オレノセイダー

ぐはあっ!

荒々しい、だがより重さを増したキサマノセイダーの蹴撃。

辛うじて両腕で受けるも、大きく弾き飛ばされ、倒れ伏すオレノセイダー。

キサマノセイダー

キサマノ……貴様のせい……ダ!

オレノセイダー

キーさん、俺のせいで、俺のせいで……!

ムセニビールス達はその種の本能で、自分たちの天敵の存在を察知し、種族一丸となって排除するべく、キサマノセイダーの肉体を操っている。

ここで二人の宇宙刑事が倒れる事になれば、もはやこのよめなしランドに、ビールスの魔の手を阻む者はいなくなるのだ。

俺のせいだ、俺がなんとかしなければ!

キサマノセイダー

キサマノセイっ!

だがキサマノセイダーの力は圧倒的だった。鍛え上げられた技。歴戦の宇宙刑事スーツ。そして、ムセニビールスにより刻一刻と魔物化されていく強靭な肉体。

ダブルリストカッターはもちろん、バーニングレンタンヴィークルでの決死の体当たりや七輪投げですら、今のキサマノセイダーを止めるには力不足だった。

もはやこれまでか、俺のせいで。

オレノセイダーの心が折れかけた、その時。

キサマノセイダー

私ごと殺せ、オレノセイダー!

キサマノセイダーの動きが、ぎしりと、止まった。

オレノセイダー

キーさん!

キサマノセイダー

し、試験用の形状固着モードと、私の力で、なんとか動きを止めている!

キサマノセイダー

こ、攻撃さえ止まれば貴様でも、や、やれるだろう……さあ、早く!

オレノセイダー

キーさん、お、俺には無理だ!そんな事……

オレノセイダーの脳裏をよぎる、シニーソーダーの死に顔。

まさか、俺のせいで、宇宙刑事を二人も死なせてしまうのか。

オレノセイダー

お、俺のせいで……!

キサマノセイダー

あ、ああそうだ。私がここで死ぬのは、貴様のせいだ

キサマノセイダー

だが……か、考えろ。ビールスが何故、お前でなく、わ、私を宿主に選んだか

キサマノセイダー

お前の自虐には、闇が無い

キサマノセイダー

お前は純粋に、己の責任を重く受け止められる心を持っている

キサマノセイダー

責務を全うしようとする意志。ムセニビールスが最も嫌い、そして宇宙刑事に最も大切な心の一つだ

オレノセイダー

キーさん……そんな、俺は!

ぎしぎしと音を立て、それでも必死にムセニビールスの動きを止めるキサマノセイダー。

無表情なはずの宇宙刑事スーツの顔が、何故か薄く、そして済まなそうに笑ったように、オレノセイダーには見えた。

キサマノセイダー

も、元はと言えばこの星にビールスを逃してしまったのは、私の失態だ

キサマノセイダー

都合よく貴様やシニーソーダーのせいだとなすり付けようとした私の心の闇を、付け込まれたというわけだな……

キサマノセイダー

さあやれ、はやく!オレノセイダー!

オレノセイダー

うおお……ッ!

オレノセイダーは咆哮した。苦悩した。

本当にキサマノセイダーを殺すしかないのか。

己の無力を悔やみ、オレノセイダーは自らの震える拳を睨みつける。

その時。

ふと目に入り、知ったのだ。

ダブルリストカッターでぱっくり開いたままの筈の手首の傷が、いつの間にか完治していた事を。

あのキムチの海でこの技を繰り出してから、時間にしてまだ数分。相当深く切った筈だが、出血は既に止まり、一筋の傷が残っているだけだ。

そう言えば貧血の症状もない。

そうだ、俺は俺のせいで、そうだった!

オレノセイダー

キーさん。やっぱり俺、出来ないよ

キサマノセイダー

な、なんだと!この後に及んで、それでは、貴様のせいで……!

オレノセイダー

そうだ、俺のせいなんだ

オレノセイダー

企画課の吉田さんが俺を恨んだのも

オレノセイダー

本当は豚肉アレルギーなのに豚ひき肉コロッケを売らされていた望月さんが、ずっとフラストレーションを溜めていたのも

オレノセイダー

本当はマジックショーに復帰したいのに日頃着ぐるみや衣装の修理ばっかりやらされて、バッカーさんが手の震えが止まらないレベルのアルコール中毒になったのも

オレノセイダー

本当はヌードショウをやりたいのに『体格が貧弱だから』という理由で掃除しかさせてもらえない牛島さんがくすぶっているのも

オレノセイダー

特に直接関連はないけどきっと俺のせいなんだ!

オレノセイダーの、折川の目に映るのは、

倒れ伏したまま、ほんの僅かに呼吸をする以外は動かない、同僚達の哀れな姿。

オレノセイダー

俺はずっと、俺のせいだと思ってきた

オレノセイダー

関係無く見える所で何かあっても、きっと俺のせいだって思いこんで来た。

オレノセイダー

実際そうだった事もあったし、そうじゃない事もあった。

オレノセイダー

出しゃばりやお節介だと言われる事もあった。

オレノセイダー

さっきのキーさんみたいに、お前はもうやるなって言われた事だってあった。

握った拳を震わせ、天を仰ぐオレノセイダー。

不甲斐無さに、無力さに、かつて何度自分は責め立てられて来ただろう。

果たすべき責任を目の前にして、かつて何度自分は、何も出来ずに立ち尽くしていただろう。

だが。

今やれるはずの事をやらずに、どうするというのだ。

俺よ!

オレノセイダー

でも、もうやらずにはいられないんだ!

オレノセイダー

勝手だけどそれは俺が、少しでも、何かの責任を感じて生きていたいからだ!

オレノセイダー

少しでも俺が関わった事に、少しでも責任を背負う事が、生きる事だ!

オレノセイダー

だから、生きている限り、みんな俺のせいなんだ!


ミンナー・オレノセイダー!

俺のせいでつづく!

第四話 危機的状況俺のせい

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