よく日の早朝、静寂を破るように「コンコン」とフェリックス達の部屋の
ドアがノックされた。眠たそうにワトリーがドアを開けると、そこにはジョセフの姿があった。

すぐに食堂に集まってくれ

ワトリーは目をこすりながら尋ねた。

こんな早くにどうしたのだ?

それが…ゲンが自供したんだ

ゲンさんが!?

ワトリーは食堂に向かって
飛び出していった。

食堂にはすでに団長を除く全員が集まっていた。ワトリーはゲンの姿を見つけると、

涙目になりながら駆け寄った。

ゲンさんが殺したの?
そんなのうそなのだ!

ワトリーはゲンにしがみついた。

すまないワトリー、これは本当のことなんだ。

動機はいったいなんだ?

俺は昔のようにみんなでサーカスがしたかったんだ。

俺たちは家族も同然の仲だったのに、団長は金に走り、団員は毎日喧嘩ばかり。

言い争いの中心はセリアだ。

途中で入団してきたセリアは
マリーナの恋人を奪い、
自分が看板スターになるために団長にも近づき、俺たちを侮辱した

許せなかった。俺の大切なこのサーカス団を壊されてしまいそうで、だから、殺したんだ。

ゲンの告白が終わると、食堂は静まり返った。
皆が言葉を失い、

ただその場に立ち尽くしていた。ワトリーはゲンの言葉を理解しようとするかのように、
涙を堪えながら彼の顔を見上げた。

ゲンさん...

フェリックスはその話を黙って聞いていたが、
やがて口を開いた。

動機はわかりました。では、どのようにセリアさんを殺したのですか?

ゲン

それは、ボウガンを使ってロープを切ったんだ。最初は、
フェリックスが言ったようにボウガンを見えないところに設置して発射させようとしたが、
上手くいかなかった。

フェリックス

上手くいかなかったというのは?

テストしたんだ。
トリガー部分を低温で溶ける素材のプラスチックで固定したが、
重心がぶれて上手くいかなかった

ゲン

だから、
当日、隠れながら2階の端に行ってボウガンを使ってロープを切ったんだ

フェリックス

では、反対側のナイフはどのように取ったのですか?

ゲン

警察が来る前に取って、裏の川に捨てた。

フェリックスは鋭い目でゲンを見つめた

フェリックス

本当にボウガンでロープを切ったのですか?

ゲン

ああ、俺は大道具だぞ。ボウガンくらい扱えるし、
マジックの知識だってある。

フェリックスは静かにボウガンを取り出し、
ゲンに手渡した。

フェリックス

では、証明してください。








全員が劇場に移動し、緊張感が漂う中、
フェリックスが再び口を開いた。

フェリックス

これは犯行に使われたものと同じボウガンです。ナイフも撃てるようになっています

フェリックス

誰かロープを事件当時と同じように付けていただけませんか?

ゲン

それは俺の仕事だ

ゲンは、はしごを使って天井に登り、
ロープをしっかりと取り付けた。






2階席の端に全員が集まり、
ゲンがボウガンでロープを狙う。

緊張が走る中、ゲンはボウガンの
トリガーを引き、ナイフを放った。


ナイフは見事にロープを切り落とし、ゆっくりと落ちていった。周りの猫は、

ゲンが犯猫だという現実を受け入れつつも、
複雑な表情を浮かべていた。

フェリックス、もうこれでいいだろう。ゲンが犯行を認めているんだぞ

フェリックス

いいえ、これは当時の状況とは異なります。ゲンさん、もう一度お願いします

ゲンは一瞬のためらいも見せずに頷いた。
「いいだろう。」再びロープを吊るし、
ボウガンで狙いを定める

その時、フェリックスが声を張り上げた。

フェリックス

では、電気を消してください。暗闇の中で撃たないと、ゲンさんの姿が見えてしまいますので

フェリックスは下にいるワトリーに声をかけた。

フェリックス

ワトリー、準備はいいですか?

オッケーなのだ

ワトリーは吊り下げられていたロープを自分の胴体に巻き付けると、まるでブランコに乗っているかのようにゆらゆらと揺れ始めた。その様子を見つめながら、フェリックスは静かに言った。

フェリックス

セリアさんはリハーサル中に転落しています。
ロープに吊られながら演技をしていたはずです。暗闇の中、犯猫は
動いているロープを正確に狙ったと考えます。

ゲン

しかしライトは
当たっていたはずだ

フェリックス

それは演技しているセリアさんだけに当たっていたのでは?

フェリックス

エマさん、あなたは事件当時、照明の担当でしたね?

エマ

はい

フェリックス

当時と同じように照明をお願いします。みなさんも当時と同じ場所にいてください。

マリーナとロイズは1階の客席へ、エマは照明の
位置へ、そしてゲンは2階の端に立った。

フェリックスは一同に向かって言った。

フェリックス

ではお願いします







劇場の明かりが消え、ワトリーにだけ
スポットライトが当たった。

1階席からはゲンの姿は見えない。
緊張の中で沈黙が続く。

...

...

...

...

マリーナ

ゲン!早く撃ちなさいよ!

その瞬間、照明がついた。ゲンはすでに
ボウガンを撃った後だったが、

ワトリーはそのままゆらゆらとロープに括りつけられたままだった

マリーナが困惑した声で問いかける

マリーナ

どういうこと?!

フェリックス

同じ状況ではロープは切れなかったんです

つづく

pagetop