驚愕のままに、キサマノセイダーは声を漏らす。
「オレノセイダー、貴様……!」
驚愕のままに、キサマノセイダーは声を漏らす。
ボディの赤は血涙の如く!
装甲が零す光の粒子も、
絶えず流るゝ血飛沫の如く!
ミンナー・オレノセイダー!
己に向けた怒りの炎が、新たな力を纏わせた!
完全定着、してしまったか……!
宇宙刑事スーツは場の空気の他に、着用する者の心を感じ取る。
今のオレノセイダーは、否、折川ルイスは己の自虐の意味を知り、役割を知り、その上でさらなる力を渇望し、戦い生きる事を選んだ。
着用者が己の為すべき事を真に悟ったその時こそ、宇宙刑事スーツはポテンシャルの100%を発揮するのだ!
己が正義を為す為に!
くっ、げ、限界か……!
意志の力でビールスの動きを止めていたキサマノセイダーが、再びぎしりと動き出す。
そして、仁王立ちのままのオレノセイダーに、
こ、殺せェ!オレノセイダァア!
悲しき哉、悲鳴の如き言葉と裏腹に、雷撃を纏い飛びかかる。
凶悪さ十倍増のキサマノセイダーの蹴りが、オレノセイダーの腹に深く刺さる。
だが!
俺がこのスーツに与えられた、真の力……
見るがいい、ムセニビールスよ!
動きの止まったキサマノセイダーの顔面を、オレノセイダーの両手ががっしり捉え、
オレガヤルヴェ・キッスゥ!
問答無用の瞬速で、その唇を重ね合わせた!
な、何をっ!
はぁ……ん……っ!
オレガヤルヴェ・キッスはただの接吻ではない。
宿主の体内に巣食ったムセニビールスを、その恐るべき吸引力で捉え、
ちゅぽんっ!
自らの体内に取り込む技なのだ!
ぷ、ぷはあ……っ!
ま、まだ余韻が……はっ!
ムセニビールスが身体から……消えた!
そして!
その双掌から溢れる紅き粒子が、
大小二振りの刃と化す!
食らえ、俺!
ストマック・スラッシュ!
左の脇差で己の腹を掻っ捌く!
オレノセイダーの体内に滞留していたビールスが、赤き刃の熱に追われ、逃亡しようと喉元に這い上がる!
そして!
アーンドゥ……
カインシャック・ブレイド!
右手の長刀を閃かせ、己の喉元を真一文字に斬り裂いた!
この世の物と思えぬ断末魔が、オレノセイダーの体内から響く。
それが貴様が、完全定着で手に入れた力……なのだな!
そう。ストマック・スラッシュとカインシャック・ブレイドは、体内に取り込んで凝縮したムセニビールスを、自らの刃で斬りつけ焼却する、ミンナー・オレノセイダーだからこそ可能な自虐奥義!
自虐に耐えながら何度も立ち上がり生きてきた折川。
そんな彼に宇宙刑事スーツが与えたのは、類稀な自浄と治癒の能力だった。
オレノセイダーは自らの塞がった傷を見てそれに気付き、ビールスを取りこんで仕留める術を閃いたのだ。
園内に轟いた断末魔が、薄く細い煙と共に、空へと消えていく。
自虐完了、俺のせい。
悪の最期も 、俺のせい!
戦いの終焉をその目で見届けたキサマノセイダーが。
そして、園内にまだ残っていた観客達が。
ぽつぽつと。
次第に強く、熱く。
歓声と拍手を惜しみなく贈り、
過剰に自虐な宇宙刑事の勝利を、
心の底から讃えるのだった。
俺のせいで次ラスト!