一方、彩の地の部隊もまた、
魔獣の居場所を掴んでいた。

鷲尾は國光より早く到着しようと焦り、
部隊に準備を急かせていた。

あの忌々しい國光め、総帥の息子だからといって自由にやりやがって。

魔獣を討伐すると同時に、あの部隊も打ち砕いてやろうか

その時、メイを襲った隊員が呼ばれ、
鷲尾の前に現れた。

鷲尾は怒りに満ちた表情で隊員を殴りつけた。

この俺に恥をかかせたな

も、申し訳ございません

貴様ら、本当に武蔵帝都の隊員を襲っていたのか?

は、はい...

仲間が魔獣に殺されてなぜ戦わなかった!?

そ、それは...その...

鷲尾はさらに怒りを募らせ、
隊員を蹴り飛ばした。

隊員は苦痛に顔を歪めながらも、

司令官、待ってください。あの時、あの魔獣は武蔵帝都の隊員だけは襲いませんでした

一人を殺してから武蔵帝都の隊員を見て、動きが止まったんです。

そして自分の方を見て近づいてきました

それがなんだというんだ

彩の地部隊副司令官の大和(やまと)が
そのやり取りに耳を傾けた

副司令官 大和

襲わなかっただと?
それは確かか?

はい、確かです。あいつがやられている隙に逃げようと後ろに下がっていました。

しかし、なぜか自分の方を見たんです

大和は少しの間考え込み

副司令官 大和

司令官、直ぐに出発しましょう。國光部隊より先に到着し、討伐いたします

何か作戦でもあるのか?

副司令官 大和

はい、私にお任せください

よし、出発するぞ!

大和はメイが本当に襲われないというなら

メイを魔獣の前に突き出だし、
その隙に魔獣を討伐する作戦を考えていた。








一方、武蔵帝都の宿舎では静けさが漂っていた。
メイを除く全員が魔獣退治に出かけており、

メイは一人で広いグラウンドで
剣術の練習をしていた。

穏やかな風が吹く中で、メイの剣は
一心不乱に振り続けている。

その頃、武蔵帝都を見張っていた
鷲尾の部下たちに指令が下った。

数人の影が無音で忍び寄り、
グラウンドへと潜入する。


メイ

はぁ...はぁ...

メイ

いっぱい練習して強くならなきゃ!

メイが剣を振り終え、息を整えている瞬間に、


突然後ろから冷たい手が
彼女に口枷(くちかせ)を押し付けた!

頭には黒布がぶせられ、視界が見えなくなる

目隠しをされたメイは、
必死にもがこうとしたが、

部下たちはメイの腕を後ろで縛り、
そのロープを引っ張る形でメイを立たせた

静かにしていれば、
安全でいられる

メイの心に恐怖が走り、下手に動けば命の
危険があることを悟った。

無言のまま、メイは強引に引っ張られ、誰も助けてくれる人がいないことを痛感していた。

宿舎から遠ざかる彼女の
足音だけが無情な現実を刻んでいく。


部下たちは一切の情けを示さず、
彩の地部隊の待つ場所へ連れ去って行った。

メイの心は恐怖と絶望に包まれ、
この状況がどうなってしまうのか、
想像するだけで震えが止まらなかった。

自分が助かる望みは薄いと悟りながらも、
メイは心の中で
「絶対に諦めない、きっと助けが来る!」
と強く念じ続けた。

その強い意志だけが、
彼女の心をかろうじて支えていた。




一方、國光の部隊は緊迫した状況の中で進むべき道を見失い、足止めを食らっていた。

彩の地部隊が至るところを爆破し、
木々や岩を使って道を塞いでいたからだ。

煙と破片が舞い上がり、
進軍を阻む障害物が次々と現れていた。

部隊長 蓮

考えることが幼稚だな

僕、そんなに嫌われてるのかな?

副司令官 凌

部隊を全滅させると言われたら、誰でも怒るでしょう

その瞬間、東の山の方から爆発音が響き渡った。地面が揺れ、空気が震える。

その音に國光は一瞬驚いた表情を見せたが、
すぐにその顔を引き締めた。

始まったみたいだね

副司令官 凌

急ぎましょう




彩の地部隊は魔獣と戦い始めていた、
戦場は混沌としていた。

太陽が沈みかける中、

彩の地部隊は圧倒的な魔獣の力に歯が立たず、次々と倒れていった。

血と土が入り混じる中、

彼らの叫び声がこだました。

巨大な魔獣は黒い鱗に覆われ、その鋭い牙と鋭利な爪で容赦なく兵士たちを切り裂いていく。

その威勢に圧倒され、彩の地部隊の
兵士たちは一歩後退しながらも
必死に応戦していた。

大和は瞳に鋭い光を宿し、
その瞬間を待ち続けている。

副司令官 大和

一瞬でいい、
魔獣の動きを止めろ!

隊員たちは一斉に鎖でつながれた杭を放った。
それは、弱った魔獣を
生け捕りにするための道具だが、

大和の狙いはただ一瞬、
魔獣の圧倒的な力を封じることだった。

杭は唸りを上げ、見事に魔獣の背部と
手足に突き刺さった。


しかし、魔獣は怒りに満ちて咆哮し、
鎖を引きちぎるかのように動き始めた。

副司令官!ダメです、
もう持ちません!

副司令官 大和

後退だ、一旦後退しろ!

大和の声は冷静かつ的確だった。
隊員たちは命令に従い、

銃口から炎を放ちながら、一歩一歩退き始めた。

煙が立ち込める中、
彼の目は一瞬たりとも魔獣から離れなかった。

副司令官!!このままでは!!

副司令官 大和

奴を連れてこい!

その合図で隊員が動き出し、
メイの頭を覆う黒布を剥がし、

緊迫した空気の中で彼女を魔獣の前へと
放り出した。全員が息を呑む瞬間、

大和は次の一手を心中で計算していた。

メイは地面に転がり、
泥と血にまみれた顔を上げると、
眼前の魔獣と対峙することになった。

大きな魔獣の瞳が冷たく光り、
その巨大な体躯が影を落とした。

メイ

魔、魔獣が...!!




メイは、痛みと恐怖で身動きが取れなかった。
しかし、驚くべきことに、その瞬間、

魔獣の動きが止まった。巨大な魔獣はじっと
メイを見つめ、その目には何か
神聖な光が宿っているようだった。

メイの心に不思議な声が響く。

呪いを解け

メイ

の、呪いを解く...?

導かれし者よ、
我らの呪いを解いて解放してくれ。










一方大和は魔獣が動きを止めたのを確認し

冷笑しながら司令官鷲尾に向かって言った。

副司令官 大和

司令官ご命令を

ニヤリ

撃て!

13話 彩の地副司令官 大和

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