少年がそう厳かに伝えた瞬間、あたしの身体、いえ珠がまばゆい光を放った。
目がぁ!?
って、あたしには目がないじゃないか。
いやいや、目が無いなら今までどうやって見ていたの?
それは心眼だよねきっと!
あたしは、剣の達人になれる素質があるんだ!
やったね父さん。
……と、浮かれていたのもつかの間、視界が突然変わった。
キミの名は、ファルティラ。それに決定した
少年がそう厳かに伝えた瞬間、あたしの身体、いえ珠がまばゆい光を放った。
目がぁ!?
って、あたしには目がないじゃないか。
いやいや、目が無いなら今までどうやって見ていたの?
それは心眼だよねきっと!
あたしは、剣の達人になれる素質があるんだ!
やったね父さん。
……と、浮かれていたのもつかの間、視界が突然変わった。
え? え? これ何??
気がつくと、あたしは人間の姿になっていた。
ぐー、ぱー、ぐー、ぱー。
ちゃんと手も動く。
足もちゃんとある。
あらまあ、すらっとした綺麗な足だこと。
余分な贅肉が一切ないよ?
ちゃんと出るところも出て……出て……あまり出てないけど、引っ込むところは引っ込んでいる。
誰よこれ。
あたしだけど。
おめでとう、キミはファルティラだ
少々混乱しているあたしに、少年は悪巧みをしていそうな表情で、伝えてきた。
えっと、ありがとう。プレゼントは年中受け付けているから、いつでもどんとこい!
その姿になっても、性格は変わらないんだね
うん、あたしはあたし。外見がいくら変わっても、あたしは不変だよ! ところで……
自分の身体を見る。
すらりとしたボディに、染み一つ無い肌。
銀色の長い髪が、頭を振る度に揺らいでいる。
凄くきれいな髪だし、キューティクルもばっちり。
手で梳いても、さらさらで引っかかるところが全く無い。
穢れ無き乙女って感じで、自分には全く似合ってないよ。
でも、それは良いとして。
どうしたんだい?
服! 欲しいよ!
さすがにマッパは、いくらあたしとはいえ恥ずかしい。
ああ、そうだったね
今気がついたかのように少年が言うと、指をぱちんと鳴らす。
すると、いきなりノースリーブの白いワンピースを着た状態になっていた。
わわっ?! なにこれ、手品?
それは僕の力だよ
服を自由に作れる力?! なにそれうらやま! あたしにもちょうだい!!
あげない
ちぇっ、けちー
服が自由に作れるなら、ででーんな服とか、どどーんな服とか、ばばーんな服とか色々楽しめそうなのに!
擬音語が多いのは、気にしないでね。
でもその代わりに、僕からプレゼントとして加護を与えよう
カゴ? 入れ物? でもあたしも一応女だし、可愛いポーチとかおしゃれなリュックがいいな
それじゃなく加護。僕の加護を君に与えると言っているの。じゃあ大人しくそこに座って。誰が寝転べと言った
ようやく地に着ける生活が出来るようになったんだから、全身で味わいたいのよっ!
はいはい、じゃあ与えるよ? えいっ
いったーーーいっ!
少年が思いっきりあたしの頭を蹴ってきた。
鈍痛が頭に響いてくるよ……。
い、いきなり蹴るなんて、もしかしてDVなのっ?!
何となく今までのキミの反応が浮かんで、ちょっと腹が立ったから蹴ってみた。反省も後悔もしてない
なによそれ! ひっどーい!
それで、何か変わった感じはしない?
立ち上がってみる。
手も足も動く。頭も無事だ。
よかった、これ以上アホにならなくて。
大丈夫、マイナスまではいかないよ
それって、あたしの頭はゼロってこと?!
それより、何か変わったかい?
んー、変わったような気はしないんだけど
突然人型になったのでその違和感はあるものの、特に変化はない。
それにしても加護?
加護って確か神様とか仏様が自分を信じてる人に対して与える、すごい守りだよね?
座禅とか組んだら浮かんだりできるやつ!
あれ? ということは、この少年は神様とか仏様?
もしかして、あなた偉い人?
うん。この世界で一番だと思うよ
こ、これはとんだご無礼をっ!
いきなり土下座しなくてもいいよ。さっきのままが、一番キミらしい
へっへっへ、さすが偉い人は違いますね。よっ、日本一!
……キミに加護を与えたのは、失敗かもしれないね
も、もう貰ったから返さないからねっ!
やれやれ、といった感じで少年は首を振る。
そして次に彼は手を別のところに浮いている珠に向けて翳した。
じゃあ次にキミの供を作るから
友達? なぜあたしがぼっちだって事知っているの!
はいはい、じゃあ作るよ
完全にあたしの事をスルーした彼は、
君の名は、アニスだ
と厳かに宣言をする。
すると彼の手の先にあった珠が輝きだし、それが人型へと変化していった。
って羊?
白いふわふわの柔らかそうな髪、大きな金色の愛くるしい瞳。
身長はあたしより少し低いくらいの、十五歳くらいの少女だった。
当然あたしが変わったときと同じようにマッパだった。あたしより出るところは出ているのが、何となくむかつくけど。
そして特徴的なのは彼女の頭。
大きな羊のような角が生えていたのだ。
あれ? 私は
おめでとう、キミはアニスだ
へ? えええぇぇ? 何で素っ裸?!
自分がマッパなのに気がついたのか、彼女は真っ赤な顔をしたまま手で大事なところを隠してしゃがみ込んだ。
なにこの子、めっちゃ可愛いんですけど。でも何で頭に羊っぽい角があるの?
今年の干支だったし、何となく?
じゃあ一年経ったらこの子は猿になるのっ?!
それもいいかもね
来年になるとこの子のお尻は赤くなっちゃうんだ。しかも満月になると巨大なお猿さんに変身して戦闘力が大幅アップ!
そんな設定はつけられないけど
和気藹々と会話していたあたし達に、羊の少女は大きな声を張り上げた。
何でもいいから服くださいっ!!