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――あれから一週間が過ぎた。鳥海涼子の事件に関しては、朝礼で校長がこう説明していた。『彼女は、受験ノイローゼだった』と……
ノイローゼ……便利な言葉だ。この言葉を使うことによって、なんとなくだけど、いろんなことが分かったような気分になる。自殺したのもノイローゼなら仕方ない。受験生だし、いろいろストレスがたまってたんだろう。精神的にも不安定な年頃だから、そんな複雑な感情が一気に爆発して……
……でもそんなの嘘だ。彼女は学校推薦が決まっていたのだ。受験ノイローゼになんて、なる理由が見当たらない。
それにあの鬼。死の直前、彼女の身体の中に入っていった小さな鬼のことは、いったいどう説明したらいいのか?
結局、なにもわかっていないんだ。こういうわけのわからないものに蓋をするために、人はきっと、『言葉』を使うのだろう。言葉を当てはめて、わかった気になって……それでようやく安心して、日常生活に戻るんだ。
やがて時間が経てば、みんなが彼女のことを忘れる。問題は何一つ解決しないまま――