どこまでも続く草原。
そこで、私は彼と、恋をするのだ。
始まりは少しだけ前。

私は随分と長い間城に閉じ込められてた。所謂、魔王の城とでもいうやつか。国王の娘として生まれた私は、幼い頃に魔王に連れ去られた。理由は簡単だ。魔王は人間と争いたかったのだ。魔王の思惑通り父である国王がたくさんの人をこの城へ向かわせて多くの人が死んだ。一生こうして城に閉じ込められ、生きていくしかないのだろう。そして最後は一人寂しく老いて死ぬのだ。そう腹を括ったその時だ。

彼が現れたのは。

彼は魔王の目を盗み、私に会いに来た。何度も逢瀬を交わし、時間を共有していく内に彼の心は決まったみたいだった。ここから抜け出そう、と、彼がそう言った。私は彼の手を取って引かれるがままについていった。何度も危険を感じたが今、こうして、城はもう見えない程の遠くにいる。

私は助かったのだ。
自由になれたのだ。

助けてくれた彼に心惹かれるのはきっと当然のことなんだろう。

彼は自由になったというのに浮かない顔でいつものようにぷよぷよしていた。

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