― 1 ―

 ――あれから一週間が過ぎた。鳥海涼子の事件に関しては、朝礼で校長がこう説明していた。『彼女は、受験ノイローゼだった』と……

 ノイローゼ……便利な言葉だ。この言葉を使うことによって、なんとなくだけど、いろんなことが分かったような気分になる。自殺したのもノイローゼなら仕方ない。受験生だし、いろいろストレスがたまってたんだろう。精神的にも不安定な年頃だから、そんな複雑な感情が一気に爆発して……

 ……でもそんなの嘘だ。彼女は学校推薦が決まっていたのだ。受験ノイローゼになんて、なる理由が見当たらない。

 それにあの鬼。死の直前、彼女の身体の中に入っていった小さな鬼のことは、いったいどう説明したらいいのか?

 結局、なにもわかっていないんだ。こういうわけのわからないものに蓋をするために、人はきっと、『言葉』を使うのだろう。言葉を当てはめて、わかった気になって……それでようやく安心して、日常生活に戻るんだ。

 やがて時間が経てば、みんなが彼女のことを忘れる。問題は何一つ解決しないまま――

大神早紀

中田君。ちょっといい?

 放課後、文芸部の大神早紀(おおがみ・さき)が話しかけてきた。彼女とは1年の時にクラスが同じだっただけで、それほど親しい間柄ではない。

大神早紀

話したいことがあるの。屋上に来て!

 そう言うと早紀は、俺の返事も聞かずに教室を出ていった。

中田 実

……ったく! 何なんだよ!

 仕方なしに俺も立ち上がり、彼女の後を追った。

 大神早紀はどこか不思議な雰囲気を持った少女だ。腰まで伸びた黒い髪や切れ長の目、整った顔立ちは、まるで日本人形のような美しさをもっている。
 発言もどこか、今時の女の子と比べると古風な感じがする。そして一番の特徴――彼女は時々、予言をするのだ。

大神早紀

あっ! 危ない!!

 彼女がそう叫んだ瞬間、教室の窓ガラスを破って野球部の特大ホームランボールが飛び込んできたこともあった。

大神早紀

あの、落ちましたよ

 その声に振り向いた直後、俺のズボンのポケットから財布が落ちたこともあった。そしてそんな予言をする度に、彼女――大神早紀は、ばつが悪そうにうつむいてしまう。

 やがて彼女は、学校の中でも有名人になっていた。不気味がる者もたくさんいたが、それ以上に彼女の不思議な力を頼って相談を持ちかけたりする者が増えていった。

 やがて、彼女を中心にオカルト研究会のようなものができたらしい。そんなオカルト少女が、俺にいったい何の用だろう? 不審に思いながらも俺は無言で階段を上っていった。

― 2 ―

 階段を上りながら……俺は、死んだ鳥海涼子のことを考えていた。

鳥海涼子

中田君! あのね。見てもらいたいものがあるの

 死ぬ前の最後の昼休み、彼女……涼子が俺に話しかけてきたっけ……

鳥海涼子

あのね。私、超能力が使えるようになったの

中田 実

え? 超能力?


 彼女は飛び抜けて美人というわけではない。でも魅力的な笑顔をしている。

 人なつっこいような、見てるとこっちまで幸せな気分になれるような……そんな笑顔を浮かべながら、俺の机の上に1枚の10円玉を置いた。

鳥海涼子

これを念動力で動かしてみるね。見てて……

 そう言うと目を閉じ、両手をちょっと広げて10円玉の上にかざす。

鳥海涼子

ん……ううん……

 低い吐息を漏らしながら、念を集中させているようだ。
――10円玉は動かない。その代わり、彼女の大きな二つの胸がぶるっと揺れた。

鳥海涼子

広げた手の間に、小さな気の固まり生まれることを意識するの……

 あ、今ちょっとブラウスの隙間から、胸の谷間が見えた。

鳥海涼子

そして、その気の固まりで、10円玉を押し出すようにして……

 あと10センチ、手を伸ばしたら……あの胸に触れるんだけどな……
あ! いや、そうじゃなくて10円玉に集中しよう。
強い意志の力で、俺が10円玉に視線を移した途端――10円玉は、本当に動いた。

中田 実

あ! 今!

鳥海涼子

ね? すごいでしょ?

中田 実

て、手品?

鳥海涼子

違うの。ある日突然、できるようになった超能力!

中田 実

でも……

 彼女の顔を見ると、汗だくだった。短い時間なのに、ものすごい疲労してる感じだ。

中田 実

手で動かした方が、楽じゃない?

鳥海涼子

うっ……

中田 実

確かにすごいんだけど、そもそもこの能力、何かの役に立つの?

鳥海涼子

ううっ……

中田 実

なんか、無駄な特技っていうか……

 ちょっと言い過ぎたかなと思ったが、彼女はにっこり笑って、こう切り返してきた。

鳥海涼子

ううん。世の中に無駄なものなんてないのよ。ただ、それを無駄にしてる人がいるだけ。

 それにね。昨日は私、1円玉しか動かせなかったのよ。でも今日は10円玉が動かせるようになってる。……この調子でこつこつ努力してれば、いつか500円玉だって、動かせるようになってるはずよ!

 なんか、安い目標だなと内心思ったが、さすがに黙っていた。

中田 実

でも俺なんて、手を使わないで千円札を動かせるよ

鳥海涼子

鼻息で、とか言うんでしょ?

中田 実

あ。ばれた?

鳥海涼子

うふふ

 心の中にあるどこかが『きゅん!』と音を立てそうなくらい素敵な笑顔だった。

中田 実

(でももう……あの笑顔は、見られないんだな……)

― 3 ―

 屋上に着いた途端、涼しい風が吹いた。
大神早紀は、長い黒髪をなびかせながら、俺にこんなことを聞いてきた。

大神早紀

中田君は、呪いの存在を信じる?

中田 実

え? ……の、呪い?

 いきなり何を言い出すんだろう? ひょっとして、からかわれているだろうかと思い、彼女の表情を伺ったが、その目は真剣そのものだった。

大神早紀

涼子が自殺したなんて……私、未だに信じられない。

大神早紀

私たち、親友同士だったのよ。あの子が悩んでるなんて話、聞いてもいないし、それにあの子、好きな人がいたの。これから告白するんだって言ってたわ。そんな子が、自殺なんてするわけないでしょ?

中田 実

ああ。俺もついさっき、そんなことを考えてた。推薦が決まってるのに、受験ノイローゼになんてなるわけないってね

大神早紀

あの子きっと……いえ、間違いなく、誰かに呪われたのよ!

中田 実

の、呪い?


 ちょっと現実味の薄い言葉だった。一応、今は二一世紀だ。その昔、『未来』と呼ばれていた時代なのだ。そんな時代に呪いだなんて……しかし早紀は、静かにこう続けた。

大神早紀

『人を呪わば穴二つ』って言葉、あるでしょ? 他人を呪って殺そうとすれば、自分もその報いで殺されるから葬るべき穴は二つ必要なことになるって意味よ

大神早紀

でも……よく考えてみて、気が付いたことない? この言葉って、ひとつ目の穴……つまり、呪った相手が葬られるってことが大前提になってるのよ

中田 実

そう言えば、まぁ確かに……

大神早紀

『人を呪わば穴二つ』――この言葉が生まれた時代は、今よりもずっと呪いの効果が信じられていた。私、そんなふうに思うの


 日差しは相変わらず強いのに、なんとなく寒気がしてきた。……人を呪う力。ひょっとしてそれは、あのとき俺が見た小さな鬼と何か関係があるのではないだろうか?

大神早紀

中田君。あなた、あのとき、涼子のすぐ後ろの席に座っていたんでしょ? 何か気付いたことはない? 呪いの言葉が聞こえたとか、あるいは、近くに涼子のこと恨んでる人がいたとか……

 ――彼女になら、話してもいいのかもしれない。
俺が見た、小さな鬼のことを……

中田 実

あのさ、俺……


 そのとき、絶妙のタイミングで携帯が鳴った。ディスプレイに表示されているのは、俺の妹・佳奈の番号だ。

大神早紀

どうぞ。気にしないで出て

中田 実

ん、ごめん


 電話に出ると、佳奈の元気な声が聞こえてきた。

中田佳奈

『もしもし! お兄ちゃん? 今日もお母さんたち遅くなるって。だから私が晩ご飯作るよ。買い物付き合って! 今どこ?』

中田 実

屋上

中田佳奈

『それじゃ、すぐ行くからね』

 そう言うと電話は一方的に切れた。

中田 実

えーっと……大神さん

大神早紀

うふふ。全部聞こえてたわ。二人でいるところ見られちゃうと、佳奈ちゃんに誤解されちゃうから、私ここで消えるわね

中田 実

誤解ってそんな、俺と佳奈は別に……

大神早紀

いいの。いいの。それじゃ!

 そう言うと大神早紀は、さわやかな笑顔を残して去っていった。

― 4 ―

中田佳奈

おまたせー!!

早紀と入れ替わりのように現れたのが、一歳下の妹・中田佳奈(なかた・かな)だ。

中田 実

あ、ああ

中田佳奈

……ん? どうしたの? なんか元気ないみたい

 小首をかしげて、俺の顔をのぞき込む。こうして見るとコイツ、案外かわいい。実際、クラスでもかなりもてるのだそうだ。

 まぁ確かに、目は大きいし、鼻筋も通ってるし……顔立ちはまぁ整っている方だと思う。性格も素直で優しいし、ちょっと甘えん坊なところも悪くない。体は細いくせに胸は結構大きいし……俺もまぁ、時々――ほんの時々だけど『どきっ』とするような瞬間もある。

 でもやっぱり、コイツは妹だ。異性として意識することなんて絶対ない。恋愛の対象ってよりは家族だ。あくまでも。

中田佳奈

ねぇ。さっきから、なにぼーっとしてるの?

中田 実

ん? ああ……ちょっとね

中田佳奈

……大丈夫? 熱とかあるんじゃない?

 そう言って佳奈が、俺のおでこに手を当てる。その瞬間、ふわっと揺れる髪の毛から、シャンプーのいい匂いがした。

――さっきの撤回。
異性として見てないなんて大嘘だ。俺はちょっとだけ、コイツを意識し始めている。……いや、でも実の妹を好きになってしまうなんて、どうなんだろう? うーん。

中田 実

いや。ほんとに何でもないんだ! さぁ! 買い物行こう!

中田佳奈

うん!

― 5 ―

 佳奈と二人、制服のまま近所のスーパーに行く。

中田佳奈

それじゃお兄ちゃん! よろしく!

 佳奈はそう言って俺に買い物カゴを手渡すと、ポケットから携帯電話を取り出した。

中田 実

ん? 誰に電話するんだ?

中田佳奈

あ、そうじゃなくてボイスメモ。今日買う物を、吹き込んでおいたんだ

 ピッという操作音のあと、携帯から佳奈の声が再生され始めた。

中田佳奈

『お米10キロ、お醤油、牛乳1パック、みりん、ミネラルウォーター3本……』

中田 実

あ、あのさ……全部重いものばっかりなんだけど

中田佳奈

え? そう? そうかな?

中田 実

ひょっとして、これを持たせるために俺を誘ったのか?

中田佳奈

えへへ。ばれた?

中田 実

あのなぁ……

 よく考えたら、買い物に誘われるときはいつもこんなパターンだった気がする。いい加減、断るということを覚えた方がいいのかもしれない。

 ここで俺たちの両親について説明しておく。父親も母親も小さなIT系の企業に勤めているのだ。忙しい業界らしく、特に夏場はほとんど家に帰ってこない。俺たちがまだ小さい頃は二人ともそれなりに家事や育児をしてくれていた記憶がある。しかし、手がかからなくなるとすぐに仕事人間に戻ってしまったのだ。

 もちろん、寂しいと思ったことはある。でも二人が楽しそうに働いてるのを見ると何も言えない。……と言うより、そんなふうに真剣に打ち込める仕事があることを、ちょっと羨ましくも思う。

 ひとつだけ不満があるとすれば、母親が俺に対して優しすぎることぐらいだろうか? 佳奈の頭は平気で殴るくせに、俺が同じことをしても口で叱るだけで決して手は出さない。そのことを指摘すると

中田郁美

長男だから、大切に育て過ぎちゃった

と言って笑っていた。
……そういうものなのだろうか?

中田佳奈

お兄ちゃん! 何してるのよ! こっちこっち!

 でもまぁ、こうして佳奈と仲良くやっているし、これはこれで幸せな家族なのだと思う。

― 6 ―

中田 実

ふぅ! 暑い! 重い! 疲れた! 腹減った!

 買い物に付き合わされ、今ちょうど家に戻ったところだ。

中田佳奈

いっぺんに不満言わないで、いっこいっこ解決しようね

 佳奈はそう言ってエアコンのスイッチを入れる。

中田 実

で? これ、どこに置けばいいんだ?

中田佳奈

うん。キッチンまで持ってきて

 俺は、20キロ近くありそうな布製の買い物袋をキッチンに運んだ。

中田 実

ふぅ。やっと終わった

中田佳奈

あ、でもね。私、お兄ちゃんが重いもの持ったときのぎゅっと太くなった二の腕って好きだよ。なんか『男の子だなぁ』って感じがする

 ……こういうリアクションに困るほめ方をするのも佳奈の特徴のひとつだ。ストレートに、思ったことをポンと口にする。

中田 実

パ、パーツでほめるなよ

 照れ隠しにそういうのが精一杯だった。

 エアコンが効いてきたため、部屋はだいぶ涼しくなっていた。

中田佳奈

次はお腹の虫を何とかしなくちゃね。ごはん作るから待ってて!

中田 実

なんか手伝うか?

中田佳奈

ん、大丈夫。テレビでも見て、ゆっくり休んでてよ

 そう言われてニュースに目をやる。

 ――母親と妹を撲殺し、逃げ回っていた少年が遺体で発見されたらしい。その後、複数の教え子を監禁し、わいせつ行為を働いていた大学教授の続報……まったく、ろくなニュースがない。いや、逆か……ろくでもないことばっかりを選りすぐって報道しているのが、きっとテレビのニュースってもんなんだ。

 毎日毎日、ネタが尽きることもなく放送されるニュース番組。でもこういう事件のうちの何パーセントかは、ひょっとしたらあの鬼の仕業なのではないだろうか? 耳の穴から入っていって、人をおかしくする鬼。あの鬼が、真面目で大人しそうな少年を殺人鬼に変え、研究熱心な大学教授を鬼畜に変えてしまったとしたら……身体の奥底から、寒気のようなものが這い上がってきて、俺はエアコンのスイッチをOFFにした。

 いつの間にかニュースは切り替わり、画面では不自然な髪型の評論家が食品の偽装問題についてもっともらしく喋っていた。

中田 実

(あんたの髪型が偽装だよ!)

と心の中で突っ込んだちょうどそのとき――キッチンから佳奈が出てきた。

中田佳奈

できたよーー!

中田 実

おお! いいにおいだ!

中田佳奈

お兄ちゃん、ここんとこ元気なかったからさ、大好きなハンバーグ、作ってあげたからね

中田 実

いや、ハンバーグが好きだって言ったのは小学生の頃で……

中田佳奈

え? 今は嫌いなの?

中田 実

いや、好きだけど……

中田佳奈

じゃあ食べよ。いっただきまーす!

 ハンバーグは、本気でうまかった。なんというか、しあわせの味だ。食べているうちに、だんだんほっとしてきた。同級生が目の前で自殺し、鬼が見えるようになっても、こうして二人で食べる晩ご飯はしみじみとうまい。

 佳奈に憧れてるヤツらは学校にもたくさんいるけど、コイツの料理がこれだけうまいってことを知ってるのは、恐らく俺だけだ。
 今日学校で起こった出来事を、本当に楽しそうに話す佳奈を見ながらコイツの明るさには、ずいぶん救われてるなと思った。

中田佳奈

ごちそうさま。ところでさ……

 全ての料理を綺麗にたいらげ、平和な気持ちでお茶を飲んでいると佳奈が聞いてきた。

中田佳奈

屋上で大神先輩と、何話してたの?

 やましい気持ちは全然無いはずなのに、一瞬ドキッとしてしまう。

中田 実

ああ。見てたんだ。実はさ……

 俺は、彼女から聞いた『呪いの話』について説明した。

中田佳奈

呪いかぁ…そう思いたくもなるよね。親友に自殺なんてされたら、自分が見捨てられたみたいに、悲しい気分になるもん。……大神さん、かわいそう

 見ると佳奈の目は潤んでいた。そういえばコイツが小学5年生の時、一番仲の良かった女の子が自殺したんだっけ……確かあのときは、いじめが原因だった。

中田佳奈

誰かのせいにしないと、心が壊れちゃいそうになるんだよ。
私に何かできたことあったんじゃないかとか、ひょっとしたら私が自殺の原因を作っちゃったんじゃないかとか? いろんなこと考えちゃって、夜眠れないし……食べても全部吐いちゃうし……

 確かにあの頃の佳奈は、ひどい状態だった。俺は佳奈の笑顔が見られなくなってしまったことに驚き、うろたえ、焦った。

中田佳奈

そういえばあのとき、お兄ちゃんがおかゆ作ってくれたんだよね。二口しか食べられなかったけど……あれ、おいしかったよ……

中田 実

ああ。上の方が生煮えで、下の方が焦げてる不思議なおかゆだろ?

中田佳奈

うん。だから私、真ん中のあたりだけ食べた

 そう言うと佳奈がくすっと笑った。お互い、笑顔を与えたり与えられたり……そうやって、今まで過ごしてきたんだな……そんなことを改めて実感した。

中田佳奈

あのとき、自分がすごい逆境にいるみたいに感じたの。でも私、逆境に立ち向かえるほど強くない。だからさ、今の状況を逆境だと思わないことにしたの

中田佳奈

そしたらすごく気持ちが楽になった。幸せなこと、たくさんみつかった。だってそうでしょ? 家族みんな健康だし、お兄ちゃんだって優しいし、ごはんもおいしいし……周りなんて、なかなか変えられないけど、自分の心ならすぐに変えられる!そんなふうに思ったの!

中田佳奈

だからね。どんな理由があったとしても自殺しちゃ駄目だと思う。……私、自殺する人って大っ嫌い。いくら自分の命だからって簡単に捨てていいわけないよ。自殺しないように、自分の気持ちを変えるべきなんだよ。

中田佳奈

だって、ぐすっ……だって……

 親友の死は、あれから5年経った今でも、佳奈の心に暗い影を落としている。

中田 実

いや、鳥海の場合、自殺じゃないんだよ。俺、見たんだ――

 俺は佳奈に、全てを話すことにした。授業中、突然現れた小さな鬼のこと。彼岸花の予言。鬼が鳥海涼子の耳の穴の中に入っていったこと、その後の異変。自殺した死体が、本当に彼岸花のように見えたこと……

 一つ一つの話を、驚いた表情で、しかし真剣に聞いていた佳奈は、やがて意を決したように立ち上がってこう言った。

中田佳奈

お兄ちゃん! 調べてみようよ! 鬼のこと!

彼岸花 第一章 『鬼(き)』

facebook twitter
pagetop