Ⅷ 告白

放課後の図書館――。
フェリシアとベティは肩を並べて勉強をしていた。
金曜日ということで、二人の他に、利用している学生は誰もいなかった。

実はね、ベティ。……私、ウィルフレッドのことを好きになってしまったみたいなの

フェリシアは意を決して打ち明けた。
 あの日から、フェリシアの頭の中はウィルフレッドのことでいっぱいだった。
でも、いまさら謝るわけにはいかないだろう。
もうウィルフレッドは私のことなんて忘れているに決まっている。
何度、忘れようと心に決めたことか。それなのに、心はウィルフレッドで占められたままだ。人間とは愚かなものだと思う。いつだって、失って初めてその大切さに気づくのだ。

うん、知ってる

てっきり驚くとおもっていたベティは、冷静な顔でそう言うと、フェリシアをまっすぐ見つめた。その瞳には、親友として本気で向き合いたいという、真摯な意志が感じられる。

そっか。ベティには分かっていたんだ。でも、私はウィルフレッドには釣り合わないよね

そんなことないわ。フェリシアは頭が良い上に可愛いもの。親友の私が保証する。自信を持って

でも……

でも、っていうの、最近のフェリシアの口癖よね。それじゃ駄目よ。<でも>はもう禁止。ほら、今度ウィルフレッドに会ったら、まっすぐ目を見つめてあなたの気持ちを伝えなさい

そ……そんなの絶対に無理。私とは住む世界が違う人なのだから。ウィルフレッドのことを好きだなんて、そんなこと、彼に言えるわけがないじゃない!

フェリシアは頭を抱えて言った。

フェリシア!僕のことをそんな風に思ってくれていたのか

ふいに、後ろから声が聞こえる。振り返るとそこにいたのは、フェリシアが一番会いたかった人、ウィルフレッドだった。
ウィルフレッドは不安げにフェリシアの方を伺っている。

ウィルフレッド……?あなた、いつからそこにいたの?

君が僕を好きと言ってくれた時からだよ。ああ、フェリシア。君も僕と同じ思いでいてくれたんだね。

え?ということは、ウィルフレッドも、私を思ってくれていたの?

ああ。僕も君が好きだ。僕が『死霊秘法(ネクロノミコン)』のことを調べるなと言ったのは、君に危険が及ぶと思ったからだ。

本当に!?嬉しい。私、初めてあったときからあなたのことが好きだった。でも、気持ちを上手く打ち明けられなくて……まだ間に合う?私を受け入れてくれる?

もちろんだとも、僕のフェリシア

で、二人は駆け寄り、手を握り合う。
そんな二人を、ベティはやれやれと言った表情で見つめる。
けれど、幸福の絶頂にいる二人は、そんな視線は気づかないのだった。

その夜、『死霊秘法(ネクロノミコン)』の秘密を調査していた教員・クラークの屋敷から、突然住人が姿を消した。テーブルには料理や食器が置かれ、あたかも食事中にふらっと何かの用事が出来て住人が席を立ってしまったかのようだったという。

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