うううぅぅぅ~、何ですかこの恥ずかしい服は?!


少年がまたもや指ぱっちんすると、羊の子アニスの姿が一瞬で服を着た状態に変化した。
上は白いビキニのブラのような格好で、下はタイトミニ、ふわふわの白いブーツでへそ丸出しルックだ。胸がある程度無いと着れない服装である。

しかしこれは恥ずかしい。
あたしじゃなくて良かった。

で、結局あたし達は何をするの?

あたし……達?

アニスちゃんが何やら不思議そうな顔をしている。何故自分まで含まれているのかが分からないと、目が訴えている。
でも毒食わば皿まで、一蓮托生、旅は道連れ世は情け、死なば諸共なのだ。
死にたくはないけどね。

うん、アニスちゃんはあたしの友達だって。だからアニスちゃんはあたしと一緒に来るの。これは決定事項よっ!

わけが分からないんですが。というか私を巻き込まないで下さい

ええっ? アニスちゃん、ちゃんと意識高い系を目指さないとだめだよ! 流される人生から足を洗ってあたしと一緒に来るのが一番なのよっ!

あなたに流されかけてますが

細かいことはおいといて。さて、あたし達は何をするの?

見事にスルーしましたね

少年の方を見ると、何故かあたし達を見て口を押さえて笑いを必死に堪えている。うん、掴みはオーケーです。

ああそうだね。ふふふ、全く君達は面白いな

私を含めないでっ?!

アニスちゃん、あたしと会ったのが運の尽きなのよ。

で、君達に頼みたいことなんだけど。それは僕が作った世界を治めてほしいんだ

暇だから世界を作っちゃうんだ。どんだけスケールが大きいんだ、この少年は。
それにしても。

…………治める。

つまりあたしに政治家をやれという事ですね。

合点承知! 玉虫色の返事をして、適当に過ごせばいいんだねっ

やることはたくさんあるよ

あの、どんな世界なのですか?

まだ殆ど手を入れていない。人族、獣族、エルフ族、ドワーフ族、妖精族、魔族、その他大勢と造ったけど何もしていないんだ。きっと混沌としているよ

そこを治めろ? 聞くだけで強そうな人たちがたくさん居る気がするんだけど?

自慢ではないが、運動神経に自信なんてないよ?
あたしが新世界の神になる! なんて宣言したら、きっとこてんぱんにやっつけられちゃう。

大丈夫だよ、さっき加護を与えたから

おおっ! じゃああたしってめちゃ強い?! どんな加護なのっ?!

作物を実らせることができるようになる。しかも通常の十分の一以下の速度で

……え?

それ以外にも、肥沃な土地に変えたり植物と会話ができたりととても便利な能力だよ

戦いは?

君の身体は頑丈に出来ているから何とかなるんじゃない? シロナガスクジラが踏んでも壊れないよ

クジラに足はないよっ?! じゃあいう事聞かない人に会ったらどうするのよ

そこは彼女に任せて

アニスちゃんに?

彼女ならドラゴンに踏まれても壊れない

ふぇっ?!

どっちも踏まれるしか能がないのっ?!

シロナガスクジラとドラゴン、どちらが重いのだろう。
微妙すぎて分からない。

そこまで凶暴な種族はいないから大丈夫だよ。まあ放置してから十億年くらい経っているから今はどう進化しているか分からないけど

放置プレイしすぎです。
というか数回文明が生まれて滅んでいても不思議じゃない長さじゃない?

凶暴な種族が生まれていても不思議じゃないよね、それって

そこで神の威光を持つ君達が頑張って治めてくれ

土壌開発がメインのあたしと、ドラゴンが踏んでも壊れないアニスちゃんが神の威光?

あの、私が行くことはもう決定なのですか?

何をいまさら

そのために君を作ったんだよ。元は珠だけどね

そうだ! あの珠って何なの?

一番ぴったりなのは、魂……かな

な、なんだってー。じゃあこの辺り一帯に水を撒けば全員消えちゃう?
燃えてる訳じゃないから消えはしないか。
でも魂を元に身体を作っちゃうなんて、やっぱりこの少年は神様なんだ。

さて、そろそろ話も終わりだ。僕が指を鳴らせば君達は僕が作った世界へと転移される。心の準備はいいかい?

ばっちりよ!

よくないです

アニスちゃん、人間諦めも肝心だよ?

……はぁ

では、いくよ?

あ、その前に。あなたの名前は?

……僕の名は

──創造神デミゴス

その声と共に、あたしの目の前が真っ暗になり、そして意識がどこか遠くへ跳んだ気がした。

こうして少女二人は世界へと旅立った。
後にこの少女、ファルティラは大地と豊穣の女神と呼ばれるようになる。

pagetop