情報が少なすぎて見当がつかないが…
巨大な奴だな。

おい、お前はどんな感情なんだよ?

なんだかコイツ、だんだん大きくなってないか?

コイツも新しく生まれた感情なのだから、「本体」に対して何らかの活動をしているのかもしれないな。

まあ、俺のせいじゃなけりゃ、大きくなろうが小さくなろうが、構わないがな。

おい、お前らはどう思う?

別に何も

俺に聞くな…考える気力もねえ。














~その後「本体」は大人しく仕事に打ち込んでいた~

カタカタ…

カタカタ…

はぁ、繰り返す退屈な日々…
虚しい、苦しい、何の喜びもない。

…なんで俺がこんな辛い目に。
…もう耐えられない。














~脳内では~

こんな仕事、誰かに押し付けてしまおうぜ。本体にそう命じていいよな?

興味のない仕事だ。それだけ命じられれば俺はいい。

余計なことを感じさせるな。淡々とやらせるのだ。

…なあ、俺たちは明らかに「良い感情」じゃないよな?そんな感情が本体を動かそうとしてる。こいつの頭は平気なのか?

恐らく平気ではないだろうな。

…こんなことじゃコイツはいずれ…

…おい

どうした?

「無気力」がいない。

本当だ。一体どこに…

オイ!アレを見ろ!

う…ぐぐ…

アイツが…「無気力」を取り込んでいる!?





続く…

俺たちにできるのか!?脳内ポイズン○リーまたはインサ○ドヘッド的なヤツが!(前編)

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