ルーガル

それで、私たちが呼ばれたわけか。

ヤムカ

元の場所からいなくなってるから、焦ったぜ。迷子になってんじゃねーよ。
で、うちのグージィはなんでつかまってんだ?

コペ

初めて見たときから気になってたけど、この布ゴーレム、見れば見るほど・・・!

グージィ

ひいっ、ヒっくりカエすんじゃありません! くすぐったい! くすぐったい!

ヤムカ

聞いちゃいねーし。

ルーガル

なるほど、たしかに魔結晶だ。これだけ大きな品は珍しい。

ベシワク

ルーガルも魔結晶に夢中だね。

グージィをコペに預けて、元の道に戻ると、ルーガルとヤムカは僕らを探してくれていた。

事情を説明しながらコペの家に戻ると、コペはグージィ人形を抱き上げ、いろんな角度から観察しているところだった。

コペ

こんなに少ない魔力で動くゴーレムがいるなんて。わら製なのは軽くするためかな。どうやってバランス取ってるんだろ。もしや中身にヒントが!?

グージィ

ユすぶるのはダメです! ユすぶるのはダメです!!

コペ

揺すぶる以外に中身を確かめる方法・・・そうだ、分解しよう!

ヤムカ

いい加減取り上げるぞ?

コペ

冗談です! 持ち主さんお願い、もうちょっとこの子観察させて!

ヤムカ

持ち主さん・・・名前がわからなかったときの八番目にマシな呼び方だな。ヤムカだ。

ルーガル

このテーブルクロス、大きさもまとう魔力も屈指の品だ。これならリリーシカが狙う可能性は高い。

ヤムカ

リリーシカ? って、ジャハを占領した魔女じゃねえか。なんでそんな奴の話になるんだ?

ベシワク

ヤムカに話してなかったね。実は、僕らが旅してるのは・・・

僕はヤムカにこれまでのことを話した。

リリーシカがあちこちの魔結晶を集めていること。
僕の島も襲われたこと。
ルーガルは体内の魔結晶を狙われ、故郷を去らざるを得なかったこと。

ヤムカ

おまえらそんな状況だったのかよ。命がけの旅ならもっとそれらしくしろ。

ベシワク

それらしくって?

ヤムカ

神妙な顔で空を見上げるとか、手帳に挟んだ家族の写真に涙を流すとか。

ルーガル

手帳は持ってない。

ベシワク

島に写真機はなかったからなあ。

ヤムカ

でも今の話だと、おかしくねえか? ベシワクの島とルーガルの村に、ほぼ同時に現れてる。それに、他の場所にも。

ルーガル

転移魔法だ。移動にかかる時間も距離も、あいつには関係ない。

ヤムカ

何言ってんだ、転移なんて――

ルーガル

私が創った。あいつはそれを使っている。

ヤムカ

・・・・・・。

ヤムカは絶句したように息をのんだ。

ヤムカ

転移? 移動の距離も時間も関係なくなる? それはつまり――オレの人形をどこへでも一瞬で売りに行けるってことか!?

ベシワク

あ、商人としては嬉しいんだ?

ヤムカ

そりゃあな! オレの人形を買ってくれる客、やたら辺境にいるんだよ。飛び回れたらどんなに楽か。ただ、相当な魔力がかかるんだろうな。

ルーガル

魔力消費量はかなり多い。リリーシカに動きがないのもそのせいだろう。あちこち飛び回りすぎたんだ。だが、そろそろ魔力も回復する頃だ。

ベシワク

ルーガル・・・

コペ

ねえねえ、新魔法を開発したってことは君、魔法師なの? そんでルーガルって名前?

コペがグージィを抱きかかえたまま、こちらに顔を向けた。ルーガルが首をかしげる。

ルーガル

私を呼んだか?

コペ

違ったらごめんねっ。もしかして、君って・・・ルーガル・フォレスター?
トタン村の〈火の玉のルーガル〉!?

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