ジョセフは無機質な施設の地下に連れて行かれ、
冷たい鉄の檻に監禁された。

隣には先ほどの鬼がぐったりと横たわっている。

暗い空間には、不気味な静寂が漂っていた。

秘書マサ彦

調印式まで
ここにいてもらいます。

いいのか、こんなことして!調印式には警察のお偉い方が来るんだぞ!これを知ったら…

秘書マサ彦

脅しのつもりですか?調印式には警察を始め、政界の方々もお見えになりますから、失礼のないよう心がけてください。

いったいどういう意味だ?

秘書マサ彦

調印式の日になればわかりますよ

秘書マサ彦

そうそう、この鉄格子には高圧電流が流れていますので触らないでくださいね

秘書は鍵をかけて部屋を出て行った。

くそ~!意地でも調印式に出させる気だな!!

それにしてもポテトのやつ、裏切りやがって!






ジョセフの脳裏に、船着き場での出来事が
鮮明に蘇った。ポテトの冷たい言葉が耳に残る。





ポテト
いったいどういうことだ?

先輩が悪いんです。こんな素晴らしい場所を出て行こうとするなんて許されません

ましてや、警察の代表である先輩が途中で帰るなんて考えられませんよ。

と言いながら、
秘書からスティック状のゼリーを受け取っていた。

ちゅ~るちゅ~る♪

あいつ!
完全に飼い慣らされてる!







ジョセフの心は混乱と裏切りの痛みで
いっぱいだった。

この島の闇は深く、

どこまで広がっているのか見当もつかない。

冷たい檻の中で、ジョセフは愕然としていた。

絶望感が胸に押し寄せる中、

微かなうめき声が聞こえた。鬼が目を覚ましたのだ。




うぅ..

おい、大丈夫か?

うぅ、あれをくらうとしばらくは動けないんだ

ここの鬼はみんな友好的じゃないのか?

友好的?あいつらが勝手にこの島に来て、俺たちを奴隷のように扱ってるだけだ。

奴隷?

ああ、あいつらが俺たちをだまして契約を結んだんだ。
この島で永遠に幸せに暮らせるようにってさ。でも、その代わりにこの首輪をつけられた。

鬼は重々しい口調で契約の詳細を語り始めた。


かつて鬼たちが暴れていた頃、
桃猫太郎がやってきて鬼たちを成敗し、

その後彼らに他の種族との共存の道を示した。

鬼たちは、自分たちの過ちに気づき、
改心して桃猫太郎に感謝した。

そして、もう二度と暴れないと約束した。


しかし

その後やってきたのが桃次郎だった。

自分の事を「桃猫太郎の子孫である」と言う
桃次郎は、突如としてこの島に現れ、
鬼たちの力を奪い、島を制圧したという。

そうして

鬼たちは平和のために桃次郎一族と契約を結び、
大人の鬼は首輪を装着されることを余儀なくされた。

しかし、そんな彼らの決意を桃次郎は
あざ笑うかのように裏切り、
鬼たちを奴隷の如く扱うようになったのだ。




ジョセフは鬼の話を聞きながら、
島の本当の姿を理解し始めた。

この楽園と思われていた場所は、
実は鬼たちの苦しみの舞台だったのだ。

鬼たちも裏切られたのか…

俺たちはただ、平和に暮らしたかっただけなんだ

冷たい檻の中、鬼は
意を決したように囁いた。

なあ、あんたがいなければ
調印式はなくなるかもしれない。ここから逃げてくれ

逃げると言っても、どうやって?

船着き場に行けば俺の仲間がいる。俺が帰ってこないのを心配して探しているはずだ。

そう言いながら、鬼は何かの袋を
ジョセフに手渡した。

これを仲間に見せれば助けてくれるさ

これは?

俺の睾丸だ

キン〇マってこと?

そうだ。それを見せれば俺だとすぐにわかるはずさ
睾丸ぐらい取っても、またすぐに生えてくるから心配すんな

そうゆう意味じゃなくて!!

さあ、夜が明ける前に行くんだ

鬼は鉄の格子に手を置いた。次の瞬間



ぐわぁあああああ!!

大きな音とともに電気が流れ、
鬼は痛みに耐えながらも渾身の力で隙間を作った。

おい!大丈夫か?

これくらいの隙間があれば逃げられるだろう

鬼はその場に倒れた

あんたは?

鬼は気絶しそうになる中、辛うじて答えた。

俺のことはいいから急いでくれ……

俺はジョセフ、あんたの名前は?

鬼は意識を失いかけながらも微かに微笑み

マイキーだ…

思ったより洋風!?


ジョセフはマイキーの犠牲を無駄にしないと
心に誓い、隙間から這い出し、
船着き場へと急いだ。

彼の手には、マイキーの睾丸が入った
袋がしっかりと握られていた

つづく

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