キサマノセイダー

「オレノセイダー、貴様……!」

驚愕のままに、キサマノセイダーは声を漏らす。

ボディの赤は血涙の如く!

装甲が零す光の粒子も、

絶えず流るゝ血飛沫の如く!

ミンナーオレノセイダー

ミンナー・オレノセイダー!

己に向けた怒りの炎が、新たな力を纏わせた!

キサマノセイダー

完全定着、してしまったか……!

宇宙刑事スーツは場の空気の他に、着用する者の心を感じ取る。

今のオレノセイダーは、否、折川ルイスは己の自虐の意味を知り、役割を知り、その上でさらなる力を渇望し、戦い生きる事を選んだ。

着用者が己の為すべき事を真に悟ったその時こそ、宇宙刑事スーツはポテンシャルの100%を発揮するのだ!

己が正義を為す為に!

キサマノセイダー

くっ、げ、限界か……!

意志の力でビールスの動きを止めていたキサマノセイダーが、再びぎしりと動き出す。

そして、仁王立ちのままのオレノセイダーに、

キサマノセイダー

こ、殺せェ!オレノセイダァア!

悲しき哉、悲鳴の如き言葉と裏腹に、雷撃を纏い飛びかかる。

凶悪さ十倍増のキサマノセイダーの蹴りが、オレノセイダーの腹に深く刺さる。

だが!

ミンナーオレノセイダー

俺がこのスーツに与えられた、真の力……

ミンナーオレノセイダー

見るがいい、ムセニビールスよ!

動きの止まったキサマノセイダーの顔面を、オレノセイダーの両手ががっしり捉え、

ミンナーオレノセイダー

オレガヤルヴェ・キッスゥ!

問答無用の瞬速で、その唇を重ね合わせた!

キサマノセイダー

な、何をっ!

キサマノセイダー

はぁ……ん……っ!

オレガヤルヴェ・キッスはただの接吻ではない。

宿主の体内に巣食ったムセニビールスを、その恐るべき吸引力で捉え、

ミンナーオレノセイダー

ちゅぽんっ!

自らの体内に取り込む技なのだ!

キサマノセイダー

ぷ、ぷはあ……っ!

キサマノセイダー

ま、まだ余韻が……はっ!

キサマノセイダー

ムセニビールスが身体から……消えた!

そして!

その双掌から溢れる紅き粒子が、

大小二振りの刃と化す!

ミンナーオレノセイダー

食らえ、俺!

ミンナーオレノセイダー

ストマック・スラッシュ!

左の脇差で己の腹を掻っ捌く!

オレノセイダーの体内に滞留していたビールスが、赤き刃の熱に追われ、逃亡しようと喉元に這い上がる!

そして!

ミンナーオレノセイダー

アーンドゥ……

ミンナーオレノセイダー

カインシャック・ブレイド!

右手の長刀を閃かせ、己の喉元を真一文字に斬り裂いた!

この世の物と思えぬ断末魔が、オレノセイダーの体内から響く。

キサマノセイダー

それが貴様が、完全定着で手に入れた力……なのだな!

そう。ストマック・スラッシュとカインシャック・ブレイドは、体内に取り込んで凝縮したムセニビールスを、自らの刃で斬りつけ焼却する、ミンナー・オレノセイダーだからこそ可能な自虐奥義!

自虐に耐えながら何度も立ち上がり生きてきた折川。
そんな彼に宇宙刑事スーツが与えたのは、類稀な自浄と治癒の能力だった。

オレノセイダーは自らの塞がった傷を見てそれに気付き、ビールスを取りこんで仕留める術を閃いたのだ。

園内に轟いた断末魔が、薄く細い煙と共に、空へと消えていく。

ミンナーオレノセイダー

自虐完了、俺のせい。

ミンナーオレノセイダー

悪の最期も 、俺のせい!

戦いの終焉をその目で見届けたキサマノセイダーが。

そして、園内にまだ残っていた観客達が。

ぽつぽつと。

次第に強く、熱く。

歓声と拍手を惜しみなく贈り、

過剰に自虐な宇宙刑事の勝利を、

心の底から讃えるのだった。

俺のせいで次ラスト!

最終話 俺の正義は俺のせい

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