ドラゴン

あんぎゃああ!!!


巨大怪獣の鳴き声。
恐れおののき逃げ惑う農民のみなさん。
鼻水を垂らしながら頭の悪そうな顔で呆然とする私。

※画像はイメージです

ドラゴン

ぐごおおおおおおおおお!!!


巨大怪獣が炎を吐きました。
収穫前の農園に火がつき全てが焼き尽くされていきます。
そこはまさに地獄絵図でした。

兵士

シルヴィア様! アレックス様! 無事でございますか!!!

馬車の扉が乱暴に開けられました。
中に入ってきたのは守備兵団の若い団員でした。

兵士

クソ!
収穫前に来るなんて!
こんなこと今までなかったのに!
はやくお逃げください!

魔王ちゃん

逃げる?
でも逃げたら、農民さんの明日の生活が……

ああ、そうか。
これはアレだ。

その時、私の脳内の魔王回路が答えをはじき出しました。

魔王ちゃん

全部ヤツらの陰謀なのです!!!
そう全てリア充(勇者)の陰謀です!!!

そう。
考えればすぐにわかることでした。
クリスマスにバレンタインに各種お祭り。
全てお一人様をあざ笑い精神的に追い込むためのイベントです。
消費と言う名の餌で商人を操り、リア充どもは数多の世界で我々お一人様を絶滅させてきたのです。

魔王ちゃん

我らお一人様がお前らに何をした!!!

※あくまで魔王個人の感想です。

そう。
これも全部リア充のボケどもの陰謀に違いありません!!!

※あくまで魔王個人の感想です。

魔王ちゃん

戦争じゃあ……

私は静かに震えながらつぶやきました。

シルヴィア

へ?!
なにを言っているのだアレックス?

魔王ちゃん

おどれボケェッ!!!
戦争じゃああああああッ!!!
兵隊集めろやあああああああぁッ!!!

私はとうとうキレました。
兵隊集めろと言っておきながら、家の倉庫からパクってきた剣(国宝レベル)を抜きました。
もちろん突撃するつもりです。

勝機はありました。
敵に攻めて込まれて城が陥落したときに金目のものを持って逃げるために、私は鑑定師レベルの観察眼を持っています。

この剣も凄まじい宝剣なのです!

シルヴィア

っちょ! アレックスなにを言ってるのだ?!

魔王ちゃん

リア充の好きなようにはさせるかあああああああッ!!!

こうして血走った目をした私はドラゴンに挑むのでした。

VS ドラゴン

畑では小さな女の子がドラゴンから逃げていました。
今まさに空から大きな口がその子を飲み込もうと……

魔王ちゃん

おどりゃああああああああああッ!!!

私はすんでのところで女の子を抱き上げて、そのままドラゴンの巨大な横っ面に野放図な前蹴り、いわゆる喧嘩キックを入れました。
ドラゴンの巨大な歯が何本か吹き飛び、轟音を上げながら地面に突き刺さりました。
そのままドラゴンはゴロゴロと転がっています。

ドラゴン

ギャアアアアアアアアアアアッ!!!

ドラゴンの悲鳴が響き、歯を折られたドラゴンが悲鳴を上げ悶絶しながら転げ回りました。

お前人間ちゃうやろ?
いいえ。
ばっちり人間です。
ただサムライ魔王の鬼のような特訓と、普通だったら百回は死ぬような肉体改造でパラメーターがバグっただけです。

魔王ちゃん

てめえコラァボケカスゥッ!!!

私は何を言っているのか自分でもわからないことをわめき散らしました。
非常時にかっこいい台詞を言える人間さんと、頭の悪い叫び声しか出ない魔王。
これが人生的なものの難易度に反映されているような気がする今日この頃です。

そして、私は歯をへし折られ悶絶するドラゴンをスルーして、そのままダッシュで安全地帯に女の子を逃がします。
そしてドラゴンの方を向くとニタァッと薄笑いました。
勇者(リア充)への復讐はまだ始まったばかりなのです。

ドラゴン

ぐるるるるる?

なんだこの生き物は?
ドラゴンはそう言っているようでした。

魔王ちゃん

人間ですがなにか?

膝をつき呆然とするドラゴン。
隙あり!!!

私は間髪入れず、ドラゴンの顔面に……
ではなく、なぜか後ろ足の方へ回りました。
そして……

魔王ちゃん

おりゃあああ!

剣を抜いて人間で言うところの小指を狙って斬りつけました。
小指をタンスの角にぶち当てたことのある皆さんなら、この痛みが想像できることでしょう。

ドラゴン

ぎゃあああああああ!

ドラゴンが泣き叫びます。

魔王ちゃん

うけけけけ!!!

私は最高の笑顔になりました。
今、我々は歴史的瞬間にいるのです。
魔王が始めて勇者と書いてリア充と読むクズどもの魔の手から、最愛の領地を守ったのです!
着いてから半日くらいですけど。

と、ヒャッハーした私がバカでした……

ドラゴン

あんぎゃああああ!!!

危険を感じたドラゴンが空に逃げやがりました。
私は近接ユニットなので攻撃が届きません。
うわーお!
この卑怯もの!!!

魔王ちゃん

降りてこいゴラァ!!!

私は剣をぶんぶんと振りまして抗議します。
しかし相手は巨大怪獣。
私の抗議などガン無視です。
私が地団駄を踏んで抗議していると、空に浮いたドラゴンの口が光りました。

魔王ちゃん

あ、やべえ……


それはドラゴンブレス。
ドラゴンは超高温で私をこんがりローストすることにしたのです。

魔王ちゃん

って美味しくなる前に炭になるわ!!!

そんなツッコミをしている私に炎が発射されました。

激しい振動と火が私を襲いました。
たぶんこのあと私は一瞬で炭火焼きになってしまうはずです。

魔王ちゃん

みなさん。
さーよーおーなーらー!

あきらめの早い私の脳みそが降伏宣言を出しました。
ところが……

シルヴィア

このおバカ!!!

シルヴィアが魔力の障壁で炎を防いでいました。

魔王ちゃん

さすが我が弟子!!!

私はサムズアップをしました。
そうなのです。
転生によってお互いの長所が潰された形の我々。
そこで私たちはとある協定を締結しました。
シルヴィアが私に武術を教え、私はシルヴィアに魔術を教えたのです。
シルヴィアの魔力量が多すぎてたまに死にかけますけど。

魔王ちゃん

シルヴィア!
デカいので攻撃しつつ、私に浮遊魔法!

シルヴィア

了解なのだ!
魔王ビイイイイイイィム!

※技名はいま適当に考えたに違いありません。

シルヴィアが自分の家からパクってきた杖をかざしました。
杖が輝き次の瞬間、轟音と共にビーム的なものが発射されました。
これに驚いたのはドラゴン。
負け犬のツラで慌てて避けています。

魔王ちゃん

うけけけけけけ!!!

ドラゴン

ぐあああああああッ!!!

シルヴィアビームを完全に回避したドラゴン。
さぞかしビビったことでしょう。
泣きそうなツラで炎で反撃をしようとこちらを向きました。

魔王ちゃん

今です!!!

シルヴィア

了解なのだ!!!

シルヴィアが杖を振ると、轟音と共にはるか遠くへ行ってしまったビームが弧を描いて戻ってきました。
シルヴィアがビームを途中で曲げたのです。

そして……

間抜けヅラを晒すドラゴンの羽に当りました。

ドラゴン

ぎゃああああああああああッ!

ドラゴンの悲鳴。
羽に穴の空いた巨体が墜落していきます。

魔王ちゃん

行きますよ!!!

私は空へ向かい跳躍します。

同時にシルヴィアが私に浮遊魔法をかけました。
空高く飛び上がる私。
墜落するドラゴン。
私は超高速で空を飛びドラゴンに迫って行きます。
同時に生命エネルギーである気、そのオーラを剣にまといました。

そして……

魔王ちゃん

おりゃああああああああああ!!!
魔王ギャラクティカスラッーシュッ!

※技名はいま適当に考えました。

そして私は剣を大きく振りかぶり、その首へ宝剣を叩き込みました。

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