フェリックスは一旦部屋を出た。
ジョセフが不思議そうに尋ねた。
フェリックスは一旦部屋を出た。
ジョセフが不思議そうに尋ねた。
そういえば団長の姿が見えないな。
フェリックスは団長の部屋のドアを開け、
中の様子を見た
団長はもう戻らないかもしれません。
そう言うと、彼は足早に外へ出て行った。
向かったのは火事が起きた調教小屋だった。
そこにはカオリの姿があった。彼女はどこか寂しそうに小屋の前にたたずんでいた。
フェリックスがゆっくりと近づき
ロイズはここには来ませんよ
．．．！
その言葉に反応してカオリが振り返った。
フェリックスはワトリーを見て頷いた。
ロイズはさっきマリーナとここを出て行ったのだ
カオリは無言で立ち去ろうとした。
その時
待って、エマ！
カオリの足が止まった。
ジョセフは驚いた様子でワトリーに
訪ねた
エマ？あれはカオリだろう
違う、この仮面の中はエマだなのだ！カオリの振りをしてロイズと逃げる計画だったのだ
うそだろ！
入院しているのはカオリなのだ。今ここにいる鉄の仮面を被っているのはエマなのだ！
ジョセフは驚いた表情を浮かべ、
言葉を発することができなかった。
ワトリーは向きを変え、
鉄仮面の猫に向かって話し続けた。
カオリは字が読めない。なのに僕が消火器を持ってきてと言った時、迷わず消火器を持ってきたのだ
今日、病院に行ったときに確信したのだ。僕が話しかけたら、
微かだけど、親指が動いて『大丈夫』というジェスチャーをしたのだ。あれはカオリに間違いないのだ！
鉄仮面の猫は背中を向けたまま、
ワトリーの言葉を黙って聞いていた。
いったいどうやって？！
おそらく、小屋の中でカオリと入れ替わり、彼女を気絶させるか何か罠を仕掛けて、そのまま置き去りにし、そして火をつけたのでしょう
そんな残酷なことをするなんて、一体何が目的なんだ！
なぜこんなひどいことを！カオリは僕の友達なのだ！
その時、鉄仮面の猫はゆっくりと
背中を向けたまま仮面を外した。
振り返ると、そこにはワトリーの言う通り、
エマが立っていた。
エマは冷静な目で語った。
私は本気でロイズのことを愛している。
彼にはサーカスの才能があって、彼の演技をもっとたくさんの人に見てもらいたいの
団長はお金ばかり考えていて、私たちの夢を理解してくれない。
だから、私と一緒にこのサーカス団を抜け出して、新しい場所で新しい未来を築きたかったの。
そのために邪魔者を消したのよ。私たちの愛と夢のためには、どうしても犠牲が必要だったの。
フェリックスは深く息を吸い、
エマの言葉の重さを感じ取った。
それがあなたの言う愛だと？他の命を踏みにじってまで手に入れる未来が、ロイズのためだと本当に思っているのですか？
何とでも言って、私はロイズの才能を埋もれさせたくなかった。
彼にはもっと輝く場所が必要だったの
ロイズのためにセリアを殺したのなら、ロイズに罪を着せようとするのは矛盾しています。
本当の目的は、
ロイズに罪を着せることで彼の人生を支配しようとしてたのではないですか
彼の自由を奪い、自分に依存させるのが狙いだったのでは？
エマの目が大きく見開かれ、
動揺を隠せない様子で一歩後ずさりした。
そんなこと…私はただ…
現実を見てください。あなたが心から愛したロイズはあなたの正体を知り、マリーナと逃げて行きました。
あなたがロイズに
正体を教えたのね
上手く逃げたとしてもやがて知ることになるでしょう。
あなたに残されたのは罪の
重さだけだ。自分の行動の結果と真剣に向き合ってください
エマの顔には深い悲しみが浮かんでいた。
フェリックスはその表情を見つめながら、
彼女の心の痛みを感じ取っていた。彼自身も過去に大切な猫を失った経験があり、
その痛みが理解できた。だが、それでもエマの
行為を許すわけにはいかなかった。
その時、ジョセフが二人の間に割って入った。
フェリックス、もうこれ以上はやめてくれ。今のエマに何を言っても分かり合えないだろう
ジョセフはエマの肩に優しく手を置き、
さらに続けた。
エマ、あなたには罪を償う時間が必要だ。ここであなたを逮捕する
先輩…最高にかっこいいっす！！
フェリックスの目にはエマの涙が映り、
自分の言葉や行動が彼女を救うことができないと感じ無力感が心に広がった。
ジョセフが手錠を取り出すのを見ながら、
フェリックスは静かに後ろへ退いた。
エマはジョセフの手に導かれ、
静かに立ち上がった。彼女の目は虚ろで、
涙が頬を伝って落ちていく。
フェリックスはその姿を見つめながら、
エマ．．．
．．．
行こう、エマ
エマは頷き、静かに歩き出した。フェリックスとワトリーはその背中を見送りながら、
心の中で彼女の未来を祈った。彼女が自分の罪を償い、再び立ち上がることができるように。
つづく
ジョセフ最高にカッコいいッス！
病院での手の動き、思わず確認しに読み返しにいってしまいました。多分あそこでうまいこと具体的な指の動きが記述されていたとしても、多分私は気づかずに騙されていたと思います(笑)
