私の街も襲われた! 博物館の宝物を奪われたって!

ジャハの都を占領して、住民を追い出したって聞いたぞ!

この連続強盗犯め、やっちまえ!

ベシワク

ちょ、ちょっと待ってくれ!

人数が多い。一人二人ならルーガルもあしらえるだろうけど、次々と増える。
直接の被害者だけじゃなく、強盗退治を手伝うつもりで来た人もいるらしい。これじゃリンチだ。

なっ!

ルーガルが指を鳴らした。
そして、姿が消えた。

ベシワク

あっ、そう言えば、転移魔法? が使えるんだっけ・・・

心配することなかったようだ。
それはいいんだけど、暴徒の中、僕一人残される。これはよくない。

逃げ遅れた。囲まれる!

ベシワク

・・・ッ、どうしよう・・・!

タコ殴りにされることを覚悟したとき、見えない手に首根っこをつかまれた、
ぐいと持ちあげられ、体ごと中に浮く。

ベシワク

うわーっ!?

誰かに抱きかかえられている。姿は見えないけれど。
そのまま僕は空を飛び、町の上を横切っていった。ポカンと見上げる人々を、地面に残して。

ルーガル

まったくお人よしだな。私が囲まれて殴られたところで、君は痛くないだろうに。

煙のように、ルーガルの姿がじわりと現れた。

――僕を横抱きに抱えたまま。
声にうっかり見上げてしまって、顔の近さに僕は大慌てになった。

ベシワク

うっ、うわああ!?

ルーガル

暴れられると支えきれない。落としても?

ベシワク

いい! 早く落として!

ベシワク

いてて・・・

ほんとに落とされた。地面に到着した後だったので助かったけど。

ここは町はずれの森らしく、むき出しの土は柔らかい。

ルーガル

しかし驚いた。なぜ彼らは私を憎きかたきのように攻撃するんだろう?

ベシワク

そりゃ君は、彼らの憎きかたきであるリリーシカと同じ顔だろう?

ルーガル

まあそうだな。

ベシワク

だからじゃないかな。

ルーガル

・・・・・・。

ルーガルは黙りこんだ。

ベシワク

思うんだけどさ・・・リリーシカが魔結晶を集めてるなら、放っておけばますます被害者が増える。つまり、勘違いから君を憎んで攻撃する人が増える。

ルーガル

まあそうだな。

ベシワク

君は魔結晶を持つほど魔力が強くて、戦うのもうまい。リリーシカのことを、君自身でどうにかした方が、君にとって楽な道じゃないか?

ルーガル

・・・・・・。

ルーガルは黙りこんだ。
少なくとも、たっぷり二分は沈黙した。
そして、

ルーガル

・・・わかった。君の魔女退治、私も協力させてもらおう。

しぶしぶ感を一切隠そうとしない顔で言った。

ルーガル

私はルーガル・フォレスター。君の名をまだ聞いていない。

ベシワク

そうだっけ? 僕ベシワク。ガトド島の首長イルクの孫だ。

ベシワク

よろしく、ルーガル!

こうして、魔女を追って大陸に来た僕と、魔女と同じ顔を持つルーガル、僕らの二人旅が始まった。

pagetop