ワトリーは、エイミーに
何が起こったのかを考えながら
廊下をゆっくりと歩いた。

シオンが刺されて倒れている光景を思い浮かべ
エイミーがそこからどのようにして
走り去ったのかを想像してみた。

エイミーが楽屋に入ったとき
シオンはすでに亡くなっていたとすると

きっと彼女はショックで動揺したに違いない。

そしてシオンの携帯を掴んで、

何も考えずに裏口へと走って出て行ったのだろう。

だが――なぜ彼女はわざわざシオンの
携帯を持っていったのか?

その意図がワトリーにはどうしても
理解できなかった。

疑問を抱きながら、ワトリーは裏口へ続く
廊下を歩き、警備室の前まで来た。

中には、デイビスという警備員が座って
防犯カメラの映像を見ていた。

ワトリー

こんにちはなのだ

デイビス

こんにちは

ワトリー

警備員さんは、エイミーがここを走って行くのを見たのだ?

デイビス

ああ、見たさ。ものすごい勢いで走っていた。裏口のほうに向かってね

ワトリー

この裏口はどこにつながっているのだ?

デイビス

そこから駐車場へいけるよ。関係者以外は入れないんだ。見てみるかい?

ワトリー

うん








ワトリーが裏口のドアを開けると、
そこには広い駐車場が広がっていた。

その奥の街道には、何事もなかったかのように
猫たちが歩いている。

ワトリーは、その景色を見ながら静かに
ため息をついた。

ワトリー

エイミーはここから出て、いったいどこへ行ってしまったのだ…

切ない気持ちを押し隠し、もう一度デイビスに
話を聞くために中に戻った。

ワトリー

デイビス、なにか悲鳴や物音、
異常なことは聞かなかった?

デイビス

いや、特に聞いていないんだ。
見回りで席を外すこともあるから、タイミングによっては聞き逃すこともあるんだよ

ワトリー

怪しい猫を見てないのだ?

デイビス

申し訳ないね、ここは猫であふれているから、誰が怪しいとかは簡単には判断できなかった。
私のせいで情報が足りなくて…

ワトリー

デイビスのせいではないのだ。
大勢の猫たちの中で怪しい猫を見分けるのは難しいのだ

ワトリー

デイビス、シオンのことは知ってるのだ?

デイビス

ああ、彼女たちは何度もこの会場でライブをしているから、
顔くらいは知ってるさ。でも、
直接話をしたことはないんだ

ワトリー

そうなのか

デイビス

で、これからどうする
つもりだい?

ワトリー

防犯カメラに映っていた三匹にもう一度話を聞きにいくのだ

デイビス

わかった。私も何か気づいたことがあれば、すぐ知らせるよ

ワトリー

ありがとう、頼りにしてるのだ












一方ジョセフとポテトは時系列の整理 をしていた。

11:00 - ルーカスがシオンにお弁当を届ける。
(約1分)

11:10 - イザベラがシオンの楽屋に入り
メイク直しを始める
(約15分間滞在)

11:35 - サリーがシオンの楽屋を訪れる
5分間滞在。

11:45 - シオンが楽屋から出て廊下の窓を閉め
楽屋に戻る。

12:05 - エイミーが楽屋に来る。
わずか2分後に慌てて部屋を出て行く。

12:10 ‐ 清掃員がシオンの死体を発見

ジョセフ

つまり、エイミーが楽屋に
入るまではシオンは確実に生きていた。

ジョセフ

そしてその後、エイミーがたった2分間の滞在で、シオンの右胸を刺して殺した…そういう話になる。

2分ですか…そんな短時間で殺害して逃げるなんて、
本当に可能なんでしょうか?

殺し屋じゃあるまいし…。

だが、調べによるとエイミーは昔、ちびっこ相撲の優勝者だ、
十分ありあえる話だ

ポテト

昔とった杵柄というやつですね

でもエイミーにどんな動機があったんでしょう?
確かサリーさんはシオンさんと
エイミーはとっても仲が良かったと言ってましたが

それを確かめるために、全員に
詳しく話を聞く必要があるな。
ルーカス、イザベラ、サリー、
この3匹の証言をすり合わせるぞ

了解です、先輩!






ワトリーは、物陰でジョセフと
ポテトの会話に耳を傾けていた。

ワトリー

・・・

ワトリー

警察はエイミーがシオンを殺したと疑っているのだ…。

そう思うと胸が締めつけられるようだった。
エイミーが楽屋に入ったとき、

シオンはすでに亡くなっていたはずだ――
ワトリーは直感でそう感じていた。

しかし、防犯カメラには不審な影は映っていない。

では、犯猫は楽屋に潜んでいたのか?

それとも、カメラの死角を通ったのだろうか?

ワトリー

それにしても、エイミーが慌てて楽屋を飛び出した理由はなんなのだ?

ワトリーは、エイミーの行動とシオンの死には
何かしらの関連があると考えていた。

それを解き明かせれば、エイミーの無実も
証明できるかもしれない。

そして、エイミーが今どこに
いるのかもわかるはずだ。

ワトリーは、拳をぎゅっと握りしめ、
静かにその場を離れた。

エイミーを守るためにも、

真相を突き止める覚悟を胸に秘めながら――。

つづく

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