○ 自宅・書斎
○ 自宅・書斎
書斎でパソコンに向かっている大輔。
その後ろで犬がクッションの上で寝ている。
ZZZ
机の上に置いてあった携帯にメールが届く。
あちゃ、会社の飲み会入っちゃったか。残念
時計を見ると夕方の16時を回っている。
大きく伸びをして椅子ごとくるりと回る。
アルフォンス
アルフォンスがふてぶてしく目を開け、大輔の方を見る。
散歩行くぞ
大輔が立ち上がり居間の方へ向かうとアルフォンスもゆっくりと後ろをついていく。
#03「鯛茶漬け」
○ 同・外観
大輔とアルフォンスが家を出る。
日差し強いな…
ハッハッ
アルフォンスが大輔を引っ張る。
ちょっと待てって
○ 道路
のんびりとアルフォンスが歩くのを付いていく大輔。
といってもいつもの散歩コースである。
下校途中の小学生が挨拶をする。
あ、いつもの犬だ!
ほんとだ!
相変わらずちっちぇ!
あっという間にアルフォンスが小学生に囲まれる。
いつも言ってるがアルフォンスはちっちゃくねぇ。こういう種類なの
えー
ちっさいよー
でも僕嫌いじゃないよ
俺も
私もー
ワン
アルフォンスが尻尾を振っている。
ひとしきり、小学生達がアルフォンスを構うがしばらくして飽きる。
じゃーねー
ばいばーい
おぅ
ハッハッ…ワン!
アルフォンスが満足げに鳴く。
ほら、行くぞ。今日は商店街の方に行くぞ
再び散歩を再開する。
○ 駅前
学校帰りの学生達が駅から出てくる。
そのまま駅を通り過ぎていく大輔とアルフォンス。
○ 商店街
夕方の買い物客がちらほらと歩いている。
魚屋の前を通ると声をかけられる。
お、いつもの兄ちゃんじゃないか。アルも元気か?
あ、どうも
ワン
今日はどうする?鰤美味いよ。照り焼きとかは?
うーん、鯖は?
鯖あるよ。鯖にするかい?味噌煮とか塩焼きオススメだね
定番ちゃ定番すね。じゃあ、それで
あいよ!あ、そうだ今日ね、孫が作文コンテストで賞を取ってめでたいって事で鯛の刺身オマケしてんの。入れとくわ!
鯛!?そんなもんオマケにして大丈夫なん?
大丈夫じゃない!持ってけドロボー
豪快に笑う魚屋から商品を受け取り、お金を払う。
毎度あり!
魚屋を後にする大輔。
○ 自宅・玄関
両手にビニール袋を持った大輔が扉を開けて入ってくる。
ハッハッ
アルフォンスはドタドタと部屋の中に入っていく。
あ、こら!足拭いてからって、いつも言ってるだろ!
廊下に足跡が付いている。
ったく
靴を脱いで、廊下を歩いて行く。
○ 同・リビング
夜。
晩ご飯(鯖の味噌煮)を食べながら、テレビを見ている大輔。
アルフォンスもご飯を食べている。
バクバク
テレビでは料理番組がやっている。
ごまダレねぇ…
○ 同・キッチン
洗い物を終えた大輔が冷蔵庫を開ける。
あ、鯛忘れてた…
えーと…お、ごまダレ作って鯛茶漬けとかにするか
鯛の刺身をしまい、戸棚からすりこぎとすり鉢を取り出す。
えーと…ごま、ごまとあとなんだっけ、醤油と煮切り酒とか言ってたな
雪平鍋を取り出し、日本酒を小さじ2入れて火にかけアルコールを飛ばす。
あとごまをひたすら、か
10分ほどしてしっとりしてくる。
こんなもんかな。で、醤油とさっきの煮切り酒を入れて混ぜて…鯛を漬けて終了〜
ボウルにごまダレを入れ、鯛の刺身を漬け、ラップそして冷蔵庫で冷やす。
冷蔵庫の前で腕を組む大輔。
これで夜食は出来たも同然。楽しみだ
ハッハッ
いつの間にか足下にいたアルフォンスが大輔を見ている。
お前の分はない
クゥン
アルフォンスが残念そうな顔をする。
○ 同・書斎
夜。
大輔が再び、仕事をしている。
黙々とキーボードを叩いている。
その後ろでは、アルフォンスが寝ている。
携帯が鳴る。
麻里子からの着信。
もしもし?
おぉ、出た
そりゃ電話だし、出るよ。
そういうもんか
そういうもんだ
そうかー。そうなのかー…もしもーし、聞こえてます?
聞こえてるよ
大分飲んだね
大輔がクスクス笑いながら麻里子に返事をする。
そうなのー。んふふ。なんたって打ち上げだったからねー
うん
でもねー、色んな人に話しかけられて全然ご飯食べられなかったー
お腹空いてるの?
すこし。お酒はいっぱい飲んでるんだけど
そうみたいだね
少しろれつの回らない麻里子の答えにクスリと笑う。
あ、そうだ。そっちに今から行ってもいいかね?
え?今から?今どこ?
ん?今?…駅のホーム
駅?何駅?
花坂駅
花坂?そこから20分くらいかかる…てか、麻里子んちの隣駅じゃん
今日は帰って明日仕事終わったら来たら?
ふっふっふっ
何その笑い
残念でしたー。大輔の家に向かう方の電車のホームにいます!
ホームに電車が入ってくる音がする。
え、ちょっと今からホントに来るの?
だーかーらー、そう言ってるでしょ。電車乗るから切るね
あ、ちょ、ちょっと!
時計を見ると0時を回っている。
終電じゃねぇか…えーと
頭をくしゃくしゃとかく。
仕方ない、迎えに行くかー
大輔が立ち上がりリビングに向かう。
○ 駅前
大輔が改札に到着する。
まだ、麻里子の乗った電車は到着していない。
しばらくすると電車が到着し、人が降りてくる。
その中に麻里子がいる。
大輔の姿を見つけると駆け寄ってくる。
お迎えご苦労!
うわ、酒臭ぇ
なによー
行くぞ
大輔が麻里子の手を取る。
とことこと引っ張られながら麻里子が付いていく。
○ 自宅・玄関
大輔が先に扉を開け中に入り電気をつける。
廊下に移動していたアルフォンスがチラリと大輔を見る。
なんだおまえ、ここで寝てたのか
ハッハッ
おぉ、アルフォンスただいまー
!
麻里子がアルフォンスに近づこうとしたらダダッと逃げていく。
えぇ…なんでぇ
酒臭いからだろ
服のにおいを嗅ぐ麻里子。
そんなに臭うかなぁ?
とりあえず、お風呂にする?それともご飯
だいすけー
よし、ご飯だな
えー
風呂?
お腹空いた
ご飯に決まり
廊下を歩いて行く2人。
○ 同・リビング
リビングでくつろいでいる麻里子と少し離れたところで警戒しているアルフォンス。
○ 同・キッチン
大輔がキッチンに立っている。
雪平鍋に水と昆布を入れる。
えーと、確か沸騰前に取り出すんだよな
沸騰直前に昆布を取り出す。
鰹節を入れて、火を止める。で、だしができたら、こして完成
だしをポットに注ぐ。
三つ葉も刻んで…
三つ葉を6~8等分に切る。
あとは、ご飯とさっきの鯛を…
茶碗にご飯を盛り、冷蔵庫から先ほど漬けておいた鯛を盛りつける。
三つ葉、刻み海苔の順番で鯛の上に乗せる。
よし
○ 同・リビング
ダイニングテーブルに2人分の鯛茶漬けを並べる。
おーい、出来たぞー
ソファーでウトウトしていた麻里子に声をかける。
麻里子がはっとして起きる。
おぉ!鯛茶漬けだ!豪華だ!良いにおいだ!
さぁ座って座って
麻里子の椅子を引いて、着席させる。
では、参ります!
参ります!
大輔がポットを手に取り、出汁をかけていく。
湯気が立つ鯛茶漬け。
召し上がれ
ポットを置く。
いただきまーす!
一口、口に運ぶ。
おいしーーーい!
横にいた大輔にハイタッチを求める。
シェフ、今日も流石だね
お褒めの言葉ありがとうございます
いやぁお酒飲んだ後に丁度良い!
だろー
大輔も席について、自分のお茶碗にも出汁をかける。
そして、一口。
上出来だねぇ。うまいねぇ
だろー
大輔の口調を真似する麻里子。
笑う2人。
そうそう、あのね。今日の…
ソファーで寝ていたアルフォンスが片目だけ開けて2人の様子をうかがい、再び目を閉じる。
第3話 おわり
・*°☆今回の材料一覧☆°*・
*鯛茶漬け(2人前)
ご飯…適量
三つ葉…2~3本
刻みのり…お好みで
鯛の刺身…一人4~5切れ
*ゴマタレ
白ごま…大さじ2
醤油…大さじ1
煮切り酒…小さじ1
*出汁
コンブ…5~6センチ
かつおぶし…ひとつまみ
水…500cc