コペ

豊かなる者、流れる者よ、
知恵と豊穣もたらす者よ、
数限りなし、なんじの救いし身は。
傷つきし魂に触れる指先に今、
清らかに癒やし与える息吹満ちた。
やさしき腕に心安らぐ楽しき日だ。
――回復〈メディキニア〉

コペ

終わったよ。足はどう?

ベシワク

――痛くない。腫れも引いてる。これが回復魔法・・・

グージィ

これで、ゲンカクマホウとおさらばですね!

ベシワク

コペ、すごいなあ。僕と同じくらいの年なのに。この病院、君が一人でやってるんだろ?

コペ

本当はあたしじゃなくて、あたしのおじいちゃんの病院なんだけどね。

ベシワク

おじいさん?

コペのほかに誰か住んでいるにしては、人の気配がないけど・・・。

コペ

半年前に、死んじゃったんだ。

ベシワク

そうだったのか・・・

コペ

それで、あたしが後を継いだんだ。あたしじゃ、お客さんが来ないんだけどね。

コペ

暗い話になっちゃったね! ベシワク、おなかすいてない? うちでご飯食べてってよ!

ベシワク

え? 悪いよ、大変だろ?

コペ

それが、そうでもないんだなあ。

コペはにやりと笑うと、戸棚から布を取り出した。

ベシワク

この布、知ってる気配が・・・?

コペ

ここに取り出したるは何のへんてつもないテーブルクロス! これをテーブルにサッとかけて、ひとたび呪文を唱えれば・・・

コペ

テーブルクロスよ、食事の支度!

コペ

これこの通り、あっという間に豪華な食卓の出来上がりな~り、っと!

ベシワク

コペの口調が変な感じに!

コペ

えっ、魔法の食卓さしおいて驚くほど変だった!?

ベシワク

そ、そうだった。コペ、その布って・・・

コペ

えっへん、うちに代々伝わるマジックアイテムだよ!
この〈仁者のもてなし〉があるおかげで、年中閑古鳥でも毎日おなか一杯食べられるんだ。

ベシワク

それ、もしかして魔結晶?

布をまとう不思議な気配。
島で聖殿に足を運ぶたびに感じた、〈勇者の魂〉と似た感覚だ。

コペ

あれ、わかっちゃった? ずっと昔のご先祖様に、すっごく魔力の強い人がいたらしくてね、その人が亡くなったときに体から出てきたんだって。

グージィ

ヒトのカラダからデたものを・・・ショクタクに??

コペ

あっ、でもほら魔力の塊だからね! 物理的な汚染や損傷は受けないし、衛生面の心配はないよ!

コペが慌てたように言うが、僕は目の前に並ぶ料理の清潔さよりも、気になることがあった。

ベシワク

魔女リリーシカは、魔結晶を集めている。もしかしたらここにも現れる?

ベシワク

コペ、あのさ!

コペ

なあに、ベシワク?

ベシワク

仲間をここに呼んでもいいかな。相談したいことがあるんだ、その〈仁者のもてなし〉について。

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